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□1990年初め、アメリカン・プレジテント社(APC)は、ミシガン州ウッドヘイブンとメキシコのエルモシーリョにあるフォードの自動車組み立て工場の間を結ぶ二段積みコンテナ列車サービスを開始した。APCは、部品や半製品を納入業者から集荷し、組み立て工程の順番どおりにコンテナに積んでエルモシーリョまでジャスト・イン・タイムで配送するという一連の作業に必要な、すべての情報、輸送、在庫管理サービスをコーディネートする。その中には、4つの鉄道会社間の調整や、通関で手間取らないためのメキシコ税関当局との調整も含まれている。フォードの工場には最新鋭のコンテナ列車専用ターミナルが整備され、組み立て工程に部品が順序よくスムーズに流れるようになっている。ここでもAPCは、自社のクレーンを持ち、コンテナからの部品の取り下ろし作業を管理している。アメリカへコンテナを返す際も、APCとフォードは、マキラドーラ地区で生産された半製品や専用の部品ラックを帰り荷として積むなどの協力を行っている。
□リーバ・ブラザーズ社とディストリビューション・センターズ社(DCD)が共同して始めた倉庫のベンチャー事業が実を結ぼうとしている。オハイオ州コロンバスに、DCIが化粧品メーカーであるリーバ専用のハイテク倉庫を建て、人員を配置し、運営を行っている。このベンチャーでは、両社が利益とリスクを分担している。すなわち、もし倉庫の利用率があらかじめ決められたポイント以下になった場合は、リーバが経費の一部を負担する。一方、倉庫がフルに利用され、規模のメリットが出てくれば、DCIはその恩恵にあずかることができる。同様のベンチャーは、リーバとアトランタのドライ・ストーリッジ社の間にも存在する。
□シュナイダー・ナショナル社が、90カ所に及ぶミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチャリング社(3M)の配送ポイントにおいて、輸送事務の改善のため、コンピュータによるスケジュール管理とEDI(電子データ交換)サービスを開始したのは1980年代末のことである。このサービスでは、3Mが使用するすべてのトラック会社間の貨物の積み替えと関連する文書業務の調整が行われた。これにより、3Mは、最新の情報技術の恩恵に浴し、シュナイダー・ナショナル社は、3Mの全国レベルでの中核輸送業者としての地位を確立したのである。
これらは、最近一般的になりつつある「物流パートナーシップ」の例である。10年前にはほとんど聞かなかったこのような契約が流通・保管コストを低減する手段として普及してきている。多くの製造業者や販売業者にとって、顧客サービスの質を大幅に改善するチャンスを与えるのがこうしたベンチャーなのだ。
典型的なパートナーシップの当事者は、専属的な物流サービスの提供者と商品の生産者であり、共同で商品を顧客のもとへスムーズに届けるためのシステムを構築することとなる。しかし、例えば2つの物流業者間あるいは2つの荷主企業間といった、様々な形態が存在する(囲み「物流パートナーシップの分析」の中で、いくつかの形態について述べている)。
物流パートナーシップの分析
物流パートナーシップは、通常の企業間協力と異なる3つの特色を有する。第1はパートナー企業間の結び付きがはるかに広範にわたり、あたかもベンチャー自体が1つの大きな組織体として固有の役割、原則、価値基準、目的等を持っているように見えることである。従来の荷主企業の考え方に立てば、物流サービスを外部委託するかどうかは、主としてコストの観点から、自前でやるのと外注するのとどちらが安いかで決定されることになる。しかし、物流パートナーシップは、パートナー企業が協力し合うことによりシナジーを生み出そうという特別な提携関係である。
第2の特色は、物流パートナーシップが個々の取引でなく、もっと継続的な関係を重視することである。高度の相互依存関係を築くことにより、さらなる協力が生まれていく。そして、パートナー企業が顧客の満足と信頼を獲得しようと協力し合う過程で、パートナー企業相互の信頼も確かなものとなるのである。
