ジョージ・マンスフィールドは、コーヒーをもう1杯飲むと、意を決してシガル・エレクトリック社のゼネラルマネジャー、ピート・ジェイムソンのオフィスへと廊下を歩いて行った。

「この問題をピートにどう切り出したらよいか」。品質保証部長として1カ月前にピートからスカウトされた彼は、そのことを思い悩んで昨夜は夜中まで眠れなかった。

"造る価値のある製品なら完璧を期すべきだ"という信念を持つ彼は、シガル社の製品について、思い切った保証プログラムを提唱した。会社が本来の業務を全うしていれば、保証費を支払わなくてすむから、保証費について心配する必要はない、と知っていたからだった。

 かねてから品質の高度化をモットーとしてきた彼は、以前の職場ではその手腕を認められて、数回にわたって昇進を遂げた実績がある。

 シガル社はかつては、高品質の一流電機製品メーカーであったが、いくつかの原因が重なって、ここ数年来その評判は低下の一途をたどっていた。今回ジョージがシガル社の立て直しに一役買って出たのは、こう判断したからだった。"シガル社が彼に高給のほか、トップとの直属関係を条件としてオファーしたのは、同社が市場での地位奪回に本腰を入れているからだ"と。その目標を達成するために、品質保証部長として彼は多大の責任を負わされたのだ。

不良品が出荷された

 さて、このような重責を担って登場したジョージの顔を見ると、ゼネラル・マネジャーのピートはこう話しかけた。

「ジョージ、さあどうぞ、中に入って、おかけください。工場でもう何かトラブルがあったそうだね。この仕事は容易ではないと、あのとき言ったとおりだろう。ところで何が起きたのですか」

「先週私が出張している間に、工場でごたごたがありまして、また起きるかもしれないので、今のうちにご相談したいと思ったのです」

「そうだとも、どうぞ話してください」

「先週ミルウォーキーで例の品質セミナーがあって、私は留守でしたので、ジーン・デイビスが、品質管理チームの代行を務めてくれました。その週の初めに、5051型扇風機にトラブルが続出したのです。シャフトと羽根の接続部分のすきまに問題があって、羽根の回転が正常でない。そこで、パレット5台分の5051型扇風機を返品しなければならない事態となったのです。