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銀行は、いま生き残るための激しい競争をしいられている。負債のコストは高くなっているし、かつての顧客企業は資本市場で資金をめぐって銀行と競合している。また投資銀行は資産の保全を行なうことによって、企業が銀行を利用しなくてすむようにしている。さらに、業界内でも、さまざまな規模の銀行やさまざまな地域の銀行が互いに顧客をとりあっているので、競争はますます激化している。事業活動のあらゆる領域から競合相手が現われ、これまで自分たちの事業の核であった業務さえも脅かされるにつれて、銀行としても当然ながら反撃を開始している。
銀行間での競争の非常に特異な点は、生き残るためにほとんどの銀行が他の銀行とまったく同じやり方をとっており、他と同じ新製品と新サービスを提供しているという点である。例えば、金融センターとしての銀行はすべて投資銀行業に参入したいと考えている。また、ほとんどの銀行は新しい地域への進出を計画している。さらに、数多くの銀行が"ビッグバン"(訳注:ロンドン証券市場の大幅な自由化)を利用するために前後のみさかいもなしにロンドン市場へ進出している。このような競争相手の動きを脅威と受けとった地方銀行は、地方からの脱皮をめざして次々と拡大をはかっている。地方銀行よりも規模の小さいコミュニティ銀行は地方銀行との提携を物色するか、他のコミュニティ銀行と合併して、地域に密着し、強力な関係の維持と複合的なサービスの提供を強調する小規模な小口取引事業を確立しようとしている。非常に多くの銀行が高収益をあげられる業務、すなわち投資銀行業務や中規模企業への融資ならびに個人の資産家に対する金融へ経営活動を集中してきたので必然的に、これらの業務の利益率は低下していくだろう。
銀行が他と同じ戦略をとっていたら生き残れないのであれば、他に何かよい戦略があるのだろうか。筆者は銀行業界に対する調査結果にもとづき、銀行がもし新しい環境のなかで優位性を維持したいと考えているなら、変わらなければならないという結論に達した。それは基本的には戦略の問題ではなく、経営管理と組織のほうに力点がおかれている。高度に統合化された組織構造を多角化された構造へ変えていく過程で、銀行は次に示す3段階を通って組織作りを進めるはずである。
1. それぞれの活動を別々の事業と見なす この段階で、銀行は各事業を別個に運営することを学ばなければならない。経営者は事業の中心になる部門を明確に定め、その部門のマネジャーのやる気のひき出しと管理のために損益計算書を活用しなければならない。
2. 事業別の戦略を作る 各部門の境界が明確になったら、次に各部門ごとに競争上の優位性が生じる特徴点が何かを明らかにする。そして、この特徴点を活用できるようなさまざまな戦略案を作成しなければならない。例えば、サービスの提供を行なう部門は、取引処理を業務とする部門とは異なった戦略が必要になるだろう。
3. 各部門を連結するリンクを明らかにし、部門間での協力を促進する この段階にまで達している銀行はほとんどないが、個々の事業をうまく運営するだけにとどまらず、それ以上のことを実施できる能力を開発できる銀行が、もっとも大きな成功を勝ちとるだろう。顧客によりよいサービスを提供するために、トップ・マネジャーは、個々の部門の主要な活動を結びつけるリンクが何かを把握する。
多角化の成果
組織の再編成の必要性は、たいていの銀行が採用する3種の多角化戦略から生ずる。それらの多角化戦略とは、新市場への参入、提供商品の拡大、商品とサービスの分離の3つである。銀行はここ数年間、新市場において既存商品の販売を行なってきた。ケミカル・バンクによるテキサス・コンマースの買収やバンク・オブ・ニューイングランドとコネチカット・バンク・アンド・トラスト・カンパニーの合併といった動きは、金融センターとしての銀行や地方銀行を従来の事業領域を超えた分野への進出を迫りつつある。
商品の多様化のもっともよい例は、これらの銀行がユーロボンド債の発行引受けや企業合併・買収に関する助言といったサービスを通じて投資銀行業務へ進出しようとした動きであろう。商品系列の細分化はドラマチックではないが、重要性はそれと変わらない。キャッシュ・マネジメントなどの業務は、これまで全体的な対顧客業務のなかの一要素であり処理型の業務として扱われていたが、今ではそれぞれを別個の独立した事業として扱うようになってきた。バンカーズ・トラスト、ケミカル・バンク、バンク・オブ・ボストンはいずれも、これらの商品を扱うために別々のプロフィツト・センター志向の事業部を設立している。
これら3種の多角化戦略が共通してもたらす重要な結果は、銀行は、もはやその提供商品のすべてを必ずしも自分たちの手で作らなくなったという事実である。例えばファースト・インターステイトは、より規模の小さい銀行に自社のサービスの一部を提供する特権を与えているが、これによって、これらの小銀行は独力ではとてもできなかったような幅広い商品の提供が可能になった。また数多くの銀行は他社が"生産"した仲介サービスや保険サービスを自行の支店で販売している。
これらの複雑な協定があるために、売り手と客の関係だけでなく、作るか買うかの決定もまた複雑になっている。このような協定はまた組織内に大きな混乱を引きおこしている。そして簡単には答えの出ない問題が生じている。例えば、現在の提携先の銀行へのサービス内容を向上する目的および新しい提携先を獲得する目的のために新商品を作るべきか、あるいは自社組織の内部的なニーズを満たすことを主な目的として開発した商品をこれらの提携先は引き受けてくれるだろうか、といった問題が生じている。



