企業合併によってどの業界も再編が進んでいる。かつては安定した市場であった金融業界も、体力のない銀行は振り落とされ、合併した少数の有力な銀行を中心に動いている。

 一方、ソフトウエアのように従来から変化の激しい業界は、売上げは伸び続けているものの、より速くて激しい淘汰を経験している。80年代の後半に832社から435社に激減したパソコン業界は、まもなく5強に絞られるだろう。

 産業の落ち込みに伴う失敗や目標の縮小を、経験せずにいられる業界はほとんどない。特に皮肉なのはアウトプレースメント業界で起きている淘汰だ。

 80年代後半の初めにアメリカ企業に吹き荒れたリストラの波は、アウトプレースメント業界に対する需要を著しく押し上げた。アウトプレースメント企業の数は3年間に35%伸び、年間成長率は42%までになった。しかし1994年までに成長は突然鈍化し、多くの企業が撤退するか縮小した。アウトプレースメント企業の幹部を再就職させる必要性が生じたのだ。


 アウトプレースメント業界の淘汰は、ありふれた型通りのものだった。レイオフの減少と、人員削減を行っている経営陣に罪の意識が少なくなったため、アウトプレースメントの需要が低下した。アウトプレースメント会社も、いままでのように中身の豊富な再就職斡旋パッケージを供給しなくなり、顧客企業もより安い手数料を要求したため、利ざやが縮小した。

 大手で低価格を売り物にし「マック・アウトプレースメント会社(ハンバーガーのマクドナルドのようにアウトプレースメントを売る会社)」というあだ名で知られるドレイク・ビーム・モリン社の参入で、その頃向がよりひどくなった。

 一方ではハウツーものの書籍やビデオテープなどの販売店といった間接的な競合力がアウトプレースメントの需要を減らし、業界の特殊な知識を安売りした。ある企業では1988年には24%だった利益率が、93年には4.5%にまで落ちた。

 業界の落ち込みは市場のすべての会社を脅かすが、そうした落ち込みを予見し、その後に何が起きるかを予想できる会社にはチャンスが生まれる。