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多くの人たちが考えている理由とは異なるが、リーダーシップとマネジメントは明らかに異なっている。リーダーシップは神秘的なものでも、不可解なものでもない。また「カリスマ性」を備えているとか、普通の人とは異なった性格特性を持っていることも関係はない。リーダーシップは、少数の選ばれた人たちの特権領域でもない。さらにリーダーシップが必ずしもマネジメントより上位に評価されているわけでもないし、マネジメントを代替するものでもない。
むしろリーダーシップとマネジメントは2つの異なった行動のシステムでありながら、かつ相互に補完し合うものである。それぞれは独自の機能と特徴的な活動領域を備えている。複雑性を増し、変化が激しくなったビジネス環境のもとでは、ビジネスの成功のためにこの両方が必要とされているのである。
アメリカの多くの企業では、過度にマネージされ、過少にリードされている。これらの企業ではリーダーシップが発揮されやすい土壌をつくり上げていくべきである。成功する企業ではリーダーが出現するのを手をこまねいて待っているわけではない。こうした企業では、リーダーとしてのポテンシャル(潜在能力)を備えた人物を積極的に探し出し、そのポテンシャルを開発するために設定されたキャリア経験を積ませるようにしている。実際、注意深い選抜、育成、励ましのおかげで経営組織で重要なリーダーシップの役割を果たしうる多くの人材が育っている。
しかし企業としては、リードできる人材を育てるのと同時に、お粗末なマネジメント能力を備えた強いリーダーは、その逆のマネジャー(お粗末なリーダーシップを持ったマネジャー)と同じように始末に負えないか、あるいはもっと具合が悪い場合もあることをよく理解しておくべきである。強力なリーダーシップと強力なマネジメント能力の両方を併せ持ち、かつ双方で調和を取り合うようにそれぞれを活用していくことこそ、企業にとっての真の挑戦なのである。
言うまでもなく、すべての人材がリーダーとしてマネジャーとして両面に秀でることは難しい。一部の人材は優れたマネジャーになりえても、強力なリーダーになる素質は備えていない。またある人材は、様々な理由から優れたリーダーになる素質は備えていても、強力なマネジャーになることは大変難しい。そこで優れた企業はこの2つの種類の人材をともに尊重し、両方ともチームの一部として組み込んでいくことに努めている。
しかし企業が実際に人材を経営幹部職に育成するときには、「人材は同時にマネージし、リードすることはできない」と主張する最近の学説をまさしく無視している。企業は、リーダーであり、マネジャーである人材を育てようとしている。リーダーシップとマネジメントの基本的な差をしっかり理解できれば、その企業のトップ・マネジメントに両方の能力を発揮させるよう、導くことは可能だ。
マネジメントとリーダーシップの差
マネジメントとは複雑性への対応を意味する。その実践と方法は、20世紀の最も目覚ましい進展の1つである「巨大な企業組織の出現現象」におおむね対応しているものといえよう。優れたマネジメントが存在しなければ、企業の存続を脅かすほどに企業に混迷を生じやすい。また、優れたマネジメントは、製品の質や収益性といった主要な経営の側面に秩序と一貫性の保たれた状況をもたらす。
一方、リーダーシップのほうは変革に対応することである。近年このリーダーシップの重要性が増してきた。それはビジネスの世界で以前にも増して競争が激しくなり、変動的になってきたためである。急速な技術変化、増大する国際規模の競争、市場の規制緩和、資本集約型産業における過剰な生産能力、不安定な原油生産国カルテル、ジャンクボンドによる市場かく乱者、労働力の人口構成変化等は、ビジネスの世界の変動を促している要因の一部である。この結果、昨日達成してきたことを続けること、あるいはこれまでより5%の増大を達成することでは、今や成功の図式になりえなくなっている。この新しい環境下で生き延び、さらに効果的に競争していくためには大きな変革がますます必要となってきている。より変革を求めるならばリーダーシップはさらに必要となる。
ここで簡単な例として軍隊について考えてみよう。平時の軍隊は、階層組織の上から下まで優れた管理とマネジメントが備わっており、優れたリーダーシップは最上層部に集中して存在していればまず存続は堅持される。しかし戦時の軍隊では階層のどのレベルにも有能なリーダーシップが必要となる。今まで戦場で兵士をいかに効果的に"マネージする"かについて解明した人は存在しない。兵士たちは"リード"(指揮)されなければならないのである。



