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会社を買収したいのに、資金が心もとなければ、LBO(レバレッジ買収)を考えられてはいかがだろう。経済紙の見出しとは裏はらに、LBOの大部分は、10億ドル以上の大型企業の買収には利用されていないのだ。事業家はレバレッジをこれまでずっと、小さな非上場会社を買収する手立てとして使ってきた。必要資金が足りないとき、買収価格の一部を、相手企業の資産(受取勘定、設備、在庫、不動産)やキャッシュフローを担保にして借り入れる。これをLBOという。11年前、本誌にレバレッジ買収について最初の論文を書いたとき、小企業の買い手に許された唯一の担保は資産だけだった。銀行と融資会社がそのころの主要なLBOの貸し手であり、買収価格と資産(当の買収資産)を担保に借り入れた金額との差は、売り主に劣後債で支払われた。
いまやLBOはごく当たり前のものとなり、資金調達やそのテクニックは多様化しているが、それでも500万ドル以下については"キャッシュフロー"レバレッジ買収はめったにない。資金調達の大半は依然として資産をベースにしたものであるが、ただキャッシュフローLBOは、1000万ドル以上の規模で被買収企業にあまり資産がない場合よく使われてきた(次ページ「キャッシュフローLBOの限界」参照)。
ここでは、うまくLBOを成功させたと思っているときに、ついはまりがちな落とし穴のいくつかについてふれ、それを回避するためのアドバイスを提供したい。わたしの狙いは、何も埋まっていないところを掘り起こそうとして、読者がツルハシを折ってしまわないようにしてさしあげたいことである。
キャッシュフロー、資産および価格
LBOにおいては、それがキャッシュフローをベースにしたものであれ、資産がベースであれ、まず、貸し手側の条件を満足させられるかどうかで決まる。他のいろいろな金融業者を通じ、貸し手は資産とキャッシュフローと買収価格の相関をよく調べている。すぐれた料理法と同様、それぞれの持ち味をよく生かして、はじめて話が前に進む。資産は融資に見合うほど十分でなければならないし、負債をまかなうに足りる現金収入も不可欠だ。そして、買収価格はキャッシュフローと資産の双方に見合うものでなければならない。
売りに出た、ある特殊印刷会社の例をご紹介してみたい。このケースでは、印刷会社は上の2つの条件は満たしていたが、残りの1つを満たしてはいなかった。この会社は約500万ドルの売り上げがあり、売上高の22%、すなわち約125万ドルもの税引前利益をその前年に計上していた。買収価格は、税引前利益の4倍の500万ドルであり、きわめて割安なものだったが、問題は資産不足にあった。多くの印刷会社とは違い、この会社の設備は小さく単純なもので、値段も大したものではなかった。そのことが結局この会社を効率的にしていたのだが、買い手がその資産(受取勘定、在庫、設備)を担保に得た金は200万ドルにも満たず、300万ドルもの大きな差額を埋めることができなかった。明らかに、これでは資産をベースにしたLBOは不可能であった。結局、買い手がグループをつくり、融資に対して十分な担保を提供するという、一種のキャッシュフローLBOによって、この会社はようやく売却にこぎつけた。
キャッシュフローは、少なくとも3つの目的を満たすに十分なだけ必要であることを銘記しておいていただきたい。"優位弁済債務の返済""劣位弁済債務の返済""事業主への支払い"がそれである。もしフローが少なくて、事業主に残された金が、十分でないとしたら、そのプラン自体まったく無意味であろう。企業を買収するのにやっきになっていると、こういうわりと重要なこともつい忘れがちになる。しかし、だからといって、細かな事情にまで首をつっこみすぎるのも考えものである。
もし、資産価値が買収価格とキャッシュフローより高いなら、資産を売却し、その収入で債務を減らし、残した部分で会社経営に当たれば、LBOを成功裡に進められる。大規模の買収案件では、これは分割価値と呼ばれ、企業の全体よりも部分を合わせたほうの価値がより大きいことをいう。
