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マーケット状況が厳しくなると、ブランド・マネジャーは他のマーケットに脇見をしがちである。なるほど、市場のパイが拡大傾向にあるマーケットは確かに魅力的であり、競合他社を追い上げようとする会社にとってはなおさらのことであろう。
また、場合によっては生き残るためにやむをえずブランド拡張を行うこともある。規模の経済性、ブランド・エクイティ、対リテール交渉など、数多くの強みを持ついわゆる「トップ・ブランド」もこの誘惑にかられている。
しかし、実際にブランドを拡張することには大きな危険性が伴う。このことの証左としてこれまで数多くのブランドが拡張に失敗し、拡張どころか本来のブランド力さえも失ってしまった。既存ブランドを拡張する際には、これら過去の実例から得られる教訓をよくよく考える必要がある。
具体的には、リスクに見合うだけのリターンがあるか否かを見極める必要がある。どれだけのチャンスがあるのか。どのように拡張すればよいのか、つまり既存プランドをそのまま残すのか、すべて新しいマーケットに移すのか。考えられるマイナス面は何か。垂直拡張以外の選択肢はないのか。新しいブランドを立ち上げた方がよいのではないか、等々。これらの問いへの答えは、過去の成功例、失敗例に秘められている。
結論から言えば、私は垂直拡張をお勧めしない。それどころか、可能な限り避けるべき道であると考える。なぜならば、プランド力はそもそもイメージや品質への信用に依るところが多く、安易な垂直拡張はこの価値をあまりにも簡単に損ねてしまうからである。
ただし、「いかなるときも」というわけではない。ときには、他の選択肢ではあまりにもリスクが大きいため、垂直拡張がベスト・オプションとなる場合もある。また、垂直拡張に見事に成功した前例もある。
既存のブランド力を保持し強める一方で、新たなチャンスを手中に収めること。もしも垂直拡張がベスト・オプションだと決断したならば、このことを常に念頭に置いて慎重に実行するよう忠告したい。
上位マーケットから下位マーケットへ
最近、特に大きな成長を遂げているのが「バリュー・マーケット」と呼ばれる、価格に敏感な消費者を対象とした市場である。流通形態にもこのことが顕著に表れている。同じ商品でもスーパーマーケットを通じた需要は増加傾向にあるし、カテゴリー・キラーと呼ばれる専門量販店を通じた購買は増える一方である。規模の経済を生かして成長を遂げているホーム・デポ、サーキット・シティ、プライス・クラブ、ウォルマートは、その代表的な例である。
また、最近脚光を浴びつつあるダイレクト・マーケティングは、コンピュータ業界に始まりあらゆる業界のコスト構造に大きな変化をもたらしている。このダイレクト・マーケティングを活用すれば、バリュー・マーケットに容易にアクセスすることが可能となっている。



