推定であるが、毎年アメリカでは70億ドルから100億ドルの商品がメーカーの正式な代理店以外のルートを通って売られている。これらのメーカーにとっては、このグレイ・マーケットというチャネルを管理することが重要な問題となっている。いや、果たしてそうであろうか。それは常に問題なのであろうか。いつ、もっと基本的なマーケティング上の問題であるという症候を見せるのであろうか。このグレイ・マーケットは、メーカーにとって1つの絶好機ともなりえるものではないであろうか。

 以下、1つの状況を見てみよう。ある大手ディスク・ドライブのメーカーの客の中には、このコンピュータの部品を数量割引で買う者もいる。しかしながら、これらの客は、その商品に技術的な価値を追加(売買契約ではそのことが要求されている)することなく、そのまま、そのドライブを大手コンピュータ・ディーラーやシステム・ハウス、あるいはOEMやエンド・ユーザーに売り払っている。このようなお客をメーカーでは"ニセのOEM"と呼んでいる。なぜならば、彼らはOEMが得ている数量割引という条件でのみ仕入れ、低い粗利率で経営し、メーカーの正式な代理店が定めている価格よりも安い価格で販売しているからである。

 ディスク・ドライブのメーカーのいろいろなレベルにある人々にインタビューしてみると、このグレイ・マーケットに対して懸念を示しているが、しばしばその理由は異なるものとなっている。メーカーと代理店の間の連絡係をしているある人は、「我々の代理店がニセのOEMのために売上高が減少したとき、2つのことが起きます。1つは、支店のマネジャーが私にそのことについて7つの異なった言葉で連絡してきます。2つ目は、我々の商品を扱っている代理店が、わが社の商品を売ることに力を入れる気をなくしてしまいます」

 ある地区のマネジャーは、他の見解を示している。

「ニセのOEMに関して、私は営業マンからそれぞれ違った話を聞きます。というのは、営業マンの中には、売り上げ割当の多くの部分をニセのOEMに依存している者もいれば、依存していない者もいるからです。その結果、事務所の中に緊張感が漂います。しばしばこれらの人々は同じ事務所の中で働いているのです」

「また、悪循環ということもあります。ライフ・サイクルの短い商品を販売する企業では、過剰商品を売ることができなければ、償却してその分の赤字を計上することになります。その結果、多くの営業マンは、だれでもいいからそれを売らなければいけないという圧力を感じます。その相手の中にはニセのOEMが含まれているわけです。その結果、さらに価格は安くなり、グレイ・マーケットを形成したことが再び繰り返されることになるわけです。ときどき、私は自分の部下に食い物にされていると感じます。そして、それはあまりよい気持ちではありません」

 また、あるプロダクト・マネジャーは次のように語っている。「グレイ・マーケターたちの中には、ディスク・ドライブを購入して、ガレージの中に在庫を置き、彼らが見いだすことのできる相手であれば、だれにでもその多くを売る者がいます。しかし、グレイ・マーケットで商品を売っているのは彼らだけではなく、中には正式のメーカーが認めた代理店もあるのです。その商品にとっては正規の重要なお客が、仕入れたドライブの10~20%ぐらいを何らの価値も追加せずにそのまま売り払っているのです。これは大変難しい状況です。短期的に言えば、グレイ・マーケットは我々の会社の売上高を大きく伸ばしてくれて、商品をどんどん動かしてくれます。しかし、長期的に見ると、我々は結局、より低い価格で、我々自身と競争しているという結果に終わるわけです」

 これらの商品に対して損益の責任を持っているこのマネジャーは、この問題を長期的に見る決意をしており、次のように語っている。「まず第1に、我々の営業部員はお客に対して、グレイ・マーケターは信頼できる商品の供給源ではなく、彼らが販売する商品は我々の保証によってカバーされていないということを強調すべきです。また、我々はお客のニーズのすべてをカバーできる商品を売っているのですが、そのようなことはニセのOEMではできないということも強調すべきです。第2にグレイ・マーケットの活動は、大手のお客がほとんどコモディティに近いと考えている商品で活発に行われているということを認識すべきです。これらの商品においては、工場の稼働率を高めるということが大変重要なことになっています。ディスク・ドライブでお金を儲けようと思ったならば、大変多くの商品量を生産しなければならず、これらのニセのOEMは、しばしば生産コストを大きく削減するのに必要な売上高の増大をもたらしています」

 こうやって見てくると、グレイ・マーケットという問題は、価格政策や代理店との関係、営業マンの士気、顧客サービス、あるいは従業員の業績を評価するために利用される物差しなどと関係していることがわかる。このことはまた、この問題に関しては機能の異なる部門が異なった見方をするということを意味している。一度でき上がると、グレイ・マーケットに対する売上高はメーカーの社内のいろいろなレベルに味方をつくり上げることができる(同時に恐ろしい敵もつくり上げる)。そのことは、グレイ・マーケットに対して一致した対応を示すことや、また、その対応を継続していくことを難しくしているのである。