一度でも事業を運営したり、プロジェクトを組織した経験のある人なら知っていることだが、チームメンバー全員に、自分らがどちらに向かっているのかを周知させ、成功のために何をするべきかについて合意を得させるのは至難の業である。

 われわれは、IBMにおいて経営陣がこの難作業をうまく処理するのに役立つ手法をここ数年にわたって使ってきた。この手法をわれわれはPQMすなわちProcess Quality Management(事業プロセスの品質管理手法)と呼んでいる。この手法は、IBMの顧客がニーズ(要求)決定をする上で援助した多くの活動とIBM社内での事業品質プログラムの一環として行なわれた活動を通してつくりあげられた。PQMはこれまでに、メーカーのほかサービス会社、政府機関および非営利企業などで使われて効果をあげている。

 PQMでは、経営陣は、原点にかえって、いつもは見逃されている基本的なことがらに力を入れる。このような小さなことに注意を向けることによって、IBMは海外で数多くの成功を手中にしてきたのである。

 ヨーロッパIBMの製造拠点では、連続流れ生産方式を含む一連の変革を導入するに当たって、このPQM手法がおおいに貢献した。

 まず、製造担当副社長とそのチームは、取り組むべき課題を十分に把握していることを確認した。次に、会社の主要資材管理プロセスに新たな優先順位を与える作業に集中的に取り組んだ。この決定によって、製造部門の全組織に変革はいきわたり、それが工場間物流の効率化をはじめIBMのヨーロッパ製造拠点13工場への、連続流れ生産方式のスムーズな導入をもたらしたのである。その結果、製造サイクルタイムと在庫水準は改善され、原価は下がり、品質は向上し、会社全体として顧客のニーズへの対応がよりフレクシブル(柔軟)になった。これらはまだ成果のすべてではないが、2日間のPQM会合の結果としてはけっして悪いものではない。

 もちろん、各分野にわたる経営管理上の意思決定の任にあるIBMの顧客にとっては、PQMはスタート地点に立ったということであった。彼らは、戦略策定、資金調達、人的資源管理、マーケティング、あるいは大規模で複雑なプロジェクトに対する資源配分などの領域において意思決定を行なわなければならないのだ。PQM活動は何かが起こったとき――例えば、だれかが新しい事業機会か新技術、あるいは新しい競争相手に気づいたときなどに始まることも多い。しかしながら、PQMはそういうときにかぎらずいつでも有効な手法である。

 PQMは他の計画策定手順と根本的に異なったところがあるわけではない。目標とそれを達成するための施策を明らかにし、成否を判定する尺度(ものさし)を作る。ただし、PQMにおいては、関係のあるすべての経営管理者が1日ないし2日間の合宿会合に参加し、何をなすべきかを全員が納得し、それぞれの役割を受け入れることが求められている。

 もちろん、その集団が必ずその使命を達成できるという保証はない。それにはその集団以外の全組織をあげて有効なフォロー活動をする必要がある。とはいえ、PQMは、それを成功に導く基礎を築くことにはなる。そして、少なくとも、キイ・プレイヤーのすべてが同じ方向に向かって、いっせいにスタートを切ることはできるのである。

チームを編成する

 PQMは経営管理者チームのリーダーとなる人間からスタートする。この人間はボスであり、その仕事はチームの使命を達成することにある。彼または彼女は直属の経営管理者チームのすべてを巻きこまねばならないし、逆にそれ以外の者はだれ1人入れてもならない。だれ1人も欠けてはならないし、だれ1人も余分な者は入れてはならない。チームのメンバー数は、最大でも12名まででなければならない。それ以上になると扱いにくくなるからだ。もし、メンバーの1人でも会合に出席できないのならば、会合は延期する。

 PQMにおいては、参加者1人ひとりは、何が求められているかを明確にすることが要求されるだけでなく、そのプロセス全体に主体的にかかわることを要求される。