1984年初頭に、東部のある金物店チェーンの取締役会は1つの重大な決定を下した。サプライヤーたちとの打ち合わせもせず、自社の所有するトラック全車両及び倉庫のネットワークを徐々に削減、廃止することにしたのである。この物流システムの維持費は、年間売上高の5%相当だった。取締役会は、自社はサプライヤーが直接自社の各店に配送してもいいだけの大口取引先であると確信し、こうした決定を下したのである。その計画によれば、サプライヤーの拒否にあった場合は、その製品を卸売業者から買うことになっていた。

 その数カ月後に取締役会は、この処置を大成功であったと評価していた。予期したとおり、各店ごとに、数々の小口の"ジャスト・イン・タイム方式"配送に対応するために経費や手間が増加することになった。しかし、保管と配送にかかる経費の節約は、新しく生じたコストをはるかに上回るものだった。

 サプライヤーは、そのほとんどがこのチェーン企業を主要顧客と考えていたのだが、彼らに与えた影響はどうだったのだろうか。当然のことながら彼らの予測は、全く覆された。以前は、そのチェーン企業の倉庫に2週間に一度、1つに大きくまとめて出荷していたのだが、それが今度は、100もの小さな出荷をこなす必要に迫られるものも出てきたのである。このことで、サプライヤー側の注文処理及び配送の経費は、大幅に増加した。顧客サービスのレベルも向上を迫られた。出荷物は以前ほど注意深く注文どおりに集荷されておらず、不完全なものが多くなった。1時間単位の過密スケジュールのために、配送は逆に遅れがちになった。こうした注文処理及び配送の混乱は、顧客の各店での在庫切れを引き起こす。そしてそのことは、サプライヤー、特に、こうしたサービスの向上を図らなかったサプライヤーには、売り上げの機会損失という状態をつくり出したのである。

 このシナリオは消費財市場を支配しつつある、ウォルマートや、トイ・ザ・ラスといった急成長小売業者に典型的に見ることができる。同時にデパート業界、自動車部品、事務用品その他の業界での合併や合同は、新しい超巨大チャネルを形成してきている。ばらばらだった市場は整理統合され、一握りの大きな強力な小売業者による市場支配の傾向がますます強まっている。

 新しい利益源を求めるに当たって、この新しいタイプのそつがない小売業者たちは、新しい経営システム、より厳しい管理及びより優れたオペレーション技術を採用している。このオペレーション技術の中には、POSシステム、オーダー管理のコンピュータ化、配送の"ジャスト・イン・タイム方式"などが含まれる。その結果は経費の低下と在庫の減少となって現れるが、それはしばしばサプライヤーの損失の上に成り立っている。

 この傾向は、力関係のバランスが大きくシフトしてきていることを示す一側面であり、それは小売業者にとっては、待ちに待ったものである。アメリカでは、売り上げに対して純収益1%というのが小売業者全体の平均で、それに対し、サプライヤーの平均は4%である。一方、イギリスでは、そつがない商人層といわれている食品小売業者は、平均4%の純利益を上げており、サプライヤーは逆に1%となっている。すぐにイギリスの例に追いつくことは難しいとしても、アメリカの小売業者も利益というパイから、大きな1片を手にすることができるようになるだろう。

 しかしながら単に、一連の供給業務における人々の間で経費負担者が変わったということだけが問題なのではない。不要な経費をつくり出すことも問題である。調査データによると食品業界においては、この傾向によって、一連の供給業務の経費が、25%から30%増えた。これらの経費の大半は、運送、保管、在庫維持(物流サイド)、不要な個人的コミュニケーション(セールス・サイド)、効果のない販売促進活動や広告(マーケティング・サイド)に起因するものと思われる。

 金物類や耐久消費財のようなその他の主要な消費財の分野における一連の供給業務の超過経費は、恐らくこれよりはいくらか低いと思われ、10%から20%の範囲であろう。

 調査によれば、サプライヤーの多くは、その経費の大半を負担しているが、負担していることに気づいているものはほとんどいない。これらのペナルティーは、いろいろな形で表れる。1つ1つを見れば大して実害がないように見えるが、まとまると問題が生じうる。ペナルティーには次のようなサプライヤーに対する要求、またはサプライヤーに影響を及ぼす行動が含まれる。