-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
1980年代半ばに、ある大手国際銀行(仮にUSフィナンシャルとする。略称USF)の新任CEOは、全社的な組織改革を発表した。その背景には、銀行業務の規制撤廃によって業界の競争が激化し、USFの伝統的なヒエラルキー型組織では、新たなチャレンジに対応できないという事情があった。そこでUSFは、唯一の解決策として従来の経営方法の抜本的な改革に踏み切り、まずトップから始めることとなった。
まず最初に、CEOは15名の経営幹部を交えて検討会を開き、USFの目標とカルチャーについて徹底的な論議を行った。続いて声明書を発表し、著名な人事管理会社から専門家を雇って、人的資源担当副社長のポストに就けた。そして次の一連の新しいプログラムを矢継ぎ早に打ち出し、全組織を通じてそれを推進しようと試みた。①組織構造の変更、②業績評価制度、③業績給報酬プラン、④管理職を"組織改革の媒体"に変える研修プログラム、⑤これらの改革の進展状況を把握するために、四半期ごとの態度調査を行うこと。
これらの手段は組織改革に関する教科書的なケースのように見えるが、実はその裏には、ある大きな問題がひそんでいた。CEOがこのプログラムを導入してから2年を経ても、組織のビヘイビアには何らの変化も起きなかったことが判明したのだ。いったいどこが間違っていたのか。
それは"すべて"であった。要するに、だれがリーダーとなって何をどう改革すべきか、という点についてのCEOの想定は、すべて間違っていたのである。
USFのケースは、他の企業にも共通する問題を提起している。今日ますます多くの企業は、市場の変化や競争の激化の中で、その支配的地位や市場シェアを取り戻そうと日夜奮闘している。また、何とかして市場競争に生き残ろうと必死にもがいている企業もある。こうした環境の中で多くの企業は、職能の遂行方法を変えることが市場競争に勝つための秘訣であるという点に気づいた。具体的には、マネジャーの権限、正規のルールや手続き、あるいは仕事の細分化といった要因への依存度を軽減する。一方、チームの結成、情報の交換、下部組織への権限の委譲などを推進する。要するに、今日の企業は、第二次大戦後のヒエラルキー的・官僚的な特色を持つ組織から、仕事を中心とした組織へと移行しつつある。そこでは仕事の中身によって、だれとだれの指揮で仕事をするか決まるのである。
このように、企業の経営者は、今日の市場競争に対応するには、従来の方法を変えるべきだということは認識している。問題は、その手段について誤解しているケースが多いことだ。特に、USFのCEOと共通する誤った想定は、以下の2点である。①全社的なプログラム(声明書、企業カルチャー研修コース、QC、業績給報酬制度)の導入によって組織改革が行われる、②企業の組織やシステムを変えれば、従業員のビヘイビアも変わる。
ところで、この問題を追究するために、大手6社について4年間にわたって組織の変化を調べると、次の事実が明らかとなった(囲み「企業はどう変わったか」参照、社名は架空)。それは、以上の想定とは全く相反するものだった。つまり、企業を活性化する際の最大の障害は、全社的なプログラム、特に人的資源のようなスタッフグループが進める全社的な変革のプログラムであった。我々は、これを"プログラム型改革の虚構"と呼んでいる。それと同様に、公式組織の構造やシステムの力で企業の活性化を達成することはできない。
企業はどう変わったか
どんな戦略が企業の活性化に効果があるのか。どんな戦略が無効なのか。その解答を求めて、企業の活性化を進めている大手企業12社を対象に詳しい調査を行った。最初の調査に基づいて選んだ6社(製造業5社、大手国際銀行1行)について、我々はさらに包括的な分析を行った。各社の売上高は40億ドルから100億ドル。以上6社の合わせて26カ所の工場と事業部を調査し、延べ何百回に及ぶインタビューを行った。その中には、人的資源マネジャー、工場、支社、事業単位で組織改革を進めているラインのマネジャー、工員と組合幹部、そして最後に経営首脳が含まれていた。
次にこの資料を基に活性化による6社の順位を決定した(表の調査員による順位参照)。この順位を確認するために、我々は活性化の成果を測定する要因として、次の4項目を選んだ。①各職能間の協調関係、②意思決定、③仕事の組織化、④社員に対する配慮。調査によると、長期的にはこの4項目が業績に影響することが判明した。この調査に財務上の業績を含めなかったのは、企業の短期的な財務上の業績は、組織改革のプロセスとは無関係な多くの要因に左右されるからである。
一方、我々が決めた6社の順位を確証するため、各社の従業員を対象にアンケート調査を行った。回答者は組織改革の進展状況を1~5のスコアで表示した。以前と変わらない場合は3、以前より後退したと見た場合は3以下の数値。スコアによると、我々が3位にランクしたリビングストン・エレクトロニクスを除き、組織改革に関する従業員の判断は我々と一致した。リビングストンの標準偏差値(組織改革の成果に関する社員間のコンセンサスの差)が比較的高いのは、活性化の成果について、社員の意見がかなり大きくわかれていることを示している。
一部の企業では、包括的な組織改革プログラムを相次いで導入したものの、ほとんど何らの成果も得られなかった。一方、かなりの成果を上げた企業もある。成果を上げた企業では一般に、本社から遠く離れたいくつかの工場や事業部のような周辺部から改革に着手している。しかもそれをリードしているのはCEOや本社のスタッフではなく、これらの事業単位のゼネラルマネジャーだった。
その方法は、組織の公式構造やシステムに重点を置くのではなく、具体的なビジネス上の問題の解決を目的とする特別の組織をつくることだった。そして企業の最も重要なタスクに取り組むために、社員の役割、責任、人間関係などをリンクし(タスクの連鎖:task alignment)、組織改革のエネルギーを抽象的な"参画"とか"カルチャー"などではなく、本来の仕事に投入した。さらに、USFのトップのように膨大な研修プログラムを導入したりスピーチや声明書などに頼ることもなかった。




