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アメリカン・ホスピタル・サプライ(AHS)社、ユナイテッド航空、マッケソン社のような革新的企業は、これまで情報技術の利用がうまいというので、世の称賛を博してきた。これらの企業は、顧客の消耗品の発注や航空券の予約を受ける際に、コンピュータを援用することにより、その利益や資産を増大するとともに、その業界の競争ダイナミックスを永久に変えてしまったのである。
だが、顧客を「閉じこめる」ことによって、このような先端企業のまねをしようとする会社は、取り残されてしまう恐れがある。なぜなら1社に特定した電子販売経路から複数の供給業者の売りものを包括した「エレクトロニック・マーケット」へと向かう進化に追いつけないのである。ユナイテッド航空の航空券予約システムは、他の航空会社の便も登録することによって、事実上すでに1つのエレクトロニック・マーケットを形成している。AHS社のシステム(AHS社とバクスター・トラベノル社と合併した現在は、バクスター・ヘルスケア社が管理している)もまた、その例にならおうとしているようだ。また現在医療機関は、バクスター社の競合会社の製品を注文するのにも、同社のコンピュータ網を利用できるのである。
このような1社に特定した販売経路を進化させる原因となった原動力は、社会全般的なものである。また近年急増してきた1社に特定した販売経路は、究極的にエレクトロニック・マーケットに向かって同じ道を歩むと思われる。そしてコンピュータを援用した購入販売へと向かうこの進化により、伝統的なマーケティングと流通のパターンが崩壊していくだろう。
競争の場面が変わるにつれて、エレクトロニック・マーケットを形成する会社やそれをうまく利用する会社の中には、勝者として生き残るものもある。また知らないうちに流通チェーンからはみ出してしまう会社や時代遅れな取り決めによって、顧客を閉じこめようとする会社などは、敗者となるものと思われる。
供給業者と顧客がエレクトロニクスにより結ばれれば、それは、最終的に我々の経済に対してさらに一層大きな影響力を持つようになる。エレクトロニック・マーケットでは、交渉したり取引をまとめたりするのに要する費用が削減され、買い手にとって最も都合のよい売り手が見つけやすくなるから、一定の財やサービスを生産するより、むしろ買うほうが魅力的になってくるのである。
従って、垂直統合はどの会社にとっても、あまり魅力が感じられなくなる。付加価値チェーン、あるいはまた付加価値パートナーシップとして知られたつながりの中で、それぞれの役割を果たす会社のネットワークが、主要な業界構造となっていくのはもっともなことだ(1)。
進化について一言
1970年代を皮切りに、多くの供給業者が1社に特定した電子販売経路をつくってきた。顧客の側に設置された端末は、顧客とその費用を負担する販売業者とを結ぶけれども、それは当の業者の製品にしか利用できない。この種の初期の販売経路のいくつかは失敗に帰したが、成長し変化を遂げたものもあった。
電子販売経路が効果を発揮するとすれば、それは顧客に対して何か真に価値あるものを提供するからである。まず1つには、顧客が自分のところに端末を持てば早い話、販売代理人と接触するのよりも簡便であることが多い。それにまた、こうした電子販売経路は、購入にかかわる書類の処理や事務的作業の多くを省いてくれる。注文を処理し、顧客に請求書を送り、納品をチェックし、売り上げを入金するといったようなことは人手もかかるし時間も必要だ。電子販売経路は、この大部分を合理化できるのである。ある種のシステムにおいては、顧客はかんばん方式による部品調達協定を結ぶことにより、資材の在庫量を減らすこともできるのだ。これらはすべて、直接間接に顧客側の節約につながるのである。
売り手にとっての利益は、一層大きい。自分の手元にある電子端末の便利さに慣れた顧客は、売り手から見れば籠の鳥のようなものだ。競合会社は、この客をおびき出すために必死にならざるを得ないのである。
インランド・スチール社の持っている1社に特定した販売経路の場合、顧客はこれを使って同社のコンピュータ本体を呼び出して鉄鋼を発注し、その出荷を追跡できるようになっている。また、デジタル・エクイップメント社の持っているシステムでは、デジタルズ・エレクトロニック・ストアと呼ばれるオンラインのカタログ兼発注サービスを供与しており、顧客はこれを利用して同社のコンピュータ製品の大部分を注文することができる。



