継続的改善に取り組む「サービス型チーム」
鈴木 PwCコンサルティングでも、内製化はDX成功のカギの一つと考えていますが、スギ薬局のような積極的な企業はまだまだ多くありません。当社が実施した「2025年DX意識調査-ITモダナイゼーション編―」では、調査対象の日本企業における内製化比率は3割程度にとどまっています。海外に比べると、かなり低い水準です。内製化比率が低いままではDX人材の育成は容易ではなく、新たな手法や技術の取り組みに出遅れる、ないしは活用が限定的になってしまいます。また、DX施策の検討から実行まで都度外部への発注を繰り返す形になるため、どうしても推進に時間を要します。内製化でDXを加速するスギ薬局の取り組みは、多くの企業の参考になると思います。
宇野 当社のDXは2段階で進んでいます。「DX1.0」は2021年頃にスタート。人材の採用・育成と並行して、内製化を推進しました。社内のデジタルリテラシーの底上げにも取り組んでいます。
DX管理部プロセスオフィス課 課長
兼デジタルエクスペリエンス部UI/UX課 課長
宇野真史氏
各務 2025年からは、組織文化の変革を目的とした「DX2.0」が進行中です。地域特性に応じて、スギ薬局の店舗にはそれぞれの個性があります。また、幅広い年齢層、多種多様なお客様がいます。こうしたお客様に対応して改善サイクルを回すには、現場に近いところで意思決定する必要があります。その際の重要なポイントは、アジャイルな組織文化を根づかせることです。
鈴木 一般的に“アジャイル”というとソフトウェア開発領域での取り組みというイメージを持たれがちですが、私たちもアジャイルの思想や働き方を組織活動全般に取り入れていくべきだと考えています。具体的な取り組み内容について教えてください。
ディレクター
鈴木直氏
各務 私たちは長い時間をかけてお客様・患者様の声、そして現場と現地、現物を大事にする文化を培ってきました。さらなる成長を目指すためには、この文化をスケールしやすい形に再定義し、組織全体に定着させる必要があると考えました。そのために、DX・AI推進本部は「サービス型チーム」を導入しました。役職ではなく、「役割」に基づいて仕事を分担し、短いサイクルで改善を繰り返しながら顧客に継続的な価値提供を行う。まさにアジャイルの思想を体現した働き方です。ここでいう顧客は店舗のお客様だけでなく、取引先、店舗や部門などすべてのステークホルダーです。期間限定で固定されたスコープを持つプロジェクトとは異なり、サービス型チームはニーズに応じて優先順位を柔軟に変更し、サービス運用に入ってからも継続的に提供価値の向上を目指します。
森本 PwCコンサルティングは、サービス型チームと同様の考え方として、従来の「計画駆動型プロジェクトマネジメント」ではなく「アジャイル型プロダクトマネジメント」がDX推進には有効だと考えています。従来のシステムは、「業務を支援するツール」という位置づけであり、業務側の要件に対応できるシステムを一定期間内に構築する「プロジェクト型」で実施することが一般的でした。一方、環境変化が激しい現代においては、システムも「収益に貢献するプロダクト」と位置づけ、ビジネス価値を最大化できるよう、中長期的に改善し続ける必要があると考えています。
宇野 プロジェクト終了後、システムは徐々に陳腐化します。プロジェクト期間中に、システム開発の前提となる環境が大きく変化することもあります。市場や技術の変化が激しい時代、システム開発・運用のあり方も変わる必要があります。そこで生まれたのがサービス型チームです。サービスの改善を繰り返しながら収益の向上を図る、その根幹となるのが、期間の縛りのないサービス型チームであり、アジャイルな働き方です(図表1)。
図表1 プロジェクト型チームとサービス型チームの比較
各務 DX推進にはサービス型チームが適しています。業務を“因数分解”し適切なサイズのサービスに再定義して、そのサービスを担うチームを組成します。ストラテジストやサービスオーナー、スクラムマスター、アーキテクトなど9つの役割で構成されるサービス型チームは、業務とITのスキルが同居する機能横断型になります。本部は各チームが「どんな仕事をするのか」「何を期待しているのか」を明示し、チームはその役割に責任を持つ。すべてのチームの役割は可視化・共有されているので、チーム間の連携もしやすくなります。
マネージャー
森本崇恭氏
森本 比較的少人数で機能横断のサービス型チームは、顧客ニーズの特定からサービス実装までをワンストップで手がけることができますね。コミュニケーションコストを最小化しつつ、対応スピードも高められるため、まさにDX推進に適した組織形態だと思います。