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N.V. フィリップス傘下の、グレイラムペンファブリーケンのスーパーバイザリー・ボードの会長であるワイズ・デッカーは、真のヨーロッパ共同市場をつくることを最も強力に主張する1人である。
長い、そして輝ける人生の多くはフィリップスの極東における経営に捧げられたのであるが、彼は国際的競争や技術の発展がいかにヨーロッパや世界全体における企業、社会を変えつつあるかといったことを今日まで強く語り続けてきている。デッカー博士は、フィリップスのボード・オブ・マネジメント(Board of Management)の社長兼会長であった当時、同社を100年に近い歴史の中で最も激しい変革を行う方向へ向かわせた人間である。そして、彼の継承者は、引き続き同社を同じ方向へ導いたのである。
デッカー博士の見解は、国際化が要求する避けて通れない経済的改革を、国益に優先する必要性を理解している産業人の間で、彼を際立つ存在にさせたのである。そのことの1つに彼が、初めはヨーロッパ産業人の円卓会議の設立メンバーになり、現在その議長を務めているということがある。この円卓会議は、ヨーロッパで製造、技術面において重要な存在になっている大企業の会長、CEO、あるいはマネージング・ディレクターという企業のリーダーたちのグループである。円卓会議の基本的な狙いは、1つのヨーロッパ市場の設立を促進し、ヨーロッパの企業を取り巻く環境を改善し、ユーロベンチャーズ B.V.などの指導を通じて、起業家精神を高揚させることによって、ヨーロッパの競争能力を強化し、開発する手助けをするということにある。ユーロベンチャーズ B.V.は、ヨーロッパにおいて高い潜在能力を持っているサービス、あるいはハイテクの企業に投資を行うベンチャー・キャピタル企業である。
このインタビューは、オランダのアインドホーベンにあるフィリップス本部のデッカー博士の事務所において、HBRのシニア・エディターであるナン・ストーンによって行われた。
HBR(以下略、ゴシック部分はHBR):あなたがヨーロッパの企業を見たときに、何がそこで際立っていますか。国際的な競争の影響を総括しているような何らかの特別な出来事が起きていますか。
ワイズ・デッカー(以下略):競争は昨日までの平均的なマネジャーとは大きく違う新しいマネジャーをつくり上げています。もちろん、ヨーロッパの企業はこれまで常に輸出企業でした。しかし、その輸出はヨーロッパの互いの国の間で行う、ないしは大西洋を越えて輸出するというものでした。今や、我々は世界中で競争しなければならなくなっています。そのことは、実際には世界中の市場に、同時に商品を紹介しなければならないということを意味しています。これは新しい現象です。そして、エレクトロニクスのような情報産業界において、マネジャーたちが直面している製品開発の課題ということも新しい現象です。すなわち、商品のライフサイクルが大変短くなっているということ、あるいは投資を行う場合には、巨額の投資を行わなければならず、また、そのコストを回収して利益を出すまでの期間が大変短いという課題です。これらはすべて、昨日までのマネジャーは知らなかった事実です。このため、今日マネジャーたちは競争の仕方を変えてきています。
競争ということはまた、フィリップスのような巨大な多国籍企業のトップ・マネジャーをも変えています。私がCEOであった当時は、ほとんどのフィリップスの子会社のトップは、フィリップスの事業の中核が大変国際化しているにもかかわらず、オランダ人によって占められていました。その後、ある時点において、我々はこのようなやり方を継続していくのは間違っているという結論に達しました。このことは、もはやオランダ人のトップ・マネジャーをつくらないということではありません。我々が言っていることは、もしもフィリップスのトップがオランダ人だけによって占められるということが伝統になってしまったならば、それぞれの国において能力があり、才能にたけている人々が、生涯フィリップスに勤めようという気持ちをなくしてしまうであろうということです。彼らは自分たちはある程度までは出世できるが、それ以上は出世できないと感じるでしょう。そこで、我々は今日まで徐々にこの状況を変えてきているのです。今日、イタリアにおけるフィリップスのトップはイタリア人です。カナダのフィリップスのトップはドイツ人です。また、ブラジルのトップにノルウェー人がなったことがありますし、フランスのトップにスイス人がなったこともあります。
我々はまた、日々の経営を行うマネジメント・ボードやマネジメント・ボードの仕事を監督するスーパーバイザリー・ボードの顔ぶれを変えることによっても、新しい事例をつくり上げました。この2つのボードのメンバーがすべてオランダ人だったのは、そんなに昔のことではないのです。現在、スーパーバイザリー・ボードには何人かのオランダ人と一緒に、数人のアメリカ人とドイツ人、フランス人、ベルギー人、イギリス人が各1人ずついます。一方、マネジメント・ボードにはドイツ人とベルギー人が1人ずつ含まれています。
これらの出来事は、我々がアメリカの新聞で読む出来事――ジョイント・ベンチャー、合併、敵対的買収、あるいは買収の試み――などのように、企業内における変革のペースが早まったということを示唆しています。ヨーロッパ社会そのものの変革のペースも、同じようにかなり早まっていますか。
はい、今日起きていることで最も重要なことは、我々が1つのヨーロッパ市場を持つことを大変はっきりと理解しつつあるということです。これは国内マーケットとしては世界最大のものとなるでしょう。アメリカの2億2000万人、及び日本の1億2000万人と比べて、人口は約3億2000万人になるのです。このことは、日本やアメリカにいる最大のライバルたちと競争していくのに十分な規模の上に組織づくりできる機会をヨーロッパの産業界に与えるでしょう。そして、そのことは我々が2年前に可能だと考えたよりももっと早く訪れることになるでしょう。



