「企業の成功はその規模によって決まる」。今世紀のほとんどの間、これがビジネスの常識であった。それが、1980年代に入り、この一片の経営上の英知は、他の英知と同様すっかり逆のものとなってしまった。膨れ上がった企業が減量に取り組む一方で、中小企業が繁殖していった。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究員デビッド・バーチのよく知られた調査結果によると、従業員100名以下の中小企業が、新たな雇用の8割を生み出しているとのことである。多くの大企業が技術や市場の変化への対応が遅いのに対し、中小企業はイノベーションの最先端にある。このトレンドは、カリフォルニアのシリコンバレーやボストンのルート128沿いにあるハイテクのベンチャー企業に象徴されている。
 大きいことはいいことだというかつての自明の理が、今熱い議論の焦点になっている。中小企業は、硬直的な官僚的企業とは対照的に、本質的にダイナミックかつ革新的で起業家精神にあふれているか、あるいは逆に、時代遅れで孤立してR&Dに飢え、市場で消滅するか巨大なグローバル企業に吸収される運命にあるかのいずれかである。

 この議論で問題なのは、中小企業も大企業も変化を続けているにもかかわらず、両者のイメージを静的にとらえている点である。どちらのステレオタイプも、現実のビジネスにおける取引関係の多様性と複雑さを説明するには適当でない。問題は、グローバルな経済における中小企業の位置づけである。もっと簡単にいえば、中小企業が国レベルの競争力強化に役立つか否かということである。

 ここで取り上げる書籍やレポート、他のテキストは、中小企業に関する議論を大きく前進させた。また、それらは、3つの重要な主張――直感的な受け止め方に反するところが興味深い――によって、議論を再構築しようとしている。

 1. 中小企業は、それが目立たないところほど重要である。中小企業という言葉は、中小企業が最も一般的であるサービス業や小売業をイメージとして想起させる。が、国際競争力という問題でいえば、見なければならないのは、少なくとも当面は国際的取引を支配する製造業である。中小企業はアメリカの製造業部門のほんの少しの部分しか占めていない。しかし、国際競争力という尺度では、中小の工具やネジの製造業者、金属切断を行う企業のパフォーマンスのほうが地域の靴屋、弁当屋、セブン-イレブンなどよりも重要である。

 従業員500名以下のおよそ35万5000社が、アメリカ製造業産品の付加価値の約46%を生み出している。これらの企業は、ミシガン州の産業技術協会の機関紙『テクネコン』(1)が製造業経済の"基盤"と呼んでいる部分である。重要なのは、アメリカの巨大な製造業の競争力がこれら中小の下請け業者に依存していることである。GMのように高度に内部統合が進んだ企業でも、売り上げの半分以上を下請け業者からの購買につぎ込んでいる。大企業において、内製化のコストを半分に減らせば、全体の生産コストは15%下がる。中小企業で同様のことを行えば、そのパーセンテージは2倍になる。

 2. 本当に問題となるのは規模ではなく、産業の組織である。

 伝統的な考え方に従えば、規模が大きければ、ある種の硬直性と引き換えに効率は上がる。一方、規模が小さい場合は、不安定な代わりにフレキシブルになる。しかし、技術や経済の発展は、両者の長所を合わせた新しい種類の組織を可能にしつつある。この新たな組織のモデルでは、重要なのは会社の規模ではなく、互いの企業を結び付けている取引関係の質である。生産のキーとなる主体は、もはや個々の企業ではなく、分権化した企業間ネットワークである。ときに、これらのネットワークは中小の下請け業者と大規模な最終組み立て企業とを結び付けた垂直的な関係であることがある。あるいは、ほとんど対等な多くの中小企業を結び付けた水平的な場合もある。どちらの場合も、これらのネットワークは競争と協調、需要と供給という微妙なバランスを通じて、絶え間ない革新を可能にしている。ここで取り上げた書物の中には、以下のような例もある。

□日本の下請けグループのシステムは、長期的な協調関係によって大規模な最終組み立て業者と下請け業者を結び付けている。

□ヨーロッパの工業地帯は、高度に特化した中小企業のネットワークが最新の技術と熟練した労働力を結び付け、付加価値の高い製品を生み出している。

□カリフォルニアのシリコンバレーでは、新世代の半導体企業が複雑な同盟や協調関係を打ち立てることによって、革新的であるとともに競争力を保ち続けている。