コロッサル郡立病院は混乱して収拾不能になっていた。新たに雇い入れた医師、看護婦、技術員を抱え、何百万ドルもする設備の購入契約もでき、患者の予約も何カ月も先まで入っているのに、新しい施設は全く使用できなかった。それは、工事は未完成で、でき上がった部分も多くの欠陥を持っていたからである。

 なお悪いことに、工事を請け負った建設会社は病院側の不払いに対抗して、未完成建物に工事先取特権を設定し、病院側の使用を妨げていた。工事費は病院側の資金供給限度をずっと上回っていて病院のスタッフはカンカンになっていた。融資銀行は怒り、理事会は絶望的だった。

 どうしてこんなことになったのか。困りはてた理事長(金融サービス会社の地方支店長)は、どうしてこうなったのか、このプロジェクトの経過をたどってみた。

 2年前、理事会は重要な新しい施設を建設し、隣接の古い施設を改装する案を可決した。理事会は最良の病院建築家を雇った。理事のうちある者たちは、低コストの融資を受けるため特殊債券発行に努力した。またある者たちは、この病院を看護と研究のいくつかの分野で世界のリーダーたらしめるため詳しいマーケティング戦略を練った。建築家は、種々のプログラムを指揮する医師と緊密に共同して、最新式の医療施設であり、かつ病院のシンボルであると同時に市のシンボルにもなりうる立派な建物を設計したのである。

 建築家の勧めに基づき、計画設計上の概算見積もりのため地元の建設会社が雇い入れられた。設計と予算編成の進行にあわせ、病院は銀行に融資を申請した。銀行は、建設会社の見積もりと債券発行案に基づいて、融資に同意した。

 その後、建設会社は、最終見積もりを提出した。理事会が驚いたことに、この見積もりは概算見積もりより350万ドルも増加しており、しかも詳細図面は未完成だった。請負会社は、建築家が品質を高め建設の範囲を広げたためと主張した。建築家は、自分はただ理事、医師それに理事が雇ったマーケティングの専門家たちの漸増する要求に従っているだけだと主張した。ところが、債券は当初予算に基づいて発行されており、高くなった工事価格に対応していなかった。病院は先へ進めなくなり、理事と医師は対策会議を開いた。

 医師たちは、自分らが増やしたのはわずかだと主張し、設計に取り込まれている医療設備のどれをも除くことを拒んだ。理事は、工事範囲の全体的増加は、工事費にそれほど影響しないと確信していた。だれもが請負会社が、病院につけ込んでいると考えた。理事長は行動すべきときがきたと決心した。

 理事長は推論した。「私の業界では、(これは金融サービス業だが)すべてのサービスは入札に付されることになっている。私たちは全部の希望者にオファーの機会を与えている。これが最低の価格を獲得するやり方なのだ」。

 理事会のメンバーである地元の製造業者がこれに同意した。「私は例の『信頼してくれ』式の請負者に、コストプラスフィーベースでうちの倉庫をやってもらったが、そいつはかなり私から巻き上げた。彼はこの仕事に最悪の労働者をつけ、コストの値下げに努力せず、一方、工事費を上げるためには何でもやり、自分に入るフィーが上がるようにした。これと同じ間違いはやらないようにしよう」。

 そうしてこのプロジェクトは範囲の修正もなく、また設計図と仕様書も未完のまま入札に付された。5つの会社が応札した。病院の財務部長は、入札価格が当初予算以内だった建設会社と工事請負契約を結んだ。当初の請負会社は、自分らの見積もりは、病院が必要とするすべての工事について正しい価格であると抗議したにもかかわらず追い出され、面目を失った。