1958年というのは重要な年である。アメリカの企業にとって、繁盛の時であり、産業や生産性の増大は世界経済を牛耳っていた。成長の時であり、組織は日に日に成長し、複雑化していく。ちょうど開始された大西洋のケーブルサービスと交通の発達により、企業は国際市場に進出できるようになる。拡大化に対応するため、企業は意思決定の機能を分散させる。急速に大きくなる企業活動を追跡していくために、中間管理職を大量に投入した。実際に史上初めてホワイトカラーの人数がブルーカラーの人数を上回ったのである。大企業はコンピュータ第1号を設置して、定型的な事務仕事や生産過程を自動化し始め、「直接参加型管理」が経営分野での流行語となった。

 その年はまたハロルド J. レビットとトーマス L. ウイスラーが、30年後の企業の実態はどうなっているかを予言した年でもある。彼らの「1980年代におけるマネジメント」という論文(HBR, 1958年11-12月号)とその予言内容は当時のトレンドに逆行するものであった。例えばレビットとウイスラーは、1980年代の末ごろまでには、経営管理科学と情報技術の結合により、中間管理職の役割は小さくなり、トップ・マネジメントがより創造的な機能を持つようになり、大きな組織は再び集中化されるだろうと述べている。1960年代、70年代、そして80年代の初めまでは、2人の予言は大いに批判を受けた。しかし、80年代も終わるこのころには、それほどはずれていることを言っていたわけではなかったと思われるようになった。いやそれどころか、彼らはまぎれもない予言者であったようである。(次ページの「彼らの予言した現在」参照)。

 小型化と「(会社組織のピラミッドの)低層化」は近年よく見られるようになってきている。ある推計によれば、企業は1979年以来で100万人もの管理職やスタッフをそぎ落としているといわれる。企業が中間管理職の数を減らすに従って、上級管理職は管轄の範囲を広げ、さらに責任を負うことになった。以下の2つの例を見てみよう。

□管理者層を40%も少なくする包括的な組織改正の数週間後、ある石油大企業の社長は新たに任命した上級管理職グループに、管理統制システムの改良を要請した。それにこたえて、精巧なオンラインのエグゼクティブ用情報システムが開発された。そのシステムは、図表を作成するアナリストや、その情報を交換して社内の他の部門との業務を調整する中間管理職など何十人分もの働きがあった。さらに社長は社内業務や取引の至る所に、コミュニケーションを円滑にするための電子メールを導入することを命じた。

□ある大メーカーは最近、新製品を市場に出すまでのコストと時間をカットするために大規模な組織及び工程の改正を行った。一時休職【レイオフ】や降格、早期退職によって、中間管理職は30%も少なくなった。多国籍企業であるこの会社は、そのすべての部門を結ぶ洗練されたテレコミュニケーション・ネットワークと、分散化が著しい業務や取引のあらゆる面をまとめる集中的な社内のデータベースを導入した。上級管理職は、このデータベースとネットワークを使って社内及び社外のデータの概略をまとめて表示して、部下に焦点を当てるべき事項などについて指摘できる。

 かつては組織の拡大のための道具であった情報技術は、企業の減量とリストラクチャリングの道具となったのである。上記の2社は中央集中的な管理の改善と新しい情報の流れを創出するためにテクノロジーを利用している。しかし、この中央集中的な管理への改善は分散化した意思決定を犠牲にしているわけではない。状況の変化に対する対応をよくするために、実際には意思決定についてはより分散化が促されている。企業は中間管理職の数を減らし、コンピュータシステムが以前はそういった中間管理職が行っていたコミュニケーションや調整や管理の機能を引き受けた。残ったラインの管理職はいくつかの定例的な仕事から解放され、より多くの責任を負うことになった。

 こうした作用は、レビットとウイスラーが予言したことに似ている。1950年代の経営学とテクノロジーの研究を糸口として、彼らはテクノロジーが組織の形態や性格にどう影響を与えるかを予測した。彼らはテクノロジーによって上級管理職はもっと効率的に大きな組織を監督、管理するようになること及び情報を分析・中継する中間管理職の必要性は少なくなるということを理解していたが、それと同時に、マイクロコンピュータの発達が、意思決定の分散化の促進を可能にするとは予想していなかったのである。

 以前管理職らは集中的な組織構成か分散的な組織構成かのどちらかを選択しなくてはならなかった。今日では第3の考え方が可能で、それは技術をベースとした管理システムが、分散化した組織の持つ柔軟性や対応の素早さを支えると同時に、集中的な組織の統制や管理も支える情報技術を基盤とした管理システムである。

彼らの予言した現在

 ハロルド J. レビットとトーマス L. ウイスラーの「1980年代におけるマネジメント」は本誌の1958年11月-12月号に掲載された。その記事で2人の著者は未来の会社組織がどういったものであるかという仮説を立てている。彼らは1980年代には以下のようになるだろうと予言している。

中間管理職の役割や権限は変化するだろう。現在の中間管理職の職務はより組織化され、地位的にも給与的にも下がるだろう。中間管理職の数は減少し、組織のピラミッドの高さは低くなる。残る中間管理職の立場は、技術的、専門的なものになるだろう。「アナリスト」のような肩書きを持つ新しい中間的な地位がつくり出されるだろう』。

トップマネジメントは技術革新、立案、創造によりかかわりを持つようになる。陳腐化や変化の速度はより速くなり、トップマネジメントは常に次に何がくるかということに注目していなくてはならない』。

大きな組織は再度集中化されるであろう。新しい情報技術によりトップの管理老はより多く情報を入手できるようになり、下位のものの意思決定に対する管理もできるようになろう。トップのエグゼクティブが、組織の大きさや複雑さの変更についていく能力がない場合にだけは、分散化を選択することになる。しかし機会があれば情報技術を使って管理権限を広げ再度集中化するようになるだろう』。

次にくるものは何か

 この情報技術の波が現実となった今の時点では、この次はどこに向かっていくのかということを考えるべきであろう。レビットやウイスラーのように、水平線のかなたにどんな技術革新があるかを調査することを考えると、水平線そのものが変化しているのがわかる。今や水平線がより近くになってきているのである。1950年代以来、開発期間が半分になった。かつては調査研究の段階から商品化まで30年かかったものが、今では10~15年ですむ。

 その上、技術を商品化したものについても初期の世代のころには、経営者はまずそれを取り入れてその新しい情報がどんなものであるかを理解してから、組織とのかかわりをどうするかを考えていくことが多かった。けれども多くの企業にとって今ではそうしたアプローチは適切ではなくなった。新世代の技術はもっと能力があり、多様で組織の重要な業務過程とより密接に結び付いている。単に新しい技術とそれがもたらす組織における変化に受動的に反応するだけでは、仕事を混乱させることになろう。