不確実な状態はその程度により4段階に分かれる

 先の見えない、不確実なビジネス環境の中では、何が優れた戦略につながるのか。そんな時、リスクの高い賭けに出て未来を形成しようとするエグゼクティブもいる。

 たとえばイーストマン・コダック社は、写真の撮影、保存と鑑賞方法を根本的に変える未来を形成しようと考え、年間5億ドルをかけてデジタル製品を開発している。一方、ヒユーレット・パッカード社は、年間5000万ドルを投資し、写真の現像を家庭で行うという構想を中心に競合のビジョンを追撃している。

 ビジネス誌が両者の戦略をあおるわけは、業界を発展させ、巨額の富を生み出す可能性があるからだ。しかし現実には、こうした戦略的な事業に必要な業界内での地位も、資産も、リスク志向も欠けている企業が多い。

 リスクを嫌うエグゼクティブは、少額の分散投資を多用して賭けの危険を防ぐ。たとえば、一般消費財メーカーの多くは新興市場での発展の機会を求め、運営面や流通面の一部を他社と提携する。しかし、限られた投資だけで、その領域でプレーする権利を確保できるのか、いずれ失う権利を留保するだけなのか、見極めはきわめて難しい。

 また、あるエグゼクティブは、投資に柔軟性を持たせるほうが有利と見て、市場の展開に迅速に適応できる態勢を整える。しかし、柔軟性の確立には高いコストがかかる。さらに、多額の投資を延期するなど、待って様子を見る戦略は、競合にチャンスを与えてしまうことになりかねない。

 きわめて不確実な要素に直面したエグゼクティブは大きな賭けに出るか、リスクの防護策を講じるか、待って様子を見るか、どう判断すべきだろう。

 このようなとき、オーソドックスな戦略立案のプロセスはほとんど役に立たない。一般的には、将来の出来事に対するビジョンをディスカウンテッド・キャッシュフロー(DCF)法で表せる程度にまで設計する。

 もちろん、マネジャーはいくつかのシナリオを考察し、カギを握る変数の変化に対して自分たちの予想がどれだけ敏感に反応するか、テストしてみることができる。だが、そのような分析の目標は、最も可能性が高いと思われる結末を探り出して、それに基づく戦略を立てることである場合が多い。

 これらの手法は、比較的安定したビジネス環境の下では有効な成果を上げられる。だが、不確実性が大きい場合には、わずかに役立つだけで、最悪の事態を招く危険すらある。