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エグゼクティブは油井掘削のボーリング液の分析や複雑なコンピュータ・システムの構成ができるコンピュータ・プログラムの話題に関心をもっている。N.L.バーロイド社の「MUDMAN」やデジタル・イクイップメント(DEC)社の「XCON」などは、以前は複雑すぎるとか形通りでないという理由でコンピュータには適さないと考えられていたような課題をこなしている。
これらは「エキスパートシステム」――分析や設計、測定を行なう専門家【エキスパート】の考え方を模倣するプログラム――なのである(詳しい定義については囲みを参照)。こういったプログラムは、if…Then文の複雑な組み合わせ――「もしアサインされていないディスク装置があり、かつ最低ディスク装置1台分の容量があるならば、そのシステム構成にそのディスク装置をアサインせよ(1)」――を使って、複雑だが一定の傾向のある問題をコンピュータで解決できるようにできる。
エキスパートシステムとは何か
人工知能(AI)、とは機械に人間のようなこと、たとえば見る、聞く、考えるなどをやらせる試み、と定義することができるだろう。エキスパートシステムとはAIのなかの一部で、契約の評価とか航空貨物のスケジュール作成のようなこみいった問題解決で、専門家レベルの判断ができるものをつくろうとする試みである。エキスパートシステムは専門家の言動をまねするコンピュータプログラムである。専門家は難しい問題を解決し、結果を説明し、学び、知識を見直し、妥当性を決定し、かつ自分がわからないことは何かを知っている。エキスパートシステムは第1点――問題解決能力――を最も有効にまねる。また質問や結論に到達する論理をさかのぼることによって自動的に説明ができるシステムも多い。初歩的な学習能力のあるシステムもある。このほかの専門家の特性は現在の技術では再現不可能である。
エキスパートシステムの多くはLISPとPrologというコンピュータ言語で書かれている。これらの言語は数字と同じように記号を扱うのに適している。エキスパートシステムでの知識の構成は通常「if…then(もし…ならば)」で行なわれるため記号の取扱い能力は重要である。
例えば:
もし 資金が潤沢で
かつ 高リスクでもよい
ならば 急成長の株式への投資が推奨されます。
エキスパートシステムと従来のソフトウエア・システムに明確な区分はない。詩を外国語に翻訳するのと同じ意味で、似たような働きをFortranやCOBOLあるいはその他のコンピュータ言語で書くことも可能である。しかし記号【シンポリツク】プログラミング言語(LISP、Prolog)は、膨大な量の人間の知識をコード化するという課題にはより効率的であることが多い。
エキスパートシステムが役に立つものかどうか、そして役に立つとしたらどう導入したらいいのかを考えている経営者が増えている。新しい技術を開発しようとする人には、大型でコマーシャルベースにすでにのっているエキスパートシステムの初期のユーザーが参考になる。エキスパートシステムは確かに技能や知識の把握や普及には重宝なツールで、競争力を強化することも多い、という点は経験からも明らかである。
そして実際に導入しようと考えている人にとっては、エキスパートシステムが宇宙探索や軍事行動のようなセンセーショナルな分野に使われるよりも、クレジットの照合や資金運用分析のような地味な日常業務において大きな可能性をもっていることが励みになるだろう。
実用上の長所
エキスパートシステムは産業において、コンピュータから会計まで、設計、診断、計測という目的で有用に使われてきた。一番有名な実務へのアプリケーションは、XCON(eXpert CONfigurer)だろう。DEC社には、多種のコンピュータ機器がありそれらは間断なくモデルチェンジされ、構成上の組み合わせも無数にある。70年代初期には、テクニカルエディターという専門家が、注文されたコンピュータシステムの周辺機器に過不足がないことを確認し、システムをどのように配列するかという構成図を作成していた。この手順を「構成」(コンフィギュレーション)という。
DEC社では、脱落や誤りがありうる初期段階の構成は生産前に決定されることになっていて、それによって生産が計画された。生産されたシステムのうち90%のものは、マサチューセッツ州ウエストミンスターのDEC社最終組立・試験所で再度チェックを受ける。そこでコンピュータの各機器を実際に接続して、作動させていた。このテストを経たのち、再び分解して注文主のもとへ出荷されていたのである。
1973年販売量の増加に対応するために、数千万ドルをかけて新たに組み立て・試験施設をつくらなくてはならないという見通しが出てきたとき、DEC社は他の可能性はないかと探ったのである。その結果として、注文書をチェックして、分析に従った配列でコンピュータのレイアウトを設計するエキスパートシステムXCONが生まれた。この新しいシステムならびにデータベースの構築や各機器の品質向上によって、DEC社はほとんどのシステムが、最終の組立テストなしで注文主のところに直接出荷できるようになり、新たな施設の必要がなくなった。
N.L. バーロイド社は掘削関係の会社で、ボーリング液(mud)を分析するMUDMANを開発した。ボーリング液は、作業の潤滑油的働きをしたり、採掘した試料を地表に運んだりするものだ。深い油井や問題のある油井では、現場の技術者は少なくとも1日に2回は試料をとって分析しなくてはならない。技術者は試料を粘性率、比重、沈泥の含有率など約20項目にわたって分析する。MUDMANは、こうした現場の技術者が一貫して作業を行なえるよう助ける。技術者が入力したデータを評価し、その現場の時系列データと組み合わせて傾向を明らかにする。そしてボーリング液の組成の調整を示唆し、潜在的な問題を技術者に警告する。
ボーリング液は購入側が、ごく少数で力のあるような市場である。石油メジャーが数多くの供給者のなかから一番安いものを捜して、買い入れ先を割りふるようになっている。MUDMANによってバーロイド社は、注文主に特別なサービスを提供でき、競争相手との差別化が可能になったのである。北海のある現場で専門技術者が10年以上も判断をあやまっていたボーリング液の汚濁の問題について、MUDMANは正しく解決している。その石油会社は、たいへんそのことに感心し、従来の方針を変更してバーロイド社に、「常識よりも大きい」シェアでの事業に参加をもちかけている。
ウエスチングハウス・エレクトリックは、製品のスチームタービンの監視用のエキスパートシステムを開発した。タービンが故障すると、高速で回転している鉄片が飛び出し、鋳物の外枠にぶつかり、何万ドルもの損害と長期操業不能に陥る。故障の前兆を知ることは非常に有益なことなのである。同社のプロセス診断システム(PDS)は、タービンのデータを常に追跡し、メインテナンスの勧告を出す。PDSは同社のサービス契約の一部として販売されている。



