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中国製AIの台頭
2022年11月、オープンAIがチャットGPTを正式にローンチした時、中国のテクノロジー企業は完全に不意を突かれた。アリババグループ(阿里巴巴集団)、テンセント(騰訊控股)、バイドゥ(百度)といった、かつてグーグルやマイクロソフトをはじめとするグローバルプレーヤーとしのぎを削った企業が、突如として後れを取る側になってしまったのだ。
しかし、それから3年近くが経過した現在、中国企業は米国の競合に並ぶどころか、すでにその先を走っている。生成AIを活用することで、既存の流れとは別の独自の道を新たに切り開いたのだ。
AI領域に新規参入した中国企業の中で最も注目に値するのが、2023年に設立されたディープシーク(深度求索)だろう。ほんの1年足らずで、わずかな計算リソースとデータリソースによって開発された「ディープシークR1」(DeepSeek-R1)が、オープンAIの「GPTフォーオムニ」(GPT-4o)やアンソロピックの「クロード3.5ソネット」(Claude 3.5 Sonnet)に匹敵する性能を発揮している。
また、同じくスタートアップの01・AI(零一万物)が発表した「イー・ライトニング」(Yi-Lightning)モデルは、価格、性能、精度でランキングの上位に食い込んだ。
だが、中国で次々と生み出されているものは、欧米システムのクローンではない。それは異なる制約条件の下でうまく機能し、異なる優先事項を満たすようにつくられた、固有の戦略に基づく生成AIモデルなのだ。ディープシークなどの企業は、基盤技術の進歩を活かすと同時に、高いコスト効率、迅速な展開、特定の用途に的を絞ることを重視した独自のAIシステムを構築している。
そうした発展は、中国の生成AI開発の失速を狙った、半導体分野を中心とした中国に対する輸出規制の厳格化や、地政学的圧力を背景に進行していた。だが結果的には、むしろ開発の勢いを加速させることになった。現在、国家インターネット情報弁公室(CAC)に登録されている生成AIサービスは300種類を超えている。
たとえば、ファーウェイ(華為技術)は、エヌビディア製チップに代わる自社製造の半導体「アセンド」(昇騰)シリーズの開発を加速させた。アセンドは、いまや国家規模のデータセンターの稼働を支える存在になっている。
多くのグローバル企業が生成AIを自社の事業に組み込んでいるが、大半はオープンAIやグーグル、アンソロピックといった欧米企業のツールを利用している。しかしいま、まったく異なる第2のエコシステムが目の前にある。急速に、静かに、そして独自のロジックで成長してきたエコシステムだ。
中国躍進の根幹には、地域特有のニーズに即座に対応することを可能にするモジュール式の柔軟なAIインフラの構築に向けた国全体の取り組みがある。中国企業は、ハルシネーション、経済的および環境的なモデルコスト、規制対応といった課題に対して、欧米企業とは異なるアプローチで対処していることが少なくない。
中国企業が創出したエコシステムは柔軟性に富むうえに効率性に優れ、AIチップからストレージソリューションまであらゆる構成要素が現地の細かな特性に対応している。そうしたアプローチは、欧米のエコシステムに見られる、広範囲に及ぶリサーチに基づいて一般化されたアプローチとは大きく異なるものだ。