ある買収グループが、耳よりな話を聞いた。ニューヨークのさる会社が、西海岸にある子会社を売却するという。しかも、その子会社が資産価値のある不動産を所有していることを、どうも親会社は知らないらしいとのことである。そこで、このグループは、この子会社を買収したうえで、その含み資産を生産部門から切り離した。それから、その不動産こみで一括購入したとほぼ同じ金額で、この生産部門のみを売却した。このグループは、一銭も払わずに、申し分のない10エーカーもの土地を手に入れたのである。しかし、読者のみなさんは高望みをせず、このケースについてはお忘れになったほうがよい。これは並外れた大当たりの例であり、キャッシュフローLBOを必要とする、これとは逆のケース、つまり資産があまりにも少ないケースのほうが、むしろ一般的なのである。
キャッシュフローLBOの限界
"キャッシュフローLBO"は、"資産担保融資"とはかなり違っていて、キャッシュフローベースの貸主(ゼネラルエレクトリック社、プルーデンシャルキャピタル社あるいはエクィタブル社など)が、買収先企業【ターゲットカンパニー】の事業で稼ぐ資金をもとに貸し付ける点にある。この融資は、買収先の資産が少ないため、リスクも大きい。したがって、貸主はキャッシュフローLBOの場合、高利回り――複利で30%以上――を要求するが、資産担保融資では、利率はふつうプライムレートの2~3ポイント増である。
たいていの貸主は、また、取引成立のために追加の保証を求める。たとえば銀行のなかには、買収先の現在の経営者をそのあともしばらく指導的立場にとどまらせたり、業績を最大限にしてくれるよう、株をもたせて強い動機づけにしているところもあるようだ。また、あるいは「ハイリスク、ハイリターン」という考えのもとに、よく株式という形で持ち分を所有することもある。この株式は、無議決権株式や優先株式、あるいはイマジナリーワラント(シャドーワラントと呼ばれる)のこともある。
したがって、キャッシュフローLBOの場合、非常に高い利息を払わなければならないし(これが課税控除の対象になるので、必ずしも悪いばかりではないけれど)、ときには"持株所有"――場合による貸主の持株が7割を超えるケースもあり――と"企業経営"をあきらめなければならないこともある。
もし、大部分の企業家と同様、みなさんも低い利率(課税控除の対象になる場合でさえ)を選ばれるなら、収益力の維持が条件だろうと思う。そして――現在の経営はしばらくのあいだうまくゆくであろうが――自分の力が必要以上に制限されることは望まないだろう。資産担保融資は、まずもって安上がりだし、買い手にほとんど完全な自由とすべての株式を残してくれるので、依然として小企業の買い手にとっては、LBOの一形態として根強い人気をもっている。
担保力のある資産とは何か?
「キャッシュフロー、資産、買収価格」の3つのあいだには整合性が必要であることを認めたうえで、次に問題となるのは、資産のうち、はたしていかほどが借り入れに対する担保になるかである。受取勘定、棚卸資産、固定資産などバランスシート上、LBOを実行するに十分な資産があるように見えても、そのなかには、貸し手の目から見て価値の目減りする資産がいくつか含まれていることが多い。金融機関が潤沢に融資してくれる(ゆえに、その融資実行のイエス・ノーを決める)資産を、"担保価値資産"という。現金、受取勘定、在庫、設備、土地、そして建物は、程度の差こそあれ、すべて担保価値資産である。
現金 最も担保価値がある。もし株式取得により企業買収するならば、当然のことながら現金を含め、すべての資産を手にできる。この現金は、もちろん持ち主【オーナー】への支払いに充当できる。しかしながら、資本利得税【キャピタルゲインタックス】の支払いをしなければならないのに、現金を会社に残しておいて、会社を売却するというのは、理にあわない。とはいえ、現金の担保価値は常に100%である。



