ビジネスの世界に普遍的に当てはまる自明の理などというものはほとんどないが、次の4つの真理はいかなるビジネス環境においても妥当である。

 すなわち――

 1. 長期的に見れば、より低コストのサプライヤーになることこそ絶対的な必須事項であるということ。

 2. 競争力ある立場にとどまり続けるには、いかなる製品・サービスであれ、その生産・供給のインフレ調整後コストは常に下降傾向をたどらなければならないということ。

 3. 各製品、各製品/市場区分、及びすべて主要顧客についての真のコストと収益の実像が常に認識されていなければならず、伝統的な会計慣行のためにそれらが不明確にされるようなことがあってはならないということ。

 4. 企業は、収益面と同じくらいキャッシュ・フローと貸借対照表の面での強さにも注意を注がなければならないということ。

 ますます競争の高まるグローバル・ビジネスという環境においては、失敗の余地がますます少なくなっていることから、以上の真実はいよいよ重要なものとなっている。

より低コストのサプライヤーになること

 一般産業であれ、ハイテクであれ、サービスであれ、もしある企業が同様の製品ないしはサービスを提供する他のすべての企業よりも低コストのサプライヤーでないのであれば、長期にわたり成功を維持することはできない。短期的な存命は可能かもしれないが、長期的な成功は不可能である。独占的優位は決して長続きするものではない。人生と同様、製品やビジネスにも成熟と衰退はつきものであり、価格とマージン(差益)が圧力に屈するのは避けがたいことだ。競争上の製品差別が色あせていくにつれ、購買決定においては価格がより重きをなすに至る。効率性のより高いサプライヤーならば、不断に生産性の改善とコスト削減に努めるであろう。そうすれば、たとえ価格面の圧力が強まろうとも、マージンは少なくとも維持されるであろうから。だが、そのような手が打たれていない場合には、利益と市場ポジションが下落するのはまず確実である。ゼロックスのポール・アレアー社長は1988年、往時を回顧しながら、こう手短に述べた。「70年代半ばまで、我々は文句なしのコピー機の王様であった。だがついには、日本人が我々のつくるのと同じコストで高品質の製品を売っていることを悟った。競争というものが、市場における覇権的地位をいかにあっさりと、市場からの忘却へと変えうるものであるかを、我々は思い知らされたのである」。

 より低コストのサプライヤーであるということは必ずしも、全競合企業中で最低コストのサプライヤーであるという意味ではない。また、"より高いコストで生産し、より高い価格で売るという戦略"をとることは不可能であるとか、あるいは、それはとるべき戦略ではないとかいった意味でもない。むしろその真の意味は、ある企業のトータル・コストは、同等の製品ないしはサービスを同様の顧客区分に提供しているすべての競争相手の平均を十分に下回るべきだ、ということである。

 コストという場合、単に生産コストのみを意味するものではない。設計、販売、納品、サービスといった、間接費その他の諸コストが、トータル・コストの組成を逸脱させるということもありうるのだ。それらコストは、厳しいパフォーマンスや良識を求める圧力が存在しない好調時に過剰に累積しがちである。