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見積りの差は2万2000ドル
スコット・パーマーの秘書がオクシデンタル・エアロスペース社のジョンアン・ブレイカーから電話だと告げたときから、彼は長い一日を迎えることになった。オクシデンタル社が自分の客になったために、彼はスタンダード機械社入社1年目の昨年、会社でトップの販売手数料を稼いだ。しかし、1か月前ジョアンがスコットにオクシデンタル社の購買部が新しく、もっと積極的な競争入札政策をとるようになったことを告げてきた。そしてオクシデンタル社が、新しい教育センターに入れようとしているコンピュータ化された製粉機械の購入にもその競争入札が適用されると語ったのである。
それにもかかわらず、スコットはその製粉機械に42万9000ドルの見積りを出した。彼は、たいへん自信をもって、リージョナル・セールス・マネジャーに「もうこの取引は成功したも同然です」と豪語した。しかし、その後オクシデンタル社から2週間も電話がこないので、スコットは自分は過信していたのではないかと気に病んでいたのである。
「ジョアンさんこんにちは。しばらくですね。何かあったのですか」
ジョアンはすぐに要点を話し出した。「スコット、わたしは2万2000ドルの問題を抱えているのです。そして、それはあなたが解決できます」
「どういう意味ですか」
「この規模の購入をするときは、いろいろな納入業者からの見積りをとり、厳しく検討しなければならないということは、あなたもわかっているでしょう。そして、あなたからの見積りは競争相手の見積り価格をはるかに超えているのよ。カクチ社は39万ドルを割っています。そしてアキタ社では40万ドルを若干上回った値段になっています」
彼女は待った。そしてスコットも自分の不安を感じとられないように待っていた。「わたしが計算したところによると」――彼女はついに話を続け出した。「あなたの見積りは2万2000ドルも高いのよ。この値段では購買部を説得できないわ」
「ジョアンさん。この世界では支払った金額なりのものしか手に入らないんですよ。あなたはスタンダード社が世界で一番いい機械をつくっていることは知っているでしょう。わが社のサービスや訓練などはいうまでもないと思います。ですから、わが社はこの"妥当なリストの価格"で売らなければならないのですよ。あなたが期待しているような製品やサービスを提供しつづけていくためには、このリストの価格より高くも低くも売れないのです」
スコットはオクシデンタル社とスタンダード社の長い、そして実りのある関係やスタンダード社の製粉機や粉引き機、ボーリング機などの、他に類のない優秀性について再び説明を始めた。しかし、ジョアンがその話をさえぎった。「スコット、あなたの会社の機械をわたしに売り込んでもしょうがないわ」と彼女はいった。「しかも、あなたはわが社が新しい入札政策を発表したときに、そのことが何を意味しているか理解できたでしょう。わたしたちは絶対にコストを削減しなければならない状況に置かれているのです。ですから、他の納入業者の見積り価格も見なければならないのです。あなたが2つの会社の中間まで値段を下げてくるまでは、わたしは譲歩できないのです。それが現状なのです」
実際のところ、スコットはこれまでもスタンダード社の固定価格政策がいつお客から強い抵抗にあうか常に心配してきたのであった。しかし、彼はこの苦情がオクシデンタル社から出てくるとは思いもしなかったのである。オクシデンタル社では、スタンダード社が提供してきた、いわば最新のオートメーション装置を導入して、製造面で優位性を維持してきた会社である。しかも、過去20年以上、スタンダード社以外の機械は導入していないのであった。



