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多くの大企業はプロフィット・センター責任者の経理的な業績を評価するのに、1920年代に開発された手法を今もって採用している。評価のよりどころは投資利益率(return on investment, ROI)である。技術と経営情報システムの両面でテンポの速い変化が進むこの時代に、こうしたシステムに固執しているのは奇妙であるばかりか、企業を弱めることにもなる。これまで20年にわたって筆者は、この問題をアメリカの国内外で上級経営者や事業部長と議論してきた。こうした人びとは、この硬直したシステムから起きる問題点を認めてはいるものの、自社のシステムをどのように変えればよいのか、わからないのだ。
新しいシステムを作るには、まず経営者が古いシステムの欠陥を理解しておかなければならない。筆者の見るところでは、投資利益率を採用しているということは、プロフィット・センター評価システムに基本的な考え方の誤りがある、ということを示しているのだ。その誤りをあげてみよう。
1. 過去の財務業績を測る技法と、将来の業績目標を設定するのに必要な技法との区別ができない。
2. プロフィット・センターの業績を評価するシステムと、そこの責任者の業績を評価するシステムとを分けていない。
3. 責任者が影響力をもちうる程度に応じて、予算項目からの差異を詳細に分類していない。
本稿では、こうした考え方の誤りが起きる根拠を明らかにし、これが不満足な評価システムにつながっていることを説明し、経営者が、こうしたシステムの生み出す問題点を是正するために、どんな手を打てばよいか示唆しておきたい。
誤った考え
従来からの会計制度を使って組織単位別の業績を評価する場合には、一連の期間に稼いだ額を比較したり、費やされた投資に対する利益率を計算して、利益が妥当か判断する、という方法がとられている。
ほとんどの会社は、1920年代にデュポンやゼネラル・モーターズが作り出したシステムに負けまいと張りあっているわけだ。この両社はともに利益責任を事業単位に分権化し、それと同時に事業単位の財務業績を評価するのにROIを採用し始めたのである。そして将来の利益目標を事業部の資産に対する利益率という形で表示し、過去の実績を基礎に業績を計画する方法を始めた。その後、こうしたROI目標を利益予算に正式に組み込んだ。
評価か計画か
投資利益率は過去の収益性を測定するには有効な手法である。事実、これ以外に組織間や投資ごとの収益性を比較できる手法はない。しかし、これは将来の目標を設定するには有効な方法ではない。この方法の基礎となっている資産の過去のコストは、将来の活動を計画するには意味をもたないからである。ある一群の資産に対してどれだけの額を支払ったかということや、提案された投資に対してどれだけの額のキャッシュフローを計画したか、などとはまったく無関係に、一度資産がそのあるべき位置に収まってしまえば、あとはその利益責任者が当然なすべきことといえば、その資産を使って将来のキャッシュフローを最大にすることと、新しい資産から得られる利益がその企業全体の資金コストと等しいか、または上まわると予想される時に、新しい資産に投資すること、の2つしかない。過去を測定することと、将来を計画すること、この2つを区別できないのが、企業があい変わらず利益責任者の財務業績測定にROIを使っている主な理由なのだ。
ROIはもともと好ましくない副作用を伴うものであるが、こうした区別をつけないで利益責任者が投資利益率を最大にしようとする時、さらに副作用が増える(こうした副作用を要約したものとして、"投資利益率のもたらす悪影響"というカコミを参照していただきたい)。



