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わが社の社員が全員、常識的な方法で当たり前の意思決定をするとすれば、我々は止まることを知らないであろう。わが社に限ることなくどの企業であっても、常識的な方法で当たり前の意思決定をする人は極めて少ないことがわかっている。企業の衰退は、ほとんどの場合、人材の欠如や戦略的ビジョンの欠如に起因してはいない。実行の欠如によって衰退する企業がほとんどである。その実行は、ごく基本的で当たり前のブロックやタックルのようなものであり、偉大な企業は絶えず確実に遂行し、さらによくしようとして努力している。
サイプレス社のマネジメントシステムにおいては、全社はもちろん各部門、個人の活動成果が定期的かつ詳細に跡づけられるために、私を含めてマネジャーは、重要な問題を知る手がかりさえないなどと、もっともらしく主張することはできない。わが社のシステムのもとでは、マネジャーは、組織のすべてのレベルで何が生じているかを監視し、問題や対立を把握し、適切なタイミングで介入し、最善の行動を見いだす能力を与えられている――それは、意思決定を遅らせ、モラールを低下させる官僚的階層構造とは無縁の世界である。
多くの企業が"当たり前"の哲学を支持している。サイプレス社では、意外性のない"当たり前"であることこそが生活の仕方になっている。わが社は、不安定で厳しいビジネスの中で経営を行っている。集積回路(IC)は、多様な学問領域にかかわる1000種類もの仕事の最終的な産物である。その1000種類の仕事のうちの999までは成功よりも失敗の確率が確実に高い。わが社は昨年、159種類(そのうち56種類は1989年の新製品である)のチップを出荷したが、それらは26種類の異なった製造技術を用いた7種類の全く異なった製品カテゴリーに分けることができる。今年のわが社の製品種類は、さらに50種類を追加する計画である。わが社のスローガンは、規律、業績責任、細部に至るまでの徹底的な注意である――しかも、それは組織のすべてのレベルで求められている。
サイプレス社での成功の尺度はどのようなものであろうか。有言実行がなされているかどうかがその尺度である。わが社では販売予測と実績の差異は、毎四半期1~2ポイントである。我々は、予算を超過達成することはない――いかなるときもそうである。わが社の販売高の70%を占めるテキサス州ラウンドロックのシリコンウェハー工場は、操業開始後8カ月で最初の収益に結び付くウェハーを出荷した。この成果は、1984年にわが社のサンノゼ工場が樹立した業界記録とタイ記録である。
わが社のシステムを研究した人の中には、独裁者の亡霊を見いだしたり、あるいは"エレクトロニクスの踏み車"といった言葉を用いて表現する人もいる。こうした評価は全くナンセンスである。わが社のマネジメントシステムは、懲罰を与えたり、強制するためにつくられているのではない。社員は、何ら私の支援を必要とせずに自らプレッシャーをかけているのである。わが社のシステムは、集団思考を促進し、社員1人1人に毎日事実を直視させることを目指して設計されているのだ。
サイプレス社では社員は、事実についての詳細な情報を収集し、社員全員で共有することができるので会社は完全にオープンである。このことは、多くの組織体を半身不随状態に陥らせている内部的な勢力争いや官僚主義的閉鎖性とは相反するものである。サイプレス社の社員は、多くのことについて積極的に不同意を示す。経営ミーティングでは、どの階層の社員でも自由に(そして熱心に)上級経営管理者に向かって自分の考えを主張する。しかし、我々は本質的なことや経営管理のエッセンスである冷静な選択肢を決定するための最善の方法については同意しない。だれであっても、都合のよい情報だけを使って内部抗争で優位に立つことはできない。
技術変化が半導体産業を駆り立てている。そしてこの産業に特有の技術評価と製品開発に関する意思決定に際して、我々のマネジメント・システムのいくつかは有効である。しかし我々のマネジメント・システムの大部分(そしてその最も重要なもの)は、普遍的な事業課題――すなわち成果を上げるべく人々を動機づけることと生産性を高めるべく資源を配分すること――を取り扱うものである。長期間にわたって成功し続けるためには、我々は競争相手よりも、少なくとも4つの点に関してうまくやらなければならない。
1. 能力の傑出した人を雇用し、離さないようにしっかりつかまえておくこと。
2. 組織のすべての人が挑戦的な目標を設定し、それを達成するように促すこと。
3. 生産性を最大にするべく重要な資源(人、資本、経常支出)を配分すること。



