売上げの大きいことが、必ずしも高所得を意味しないことは、心ならずも多くの会社が認めてきたことである。実際のところ、いろいろな注文のなかのあるものについては、(売上げのなかにおける比率としての)利益が他を引き離して多くなることがしばしばあるが、その原因となると、マネジャーにはよく理解できない。価格が妥当ならば、どうして、こんな著しい違いが生じるのだろうか。販売と価格設定の異常を示す、次の2つの例を見てみよう。

 □ ある配管設備メーカーが、工場をめちゃくちゃにしかねない"無価値な"小口の注文を控えさせるため、値上げを実施した。だが一連の値上げ攻勢は単位ごとの売上げを減らすことはできなかった。2年後に行なわれた業務分析の結果、この種の注文品がもっとも利益の大きいものであったことが、判明した。新しい高価格は、費用を補ってあまりあるものだったし、顧客は仕入れ先を変更すれば切替え費用が増大することを恐れて、業者を変えるようなことはしなかった。それに、競争相手は業界の伝統的な知恵を働かせて、ぬけがけをつつしんでいたのである。

 □ ある有名な資本設備の製造業者が、もっとも大口の顧客のあいだで達成できると考えていた多額の売上げが減ってゆくことに気づき、全国的な顧客のための計画を開始した。これには、経験豊かな顧客マネジャーによる強力な販売援助、地位の高い幹部の参加、応用技術・特別設計サービス・特殊な保守整備業務・配送の促進化など特別な援助、そして著しく累進的な数量割引を伴う全国規模での仕入れ協定などが含まれていた。だが顧客は、この計画を手のこんだ宣伝くらいにしか思わず、その本質を理解しようとしなかったのである。この疑心暗鬼の顧客を説得しようとして、最高幹部は個人的にそれ以上の販売サービス援助や大幅な値引きまでも申し出た。

 やがて売上げが上昇に転じ、この"成功"のおかげで水準の高い支援活動も正当とみなされた。しかし、利益はたちまち悪化しはじめた。大口の全国的な顧客から生じる損失はきわめて大きくて、もっと小口の、とるにたりないと思われた顧客による売上げと利益の増加分をみな食ってしまうことに、会社はやっと気づいたのである。

 この2つの会社が、特定の注文に応じると、他のもの以上にコストがかかることに気づいたのは、明らかだ。配管設備メーカーの役員は、確かに小口の注文に応じるとよけいに経費がかかると知っていたからこそ、価格を引き上げたのである。資本設備の会社は、売上げ増が期待できると思ったからこそ、喜んでよけいな費用を上乗せしたのだろう。いずれの会社の場合も、経営者は価格表が改訂されることを知っていた。最初の例では、注文品に対する値上げ価格ゆえの、もう1つの例では、数量割引ゆえの改訂である。しかしながら、いずれの会社の幹部も、費用と価格が変動すると、顧客別・注文別にみた収益性にひどい違いが生じていることに、気づいてはいなかった。

 こういうあやまちを犯す会社は多い。マネジャーは、顧客別の利益率やその選別・管理に、ほとんど注意を払おうとしない。また、利益の幅の大きさ、その原因、管理のもつ意味について、めったに考えようとしない。本稿において、われわれは、この大切な要因の3つの要点について検討しようと思う。それは、以下のとおりである。

供給業者にかかる費用
顧客の行動
顧客の管理

供給業者にかかる費用

 利益とは、いうまでもなく正価と販売に要する現実の費用との差額である。顧客と注文をそれぞれ個別に見ると、価格と費用の両方に驚くほどの違いが存在する。

 価格設定を単一化しようという法的な制約(なかんずくロビンソン=パットマン法がそうだが)があるにもかかわらず、顧客は実際には実にさまざまな代価を支払っているのが、ふつうである。買い手のあるものは、その企業規模や自分自身が果たしている機能(例えば、企業内保守整備や技術的援助などのような)ゆえに、交渉をしたり、特別な割引き制度を利用したりする。また、顧客のあるものは、ひとよりも多く特売や販促を活用する。そればかりではない。顧客に販売したり、注文に応じたりするための費用もまた、著しく異なっているのである。

 事前販売費用は、注文ごと顧客ごとに大きな違いがある。地理的な問題としては、顧客や見込み客のあるものが、販売業者の本拠や通常の販路から遠く隔たっている場合がある。顧客によっては、見たところ無限に訪問販売を要求するものがいるかと思うと、電話で注文するだけの顧客もいる。また、熟練した顧客管理技術を身につけた最高幹部が出向かなければならないような顧客がいるかと思えば、特別な努力をほとんど要しない顧客もいる、といった具合なのだ。このような費用面での違いは、顧客の購入意思決定過程ないし購入部門の性格の違いをそのまま反映している(購入部門のあるものは巨大で地理的、機能的に分散しているし、他の部門は小さくて、地理的にも機能的にも集中化されているか、そのいずれか一方が集中化されている)。最後に、ある種の顧客は、応用技術や特別設計援助のような集約的な事前販売サービスを要求するのに対して、その他の顧客は、標準的な設計に満足してくれるのである。

 製造費もまた、顧客ごと注文ごとに異なる。注文の規模は原価に影響を与えるが、それは段どりの時間、スクラップ率、特別設計、特別な仕様や機能、特殊な包装、ときには発注のタイミングが影響を及ぼすのと同じことである。ピーク時でないときの注文は、需要最盛期における注文よりも安い費用で処理できる。配送を早くしようと思えば、それだけ費用はかさむ。また、ある種の注文は、他のものより多くの資源を必要とする。もっとも、注文を受けるまえから製品在庫を抱えていた会社は、特定の注文や顧客についての製造費を追跡することが、難しくなるだろう。そればかりではない。対顧客政策や慣習が製品原価の仕分けをあいまいにしてしまうことも多いのである。