アメリカの国際競争力をめぐる討論は、ついにワシントンとマスコミの注目を集めるに至った。いくつかの研究グループと大統領特別委員会は、この問題を調査し、2年近くまえにすでに勧告を行なった。しかし、この問題の本質と解決策についての合意はえられなかった。議会は何回も聴問会を開いたが、実際に世界市場で競争に参加している企業の経営者からは、ほとんどなんらの意見も聞かれなかった。

 昨年末にHBS(ハーバード・ビジネス・スクール)の8名の教授は、このテーマについて論じた覚書とアンケートを同僚に配って、意見を求めた。その論旨はつぎのようなものだった。アメリカの製品が世界市場で競争力を失ったという事態は、やがて国の生活水準の低下を招く。同時に、国内ばかりでなく対外的なコミットメントを遂行するための資金調達能力をも弱める結果となる。以下にこの覚書をほとんど原文のまま紹介して、読者の参考に供したい。

覚書

HBS教授各位ならびにHBR読者へ

ジョセフ L. ボーアー
ロバート R. グローバー
ロバート H. ヘイズ
ジョージ C. ロッジ
トマス K. マックロー
マルコム S. ソルター
ブルース R. スコット
リチャード E. ウォルトン

首題:アメリカの競争力は問題なのか。

 アメリカの競争力は低下しており、なんとか手を打つ必要があると考えるか。それともアメリカの競争力は、それほど大きな経済問題ではなく、もっと重要な問題と取り組むべきだと思うか。

 競争力とは、世界経済に参加する国として、生活水準を向上できる収入を得る能力をいう。アメリカの競争力とは、国内の労働力と資本を活用して、利益を増加できる能力をいう。

 むろんアメリカ企業は、海外に進出することによって、少なくとも短期的に競争力を維持することはできる。しかし長期的には、アメリカの競争力の低下によって、人的・物的資本への投資の減少を招く。その結果、アメリカ企業の国際競争力は低下する。国の競争力と企業の競争力とは関連性があるが、同一ではない。

 つぎにこのテーマを研究した人びとの意見を紹介して、アメリカの競争力をめぐる以上の問題の参考に供したい。意見は2つのグループに分かれる。いっぽうは、アメリカの競争力は通常のマクロ経済的調整の一環であって、通常のマクロ経済政策で対応できると考える。他方は、この問題は長期的な競争力低下の過渡的症状であって、その原因を取り除くためには、政府政策や経営方法の数々の変更を迫られるとするものである。