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リーバイ・ストラウス アンド カンパニーの会長兼CEOとして、ロバート・バースは2つの遺産を引き継いだ。1850年の創立以来、サンフランシスコに本拠を置くこのアパレル・メーカーは、社会的に価値あるものや労働者に対して積極的に取り組むことと、商業的な成功を両立させたことでよく知られてきた。
同社の主力製品リーバイス・ジーンズがアメリカン・ポップ・カルチャーの偶像となり、ベビー・ブームの波に乗って売り上げが急増した戦後の多くの期間を通じて、この2つの目標を達成することは比較的容易であった。だが、1980年代の不確かな経済環境の中で、ハースとそのマネジメント・チームは、根本的な価値観をも含めてビジネスのすべての局面を再考しなければならなくなった。
1984年にCEOに任命されて以来、ハースは同社の企業戦略を再定義した。つまり、従業員の3分の1削減という苦痛に満ちたステップを含めて組織の贅肉を落とし、新製品の開発やマーケティング、新技術への大幅な投資などを成し遂げてきた。1985年、ハースとそのチームは、1980年代で最も成功したマネジメント主導型LBO(レバレッジド・バイアウト)の1つによって、同社の株式を非公開化した。そして1987年、彼はリーバイ・ストラウス社の企業理念「アスピレーション」を起草する監督に当たった。これはマネジメント、従業員の双方が共有する価値観を定義づけるための一大イニシアチブであった(囲み「リーバイ・ストラウス アスピレーション」参照)。
リーバイ・ストラウス アスピレーション
私たちは、社員が誇りをもって職務に専念できるような会社を目指す。それは、だれもが派閥や学歴によらず能力に応じて貢献し、学び、成長し、昇進する機会の持てるような会社である。私たちは、社員が、自分が重んじられ、公平に扱われ、自分の意見には耳が傾けられ、ともに参加し貢献しているという意識を持つことができることを願う。そして何よりも、業務の達成や、仕事仲間との友情、調和のとれた公私の生活から満足感を得、また努力することの喜びを見いだせることを望む。
リーバイ・ストラウス アンド カンパニーの将来は、私たちが受け継いだ基盤の上に築かれるべきである。会社のよき伝統を守り、原則と現実の間にギャップがあればそれを埋め、私たちの持つ価値あるものを時代に合うように常に新しくすることが必要である。
理念を実現するためのリーダーシップとは何か
新しい行動様式:率直で偏見を持たないこと。また他人の成功を認める寛大さを持ち、問題の原因が自分にあれば自ら進んでそれを認めること。そして責任感を持ち、チームワークと相互信頼を重視することである。私たちは、これらの行動様式において模範となるだけでなく、他の人々を指導しなければならない。
多様性の容認:組織のあらゆるレベルで業務に携わっている多種多様(年齢・性別・人種など)な人々や、様々な経験や異なった各種の見解を尊重することである。全社員の豊かな経験や能力を十分に活用し、多彩な人々が要職に就けるよう努めるべきである。異なった視点からものを見つめる努力を怠ってはならない。すなわち多様性は重視され、抑圧されることなく誠実に報われなければならない。
功労を認める:会社の成功に貢献した個人やチームに対して物心両面において十分に報いることである。何かを新たに創造したり発案した人々はもとより、日々の業務をたゆまず支え続けている人々を含め、貢献した人すべてがその功労を認められなければならない。
倫理規定の遵守:倫理的行動規範を自ら実践し、模範を示すことである。私たちは守るべき規範を明確に示し全社を挙げてこれらを遵守しなければならない。
明確なコミュニケーション:会社、部門、個人の目標と実績を明確に示すことである。社員は会社が自分に何を期待しているのかを知らされなければならない。また実績及び職務上の要望について適時、誠実な回答を与えられなければならない。
権限の委譲:私たちの製品や顧客に直接かかわっている社員に、より大きな権限と責任を委譲することである。責任を与え、信頼し、功績を認めることにより、社員の能力を最大限に活用することができるのである。
価値観ということを口にするCEOは多いが、価値観をビジネス運営上の中心に据えるということをハースほど論じ尽くしたCEOはほとんどいない。「アスピレーション」は、同社が職務上の役割と責任をいかに定義し、業績をいかに評価し、新しい労働者をいかに訓練し、仕事をいかに組織化し、かつ企業意思決定をいかに下すかといったことを具体化しようとするものなのである。
同社の長い歴史と規模にもかかわらず、アスピレーションの成果は、目覚ましいほどに柔軟でイノベイティブな企業になることに結実した。リーバイスは、納入業者や小売業者と企業をより緊密にリンクするエレクトロニクス・ネットワークの活用においてパイオニア的存在である。1986年に発表された「ドッカーズ」は、アパレル産業史上、最も急成長を遂げた商品ラインの1つである。そして同社はグローバルな市場へ全面的に進出することでも成功を収めた。1989年、海外部門はリーバイスの総売り上げの34%、営業利益の45%を占めた。
リーバイスの財務的成果も、これまたケタ外れな水準を維持してきた。1985年から1989年までに、売り上げは31%増えて36億ドルに達し、収益は5倍の2億7200万ドルに上った。
一方、同社は新しい時代の経済的・社会的現実に照らして、社会的諸問題への取り組みの仕方を一新しながらも、問題に対する取り組みの姿勢は一貫して誠実であった。リーバイ・ストラウスは、労働者の多様化から、工場閉鎖や技術革新によって解雇された労働者の手当てに至る諸問題においても、模範的な記録を持っている。深刻化するエイズについては、ハース自身、企業の責任に関して最も積極的に発言してきた。
リーバイ・ストラウスの遺産の再構築ということは、ハースにとって特別の意味を持っている。彼はリーバイス創立者の5代目の甥に当たり、彼の叔父も、父も、祖父もすべて彼に先立って、同社を率いた。彼は1973年にリーバイ・ストラウスに入社、企画・政策担当副社長、事業本部担当社長、執行副社長兼最高業務執行責任者(COO)を含め、様々な指導的地位に就いた。そのほか、マッキンゼーのアソシエイトとしても仕事をし、2年間、アフリカの象牙海岸で平和部隊のボランティアとして過ごした。
インタビューはサンフランシスコのリーバイス本社で行われ、インタビュアーはHBRのアソシエイト・エディター、ロバート・ハワードが務めた。
HBR(以下略、ゴシック部分がHBR):リーバイ・ストラウスは、企業の社会的責任に取り組んでいることで古くから有名です。今日、貴社が価値観ということをこれほど強調されるのはなぜですか。



