コンピュータ革命の歴史に新しいページが開かれようとしている。先見的構想力をもつ企業は、低コストのデータ処理・通信システムのスピードとフレキシビリティーを、独創的な形で統制システムに活用し始めている。そして、めざましい成果をあげつつある。マネジャーたちは、これまで従業員や顧客からとりとめもなく流れてくる情報に混乱させられていたが、今では会社のどんなに離れたところからでも即座にデータを入手することができる。従来はキーとなる要因のデータ――例えば国外の工場での在庫回転率の低下や遠隔地での急激な販売量の増加等々――はフィルターにかけられたり、曖昧になったりしていたが、今では、こうしたデータは意思決定しやすいさまざまな形で提供されるようになっている。新しいコンピュータ・システムのおかげで、財務計画の修正や新しい従業員報奨プログラムの導入を迅速に行なうことができ、企業の経営政策の変更がスピードアップされている。またマネジャーは、仮定条件にもとづくシミュレーションを何ケースでも即座に計算して、その結果を比較し、事前に変更をテストすることができる。

 こうしたスピーディでフレキシブルなデータ管理技術がリーズナブルなコストで使えるのであるが、その利点は、古くから統制システムの目標とされてきた3つの目標を再び生き生きと蘇らせることができる点にある。つまり、この技術は、マネジャーが諸資源をより効率的に活用し、組織のそれぞれの個別部分を全社的な目標に向けて統一し、戦略的意思決定と業務意思決定に役立つデータを収集するための助けとなる。

 しかし情報技術――パーソナルコンピュータ、スプレッドシート、通信、データベース・マネジメント用ソフトウェア――は、従来の仕事のプロセスを改善するだけで終わるものではない。この情報技術は、情報を集め、統合し、利用するためのまったく新しい手段をつくりだしている。情報技術による可能性が広がるなかで、先進的な企業は早速、情報に対する自社のニーズとウォントの再検討に着手している。新たな選択手段のリストから適切な手段を選択することによって、自社の統制システムと構造を変化させている。こうした会社は、情報力の力を自らの企業力に転嫁させる方法を発見している。その結果、効率と全般的な競争上の地位とを大きく向上させている。

離れ馬に乗る

 これまでのところは、最も先進的な企業のみが、この新しい技術の利点を先取りして最大限に活用している。こうした先進的な企業だけが、統制部門と情報技術グループとのあいだのギャップをうめることができたからであろう。他の企業にとっても、これら2つの部門のあいだのギャップを狭めることに努力するのは十分に価値のあることである。以下に示す例は、企業が自社の統制過程を徹底的に洗い直すために情報技術を活用すれば、どのような利益が得られるかを明らかにしている。ここに述べた企業はそれぞれ、情報組織化の3つの方法――統合化、集中化、分散化――のうちのいずれかにもとづいて情報技術を利用している。

保険ポートフォリオ販売のためにデータを統合する

 新しいシステムによって、マネジャーは情報をより早く入手できるようになっただけではなく、必要に応じてデータファイルを新しい形に作り替えることもできるようになった。このことはマネジャーにとって、ゲームのルールが変われば、新たな課題に適合するようにカード(素材)をきり直せることを意味する。レポートと生の数字を統合することによって、企業は古い情報からまったく新しい情報をつくりだし、その新しいデータはややこしい問題を解決するきっかけをつくり、利用されていない機会を知らせてくれる。

 優秀なある保険会社は、最近、多くの資金を投入してコンピュータ・ファイルを証券番号別から顧客別に再編成した。古いファイル・システムは、長年、この会社が採用してきた報奨システムに適合していた。この報奨システムでは、販売した商品にもとづいて販売員にコミッションを支払うことになっていたが、顧客がある商品を解約しても、販売員にはペナルティーが課されることはなかった。販売代理店には報奨がなかっただけではなく、顧客ごとの総契約高を継続的に見直し、適切な商品ミックスを探索するためのメカニズムをも欠いていた。

 この会社では、契約記録用の人名にはいくつかのバリエーションがあり、イニシャルの2字だけが使われたり、フルネームが使われたりするという状態であった。販売員が商品ファイルの山をかき分けて顧客の情報を捜し出そうとしても、さまざまな形で書かれている該当顧客の名前をすべて拾い出せるかどうか、疑わしいものであった。

 新しいシステムでは、販売員は、顧客ごとにすべての商品ポートフォリオを常時みることができる。販売員は、この情報を使って、古くなった保険の買い替えや他の金融証券を勧めることができる。これによって、この会社は顧客が別の保険会社に替わるのを未然に防ぎ、またたえず新しい事業を拡大している。新しい報奨システムでは、短期的な販売額よりも長期的でトータルな顧客との関係をつくりあげる販売員にコミッションが支払われ、そうすることによって個々の販売員の目標を会社の目標に統合している。

 現在では、この会社の競合相手の多くが、急遽同じようなシステムを導入して顧客とのトータルな金融関係を確保しようとしているが、まだ着手したばかりであり、巨大で融通性のないデータファイルを再編成するためには、コストの大きいシステム・プログラムに2~3年かかることであろう。

エレベーターの修理サービス改善のためにデータを集中する

 今では本社は、各支店から低コストで情報を集め、地理的にはるか離れた支店をも含めて全体像をつかんで、タイミングよく適切な行動をとることができる。これによって、正確に業績を追跡し、離れた営業単位組織でのごまかしから生じる問題を防ぐことができる。