物流パートナーシップの様々な形態の中で最も一般的なのが、荷主企業と倉庫、鉄道といった物流企業の間の提携である。例えば、シアーズ・ビジネス・システムズとアイテル・ディストリビューション・システムズのイリノイ州アルシップでの共同事業を見てみよう(イラスト参照)。シアーズはアイテルの倉庫の中に顧客の注文に応じて製品に改造を加える改造室を運営している。アイテルは、シアーズの情報ネットワークと結んですべての物流サービスを提供するが、基本的な製品組み立てを行って、改造を要するものを改造室に持ち込むことになっている。そして、アイテルが最終的な完成組み立てを行って、顧客への適時配送を果たすのである。
物流パートナーの中には、複数の物流業者の得意分野を組み合わせて競争力を高めようとするものもある。サンタフェ鉄道とJ.B. ハント・トランスポート・サービスは最近、複合一貫貨物輸送で提携を始めたが、ここでは前者が長距離輸送を担当し、後者が集荷と配送を担当する。そして、このシカゴ~ロサンゼルス間のデイリー・サービスを定着させるため、両社はUPSやラルストン・ピュリーナといった輸送業者の貨物を引き受けている。物流業者同士のベンチャーが、製品の売り手企業にサービスを提供する形態もある。
物流パートナーシップで比較的多く見られるのは、複数の製品売り手企業間の垂直的な提携であり、特に在庫の所有権移転という形が多い(輸送業者が加わる場合もある)。単純な例は、プロクター・アンド・ギャンブルとウォルマートの場合であろう。もう少し複雑な例としては、婦人用既製服関連の4社がパートナーシップを組んだものが挙げられる。繊維を製造するデュポン、繊維を生地にするミリケン、婦人服製造のレスリー・フェイ、そしてデパートのディラードは、お互いの資源を有効に活用し合って、変化しやすいファッションに対する消費者ニーズに対応しようとした。具体的には、在庫補給のスピードを速め、繊維段階から既製服の小売り段階へ至るまでの時間を短縮することを目的としたものである。
だが、もう1つのタイプとして、同じ顧客層を持つ製品売り手企業間の水平的なパートナーシップも存在し、この場合には物流業者がコーディネーターとして参加することもある。医療用品業界では、電子データ交換(EDI)に支えられた高頻度の共同配送システムが導入されている。アボット・ラボラトリーズと3Mが1987年に始めたパートナーシップは、事務用品のスタンダード・レジスター、コンピュータのIBM、使い捨て用品のキンバリー・クラーク、泌尿器科用品のC.R. バードの各社も加わって拡大した。最初にアボット・ラボラトリーズと3Mが提携を始めたのは、ライバル企業のバクスター・ヘルスケアとジョンソン・エンド・ジョンソンに対する競争力を強化するためであった。
輸送や保管を専門業者に任せるのは、日常茶飯事である。ここで論じている関係が通常と異なるのは、パートナー同士がお互いの利益のため一体となって業務を行う、その革新的なやり方である。代表的な例は、製薬及び事務用品分野の小口貨物配送サービスでニッチを築き上げたドラッグ・トランスポート社である。
アトランタに本拠を置くこの輸送業者は、卸売業者から顧客の小売業者のもとへ毎日決められた時間に商品を配送するため、独特のサービス・運賃体系を設定した。運賃は、貨物量のいかんにかかわらず、固定された料率に基づいて決定される。料率は、30日ごとの契約期間の前に、平均ロットに基づいて決められ、契約期間中は変更されない。その結果、卸売業者にとっても、小売業者にとっても、毎日確実な配送サービスを決まった運賃で受けられることになる。そして、ドラッグ・トランスポート社にとっても、こうした契約により一定の運賃収入が保証され、運行計画や車両管理がやりやすくなるのである。
また、このようなやり方は、敵対的なものに陥りがちな荷主と物流業者の関係を協力的なものにするという特徴もある。多くの場合、提携関係は5年以上続き、正式な契約というより非公式な相互理解のもとに行われていることもしばしばである。
物流専門業者の関与の度合いは、通常のサービスの提供から顧客の物流管理一切の受託まで様々である。例えば、セントラ社の輸送部は、ミシガン州ランシングにあるゼネラル・モータース(GM)の工場へ部品、半製品を指定された時間に配送するが、特別な機材を必要とせず、毎年契約の見直しがある。その対極にあるのが日本郵船とパイオニアの長期契約で、製品輸入から顧客への小口多品種配送に至るまで、すべての物流管理を日本郵船が担当し、このため、ロサンゼルス地区に100万平方フィートを超える倉庫スペースが確保されている。




