10年以上にもわたる企業再構築(リストラクチャリング)と減量(ダウンサイジング)にもかかわらず、アメリカ企業の多くはいまだ1990年代における事業運営の態勢が整っていない。急速な技術変化と、かつてないほど短期化した製品サイクルのときでありながら、製品開発の歩みは多くの場合遅々たるものである。顧客の時代にありながら、受注処理の失敗率は高く、顧客からの照会が何週間も放置されている。資産活用が決定的に重要な時期に、在庫水準は需要を何カ月も上回っている。

 業績を飛躍的に改善させるためのおなじみの方法である合理化と自動化も、企業側が望むほどに劇的な改善を実現していない。特に情報技術に対する大規模な投資は、企業がこの技術を旧態依然たる業務遂行方法の機械化に用いていることが主たる理由で、不本意な結果に終わっている。彼らは既存のプロセスに手をつけないまま、単純にその速度を上げるためにコンピュータを用いている。

 だが、プロセスのスピードアップは、成果の面での根本的な欠陥を改善する上では役に立たない。我々の職務設計、作業フロー、管理制度、組織構造の多くは、異なった競争環境の時代の産物であり、コンピュータの出現以前のものなのである。これらは効率と管理を目的につくられた。しかるに新たな10年間の規範となるのはイノベーションと迅速性、サービスと品質なのである。

 今や牛のような歩みを捨てるときだ。時代遅れのプロセスをシリコンとソフトウエアに詰め込む代わりに、これらを一掃し、ゼロから始めるべきである。ビジネスの"業務再構築"(reengineering)を行うべきなのだ。すなわち、ビジネス・プロセスを根底から再設計し、その成果を劇的に改善させるために最新の情報技術の力を用いるのである。

 どんな企業も、極めて多数の曖昧なルールに従って運営されている。"信用の決定は信用部門によって行われる""現地在庫は優れた顧客サービスのために必要だ""書式は完全かつ適切に記入すべきだ。"業務再構築では、ビジネスをいかに組織し、いかに動かすかについての古いルールを断ち切ることに取り組む。このことはあるものを再組織し、あるものを否定し、その上で業務達成のための想像力に富んだ新しい方法を発見することを意味する。プロセスを再設計する過程で、時代に即した新しいルールが浮かび上がってこよう。これによって初めて、飛躍的な成果の達成を期待することができるのである。

 業務再構築は、小出しな計画でできるものではないし、また小規模かつ用心深いステップで達成できるものでもない。これは結果が予想できない、一か八かのやり方である。しかしながら、ほとんどの企業は勇気を奮ってそうするほか選択の道はない。多くの企業にとって業務再構築は、自社を破綻に導く恐れのある時代遅れプロセスと決別するための唯一の希望なのである。幸いなことに管理者には全く助けがないわけではない。相当数の企業がすでにそのプロセスの業務再構築を成功させており、それによって他の企業にいくつかの経験則を提供しているのである。

フォードとMBLはどうやったか

 日本企業や若い企業家的ベンチャーは、際立って優れた水準のプロセス成果が可能なことを毎日のように示している。彼らは製品を2倍も早く開発し、資産を8倍以上も生産性を上げて活用し、10倍も迅速に顧客に対応している。またいくつかの大規模で成熟した企業も何が可能かを示してくれている。フォードやミューチュアル・ベネフィット生命保険(MBL)といった企業は、そのプロセスの業務再構築を実行し、その結果、競争上のリーダーシップを達成しているのである。フォードはその支払勘定プロセスを、ミューチュアル・ベネフィット生命は保険申し込みの処理を業務再構築した。

 アメリカの自動車産業が不況下にあった1980年代初め、フォードのトップ・マネジメントは、他の多くの部門とともに、支払勘定部門をコスト節減の方途を探るために顕微鏡的観察の下に置いた。支払勘定部門では北アメリカだけで500人以上を雇っていた。経営陣は、プロセスの合理化と新しいコンピュータ・システムの設置により人員を20%程度削減できると考えた。

 フォードはこの支払勘定部門の減量計画に没頭したが、それはマツダを知るまでだった。フォードが400人構成の部門を努力目標としていたのに対して、マツダの支払勘定組織は総勢わずか5人で構成されていたのである。この絶対数の違いは愕然たるもので、たとえマツダの規模の小ささを考えても、フォードの計算では支払勘定組織は本来あるべき規模の5倍の規模を持っていたことになる。フォードのチームはこの格差が、社内体操や社歌、あるいは低金利に帰すべきものではないことを十分心得ていた。

 フォードの管理者はその目標を大幅に切り上げ、支払勘定部門は単に100人減ではなく、数百人少ない経理部員で運営されるべきものとした。そしてこれを達成するための計画に取りかかった。まず管理者たちは現行のシステムを分析した。フォードの購買部門が購入発注書を書くと、その写しが支払勘定部門に回される。その後、資材管理部門が物品を受領すると、受領書類の写しが支払勘定に送られる。その間にベンダーは支払勘定部門に請求書を送る。そこで購入発注書と受領書類及び請求書を照合するのが支払勘定の仕事となる。これらが合えば、この部門が支払いを行う。