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ミスはどんなサービスにおいても決定的な部分である。一所懸命やっているようなサービスのよい企業でも、ときにはフライトが遅れたり、ステーキを焦がしたり、配達の品物を紛失してしまうことがある。実際、お客様の目の前で行われるサービスにおいて、間違いは避けられないものである。
しかし不満足なお客様にとってはそうではない。すべての問題を避けることができないにせよ、企業はクレームに対する対応を学ぶことができる。うまく対応した場合には、怒っていらいらしているお客をお得意様にすることもできる。事実スムーズに事が運んだ場合よりも好感を生むことが多い。パリを拠点とする地中海クラブのカンクン支部がどのようにサービス部門における悪夢に対応し、バケーションに来たあるグループの信頼を得るに至ったかを紹介しよう。
バケーションに来た人たちは、ニューヨークからメキシコの目的地まで来るのにもトラブル続きだった。フライトは出発が6時間遅れ、2つの空港に予定外に止まり、着陸するまでに上空で30分も待機していた。こうした遅延と事故のため、飛行機は途中10時間も予定航行時間をオーバーし、機内には食べ物や飲み物がなくなってしまった。ようやく午前2時に到着したが、着陸も酸素マスクや荷物が上から落ちてくるような乱暴なものであった。飛行機がようやくゲートに着いたときには、不機嫌な乗客たちは空腹に気が遠くなりながら、バケーションは始まる前からだめになってしまったと考えていた。乗客の中にいた弁護士は、集団民事訴訟のために住所や名前を控えていた。
セルビオ・デ・ボルトーリはカンクンの総支配人で、地中海クラブの中でもお客様を満足させる能力では伝説的な人物だった。彼はすさまじいフライトの状況を聞くとすぐに対応策を用意した。スタッフの半数を空港に向かわせ、軽食や飲み物を用意して、ステレオでうきうきさせるような音楽を流した。お客様はゲートを通り抜けると、1人1人あいさつを受け、荷物を持ってもらったり、慰めの言葉をかけてもらい、リゾートまで車で送ってもらった。地中海クラブで彼らを待ち受けていたのは、マリアッチの楽団やシャンパンまで用意された豪華なパーティーだった。その上スタッフは他のお客を集めて、新着のお客様が来るまで待ってもらい、歓迎してもらった。パーティーは日の出まで続き、お客様の多くがこんなに楽しいのは大学以来だと言った。
最終的にはバカンス客たちはニューヨークからのフライトが順調にいったときよりはずっといい経験をした。会社は測定することはできないかもしれないが、地中海クラブはその夜にシェアを拡大しただろう。つまりシェアの争いは人口の動向を分析したり、ポイントを評価するなどの概括的な方法ではなく、お客様をそのつど楽しませるということなのだ。
サービスにおけるクレームへの対応の機会は無数にある。お客様と接する従業員が発見して解決できるような問題は、通常必要とされること以上のことをすることで、生涯のお客様を勝ち取ることができる。もちろんボパールのガス漏れ事故やTylenolの中毒などの大規模な損害をもたらし、経営首脳が取り組まなくてはならないようなものについてそういっているのではない。伝票の間違いや配達の遅れのような一見小さいが、人をかっとさせる可能性があるような問題についていっているのである。そういうことで、首脳陣に向けた怒りの詰まった手紙が書かれるのである。
偶発的な問題を取るに足らないとし、苦情を言うお客様を変わり者として処理しがちだが、マネジャーはそういった安易な言い訳に対しては反対しなければならない。どんな商売でもお客を逃していいほど余裕のあるものではない。新しいお客を得るには、以前からのお客を維持するよりもコストがかかる――多分5倍くらい――という点からだけでも多くの産業の専門家は納得するだろう。お客から遠ざかり、いらいらさせるような企業は、じきにだれからも見向きもされなくなるだろう。自分たちのやり方を超えてまでも、お客様を喜ばそうとする会社にはより多くのお客が来るだろう。
サービスに関する問題にうまく対応することは可能だが、それはデ・ボルトーリのような特別な人物が指揮してお客の問題を解決してしまう場合である。企業はこのようなめったにいないような機転のきく人物の存在に頼るべきではない。組織のだれもが運営の中の一部として、サービスに関する問題に対応する技術と動機と権限を持つことを、段階を踏んで確実にするべきである。
クレーム対応への道
サービスに携わる企業は、足を滑らせた後すぐにバランスを取り戻し、通常の業務に戻れるような体操選手のようにならなくてはならない。そうした物腰は、お客の満足を目標とすることに焦点を合わせ、お客中心の態度を受け入れ、クレームへの対応に必要な特別な技を育成することによって身につけることができる。
皮肉なことに、クレームへの対応の技術は、品質管理運動を実施し、ここ10年間にサービスの提供の流れをつくり効率化してきた企業にとっては、特に難しいものである。「一番適切なことをしろ」という警告を受け入れ、「欠陥ゼロ」(ZD)という生産哲学を取り入れたことによって、そうした企業はそれを実現するために、融通のきかないシステムをつくり出してしまった。進歩した技術を紹介し、従業員の行動を管理するため、厳格な運営方針をとった。その基本的な考え方としては、教育を受けていない、やる気のないような従業員でも、一貫して高い水準のサービスを提供できるよう保証するというものであった。1980年代には、飛行機の発着スケジュールや銀行取引の通知、ホテルの客室のメンテナンスに至るまで、すべてのサービスの水準を高めるようなこうしたシステムが開発された。こうしたシステムはすべてベルトコンベア式の製造システムにならって構築された。



