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マーケティング担当課長と販売担当者を交え、会議室では重要顧客の取引関係を見直している最中である。顧客の分析をするに当たって、窓口担当者(アカウント・エグゼクティブ)はファイルを開き、大声で読みあげる。
「忠実な共和党支持者」
「中西部的(保守的)価値観」
「ボーイスカウトの熱心な後援者」
「熱烈な切手収集家」
「重要な購買の意思決定を先送りにしており、強力にフォローする必要がある」
当然のことながら、この報告には顧客企業市場状況(マーケットポジション)、新製品群、工場建設計画に関するデータも含まれている。しかし、この会議の議論のかなりの部分は、顧客の人間的性質や特徴に焦点を当てており、しかも、いかに上手にセールスマンが顧客の特質を理解し、創造的に顧客に販売しているかに集中している。変わった管理職の時間の使い方だと思うだろうか。
多くのマーケティング関係者にとって、このような議論は正統なアプローチからややはずれているように思われるだろう。しかし、こうした重要で示唆に富んだ情報を無視する多くの企業は市場においてはっきりと不利な立場に立っている。
ますます多くの企業が市場細分化マーケティング戦略を用いることに精通してきている。ビデオや印刷された説明書を利用して、標的となる顧客に対して短い時間で即席の親密な関係をつくることができる。
しかし、一方では、商売はその販売戦略に人間性を盛り込む必要性を見失っている。オンライン受発注、数多くの原価分析、洗練された財務モデル分析法といったものが、セールスマンと法人顧客との関係よりも、重視されている。
封筒という商品では魅力的商売というわけにはいかない。事実、皆さんが考えられるとおりの平凡な商品で、いわば成熟産業として教科書で定義されてもよいくらいである。ということは、マーケット・シェアをあげようとすれば、企業そのものを差別化することに特にたけていなければならないということを意味している。封筒業界でマッケイ社の製品は、より斬新で、魅力的で、便利なコミュニケーション手段である電話、コンピュータ、電子メールといったものから、いつも攻勢をかけられている。会社の利益は紙っぺらのようにうすいものである。
こうした障害にもかかわらず、マッケイ・エンベロップ社の過去5年間の平均売上成長率は18%で、年商3500万ドルに達し、全国ベースのマーケット・シェアは2%に上昇した(封筒会社は全国で235社あって、零細企業の集まりである同産業では2%はかなりよいといえる)。マッケイ社は、業界では最高に利益をあげている企業の1つに数えられている。わが社の成功の秘訣として最大の要因は販売技術(セールスマンシップ)、すなわち魂の入った、活発な、そしてすぐれた販売技術にあるといえる。
長年、アメリカの"血統書つきの"経営者は、販売をウイリィ・ローマン(訳注:アーサー・ミラーの小説『Death of a Salesman』の主人公の名前)の世界と考え、軽視するのが時流にあっていた。しかし、いまやアメリカの企業がその諸資源の投下先を相当変え始めている。管理、生産、研究開発部門の頭数が減少し、販売は増加している。
IBMが1987年末までに1万2000人の従業員を整理すると発表したとき、同時に3000人を販売部門に再配置した。キャンベル・スープが保守的な老女のイメージから先進的で革新的な事業の推進者に変身したのは、いくつかの明確に限定した顧客層に標的を絞り、販売していくという点に焦点を当てた新しいマーケティング戦略と大いに関係がある。2年前、本誌のインタビューに答えて、ポルシェ社の前最高経営責任者(CEO)であるピーター・シュッツ氏は、車の引渡室でお客と談話することにいかに多くの時間を使って、お客の購買動機や特徴について学びとったかを強調していた(1)。



