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ビジネス誌の記者は、工具入れについての記事を書くために取材先へ急行するようなことはしない。しかし、ノースカロライナ州アッシュビルのウエスチングハウス社の工場で、機械の段取り時間を短縮し、コンピュータ処理過程の多くを削除し、在庫量と間接労務費を3分の2も削減した、しかもそれをわずか2年で達成したという情報が入れば、編集者はまずまちがいなく、そこへレポーターを送りこむだろう。そして、そのレポーターは工場内を走りまわって"近代化"を示す明白な証拠を捜すはずである。カメラマンも、部品をのせた長い曲がりくねったコンベアラインの写真を撮りたいと期待しているはずである。
しかし、現実のウエスチングハウスのアッシュビル工場には撮影の対象となるべきこのような光景は、どこにも見当たらない。工場の内部は特定の機械とその操作作業員がひとかたまりとなって配置され、あるいは工場内工場のかたちをとって、最終製品を作っており、いずれも作業の流れにそって配置されている。こうすることによって、ふつうはコンベアによって結ばれている部署間の距離がゼロになっている。機械は製品タイプ別に配置されており、調整用のノブやクランクも固定されたままである。シャーリング機械だけがかたまって配置されるのではなく、シャーリング機械の隣にターレット動力押抜き機があり、そのまた隣にプレスブレーキが設置されている。そして、当然のことながら機械のわきには必要な工具が全部そろった工具入れがおかれており、迅速な段取りのために、すぐにとり出せるようになっている。
しかし、このような常識的なやり方は、必ずしも写真入り記事の材料になるとは、かぎらない。金をかけない改善や段階的に改善を進めていくやり方も同様である。だが、こういったやり方がウエスチングハウス社のアッシュビル工場のようなサクセス・ストーリーとなるのである。
数多くの生産担当エグゼクティブは、部下に対して「なにごとも単純化するように」と勧める。しかし、新卒のエンジニアを雇入れ、大型の高速機械を導入し、それらを1本か2本の高速組立ラインにそって配置することで生産スケールを拡大し生産効率の向上をはかるというやり方に、少しでも疑いをさしはさむエグゼクティブが、はたして何人いるだろうか。また、今後は気まぐれな消費者に今以上に多くの品種を供給する必要が生じるから、そのためには高価なコンピュータ制御の機械やロボットが必要になるだろうという見方に、疑いを抱くエグゼクティブは、何人いるだろうか。
節約は、けっして時代遅れの美徳ではない。現在もなお十分見返りのあるやり方なのである。財布のひもをしっかり締めたままでも、以下に示すようなやり方をとれば生産効率をあげることはできる。
□ 大規模な生産面でのオートメーションを導入するまえに、手持ちの機械と現有の施設を最大限にいかす。
□ 新しく雇い入れたエンジニアやコンピュータ技術者あるいは一括委託方式のオートメーション会社に生産戦略をまかせるのではなく、自ら戦略を管理する。
□ 現有の機械の改善やその用途を特定化、単純化できる能力をもつ。自社製品の生産にぴったりの汎用タイプの機械が市販されていると期待してはいけない。材料、技術、品質標準、製品が常に変化し改善されている時代だからこそ、自社の機械を継続的に改善できる能力が、ますます重要になるのである。
□ より大型で、より早く生産できる機械や生産ラインの導入は、慎重に行なうべきである。それらの機械やラインは生産能力は大きいが、コストも大きいため生産方針がそれを中心にして決められるだけでなく、その移動のしにくさや柔軟性の低さが、製品のライフサイクルが短くなっている現代に適合しないからである。
□ 巨大な機械や他と切り離された機械器具あるいは長いコンベア・システムは、作業員間の連帯をなくし、生産プロセスを統合する機会を減らし、責任の分散化をもたらすことを知っておかねばならない。オートメーションはコスト低減と品質面でのばらつきを最少にできる可能性をもっているが、それは、オートメーションがすでに明白化している問題を解決する場合や、段階的に行なわれるより単純な改善策よりもコストがかからないという条件を満たして、初めていきてくるのである。



