数年前、私は25人の営業マンを評価する仕事を請け負った。営業マン1人1人に同行してフィールドに出て、一日中彼らが顧客や見込み客を訪問するのを観察した。

 もちろん、たった一日で典型的な結果を手にすることなんかできないだろう。しかも、観察した日の結果は、ほぼ間違いなく普通の日の結果よりよく出ているだろう。営業マン(顧客のほうも同様に)は、自分の最高の行動を見せようとするからだ。

 しかし、私は、営業成績そのものには関心はなかった。営業マンの生産性になぜ大きな格差があるのか、その理由を解き明かすことを依頼されていたからである。調査を進めるに当たって、行動面の差を明らかにすることに焦点を置いていた。営業マンが、顧客のところにいるときだけでなく、訪問の合間でもどのように振る舞っているかが、長期間にわたる営業成績の差に関係があるかどうかを知りたいと思った(フィールドに出ているときは、私はだれの実績も知らなかったので、先入観によって見方が歪むことはなかった)。

 扱っている製品はありふれた自動車部品である。営業マンは、見本や厚いカタログを携えていって、無数に種類やサイズのある文字どおり数千種類もの部品の注文をとっていた。顧客は修理工場のオーナーか自動車ディーラーの部品部門のマネジャーであった。

 これらの商品は普及品であった。だから、どの営業マンにも、少なくとも6人ぐらいの競争相手がおり、彼らもほとんど似た商品を売り歩いていた。もちろん、購入者である顧客は、価格に敏感で、他の営業マンが有利な取引条件を持ってくると、すぐにそのことを話してきた。営業マンはある程度の価格の裁量権を持ってはいた。しかし、値引きをすると収入に影響するので、本気では譲歩の話を持ち出すのは気が進まなかった。

 訪問のたびに、私はずっと後ろに静かに立っていて、可能な限りすべてのことを観察した。顧客は、ほとんどが私のことを少し気にする程度だった。営業マンは、私のことを曖昧に同僚ですと説明していた。訪問の合間には、営業マンの車の中で印象を走り書きしたり、営業マンに彼自身(25名の営業マンはすべて男性だった)のことについて話してくれるよう頼んだ。

 観察しているうちに、注文の大きさと営業マンが説得に傾けた努力の程度との間には大体において逆の関係があることを発見した。ほとんどの大型の注文は、それほどの販売行為をせずにとれていた。営業マンを明らかに信頼し、信用している顧客は、2、3分以内に注文を出し、多くの場合引き続いて紹介状を書いてくれた。そんな顧客は、ほとんど価格のことには触れなかった。そのため、大型注文の獲得には、訪問中の営業マンの営業の進め方よりも以前の訪問で築いた関係が影響しているように見えた。

 反対に、営業マンが注文をくれるよう懇願したり、注文をとるために(商品や価格のことを次々と推奨して)悪戦苦闘したり、顧客が商品のことにはちっとも触れずに脇道にそれて、野球や政治や地方の経済情勢などのことを長々と話すのを我慢強く聞いているようなときは、結果としては小さい注文しかとれないようだった。この結果からも、顧客は営業マンを区別しており、多くの営業マンのうち、よい関係が保たれている1人(または数人)の営業マンと喜んで仕事をしているということがわかった。

 以上の理由から、私は、結局は、営業マンよりも顧客のほうを研究することにした。訪問によって得られる結果は、商品を購入するとか、長々とした売り込みに抵抗するとか、営業マンの嘆願を無視するとか、話し好きの酔っ払いがバーテンを話し相手にするのとちょうど同じように営業マンを扱うとかいった、顧客側の傾向に明らかに左右されていた。しかし、何が顧客のそのような傾向を決めるのだろうか。

 いつのまにか自分が営業マンの行動のうち、相互に関連があると思われる3つの側面に焦点を当てているのに気づいた。焦点の定まった話の進め方と訪問中の時間管理と力の持続性である。