BPエクスプロレーション・オペレーティング・カンパニー(以下BPE)は、資本金130億ドル、石油・天然ガスを探索して産出するブリティッシュ・ペトロリアム(以下BP)の子会社である。1993年、BPEは、情報技術(IT)業務全般のアウトソーシングを開始した。その目的は、コストの削減、よりフレキシブルで高品質なIT資源の確保、そしてIT部門を全社の業績向上に直接結びつく活動に集中させることである。欧米の多くの企業と同様に、BPEでも、社員に業務の情報を供給するためのテクノロジーを社内に保有することは、もはや必要ないと判断したのである。

 この10年ほどの間にITサービス市場は成熟し、わが社のような企業が質の高いサービスを幅広く選択できるようになった。一方では、社内のIT部門には新旧のマシンやスキルが混在してしまい、ビジネス上の課題よりも技術的なディテールにとらわれがちな傾向は相変わらずで、IT部門のトップたちはやる気をそがれ、経営幹部たちにはフラストレーションがたまっていた。そこへITサービス市場が、「結果を手に入れる権利」を取得する機会を企業に対して提供したのである。

 アウトソーシングは、IT部門改革の目的そのものではなく、そのうちの主要な活動の一つだった。BPEにおける情報技術は、長年にわたって日常業務に欠かせない存在だった。5年前には、1400名のIT部員が業務処理のシステム・サポートを提供し、リクエストに応じてアプリケーションを開発し、ヘルプ・デスクや技術支援の役割を果たしていた。ところが今日では、そういった業務は姿を消した。アウトソーシングのプロバイダーがそれらの業務を肩代わりしているからだ。社内でアプリケーションを開発することはほとんどなくなり、その代わりに汎用のアプリケーションを購入するか、開発を外部に委託している。IT部員も150名まで減らした。この部員たちも、今後は、会社のために真の価値を生み出す活動に、より深く関わるようになってゆくだろう。たとえば、事業部門のマネジャーと直接一緒に働いてビジネス・プロセスを改善し、コストを削減し、ビジネス・チャンスをつくり出すテクノロジーの活用方法を提案するといった活動だ。我々がIT部門に期待しているのは事業の推進をサポートすることであり、要求されたものを提供するだけの社内部門になることではないのである。

 我々BPEは、アウトソーシング実施の際、他の多くの企業とは異なった方法を採用した。企業によっては、ITニーズ全般について、単一のサプライヤーからの供給に頼っているが、BPEではその方法はとらなかった。というのも、そうしたアプローチをとると、サプライヤーに支払う料金の増加や、サービスの硬直化に対して無防備になるおそれがあると判断したからだ。また、IT業務を細分化し、全体あるいは一部をアウトソーシングするという方法も選択しなかった。こうした部分的なアウトソーシング(セレクティブ・アウトソーシング)を試した結果、複数のサプライヤーに委託すると、本来よりもはるかによけいな管理コストがかかることがわかったからだ。

 そこで、複数のサプライヤーからITサービスを購入しつつ、すべてのサービスがあたかも単独のサプライヤーから提供されているかのように享受できる方法を模索した。そのため、最終的にはサプライヤー3社を選び、世界中に散在する我々の42の事業所に対し、包括的でシームレスなサービスを提供してくれるよう要請した。この3社と交わした短期契約には、提供されるサービス・ポートフォリオは、常にITアウトソーシング・マーケットの水準以上を保つことという条件が含まれている。

 我々が3社に期待したのは、さらに他の業者に下請けに出したほうが、より効率的に、かつ、より安価に提供できると思われるサービスは下請けに出すこと、そしてもっと大切なのは、その下請け業者を管理してくれることだった。

「一つのサプライヤーとして活動する複数のITサプライヤー」というこの契約は、我々のアウトソーシング戦略の土台となった。BPEにおけるITサービスの最終的な責任は社内IT部門にあるが、彼らは業務に直接に関わる必要はない。もしも「日常業務の管理」と「コンサルタント」の両方の役割を担おうとしていたら、我々のIT改革は失敗していただろう。経営幹部と直接に仕事をしようとどれだけ努力したところで、結局は社内のITコンサルタントやIT部門のトップの多くが、コンピュータ・システム運営上の日常的な決定事項に日々追われることになっていたに違いない。我々は、IT部員を「ビジネスの運営」ではなく「ビジネスそのもの」に集中させるには、日常業務を社内でこなすのをやめるしかないと判断したのだ。

 しかし社員が日常業務から解放されたからといって、今度はサプライヤー管理に一日を費やされたのでは、事業活動の向上はおぼつかない。我々がサプライヤー管理に時間をとられすぎるのではないかと懸念する理由は、この時点ですでにあった。我々は2年間にわたって小規模なアウトソーシングを試験的に行ったうえで、IT業務の大部分をアウトソーシングする方法と真剣に取り組み始めていた。その試みから、サプライヤー管理は頭痛の種になる可能性があることをすでに学んでいたのである。

セレクティブ・アウトソーシング

 1989年から、ITサービスのいくつかを選び出し、大小いくつかのプロバイダーと委託契約を結んだ。これらの契約のうちには、80年代後半に買収したスタンダード石油、ブリトイル、リア石油から引き継いだものもある。なかでもブリトイルのIT部門は、86年からサービスを選択的にアウトソーシングしていた。これらの契約に加え、1年ごとに更新可能な契約を他のプロバイダー集団と結んだ。

 たとえば、Granada Computer Serviceと当社アバディーン事務所のデスクトップ・イクイップメントのメインテナンス契約を、Hoskyns Group(CAP Gemini Sogetiのイギリス事業部)と当社ロンドン事務所向けのヘルプ・デスク・サービス契約を、またEDS-Sciconなどのソフトウエア会社との間に、北海地域の事業部が使用しているアプリケーションのメインテナンスおよびサポート契約を結んだ。我々は、これらのアウトソーシング契約を個々に研究し、サプライヤーとの関係をどのようにマネジメントするか、パフォーマンスをどういう指標で評価するか、アウトソーシングにおける財務、コントロール業務などについて学んだ。