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小規模ながら急成長しているコンサルティング会社の会長であるバリー・ドノバンは、明朝の会社の経営委員会の会合で同僚と議論しようと考えていることについて思いめぐらせていた。ドノバンは自分の会社の高収益と広範な新しい事業機会に満足してはいたが、一方で、世界にまたがるコンサルティング企業に向けての戦略的方向を設定し、増加する一方のスタッフを管理するという仕事に頭を悩ませていた。「われわれはどこへ向かっているのか。今の2倍の規模になったら、どうやってこの組織を運営すればよいのか」と彼は思いまどう。
だからといって何ができただろうか。経営役員たちや副社長たちは、新規事業の開発やクライアントへの助言にかかりっきりで、会社の将来やそのさまざまな機能について、じっくり考える余裕のある者は誰もいない。長期的な戦略課題への取組みは、常に、クライアントへのサービスやふくれあがる一方の日常業務の処理といった短期的な問題に道を譲っているかのようであった。そして事態は、最近会社が雇い入れている職能専門家――その大部分がMBA――が増加することにより、ますます悪化している。生産的で、組織への貢献度の高いメンバーに成長していくためには、彼らには先輩たちの時間と指導が必要であった。ところが現実には、彼らの限られた接触機会は、特定のプロジェクトに関するせきたてられるような会合の席上だけであり、このため、ビジネスについて学び、あるいはクライアントについての経験蓄積を開発するための効果的な方法を明らかに、もてないでいる。
これらすべてのファクターは、1つの重要なニーズ、すなわちマネジメントへのよりいっそうの留意という問題に収れんする。そして、この結論は会社の核心に触れる問題であった。管理者としてではなく、コンサルタントとしての力量や可能性を買われて精選されたドノバンの同僚の大部分にとって、マネジメントは、不快な、ほとんどダーティな言葉であった。経営委員会に加わっている者にしても、自分たちを、戦略専門家、マーケティングに関するエキスパート、あるいはアドバイザーといったスペシャリストと見なしており、ゼネラル・マネジャーだとはけっして考えていなかった。これらすべてを勘案すれば、ドノバンとしては、経営管理の問題をいつまでも先送りできないということを、どうやって説得すればよかったのか。
しかし、ドノバンはそれ以上に、組織自体がどうなるかを懸念していた。彼には、クライアントの大企業によく見られる官僚的な構造や体制にまったくわずらわされない会社を育ててきたと常に自負してきた。だが会社を大きくしつつ、同時に優れた名声をかち得ている職能専門家たちのあいだのインフォーマルなコミュニケーションや協調関係を残しておくことが、はたして可能であろうか。
会社の商品やサービスが、職能専門家たちの知的能力と、クライアントと彼らの個人的関係の深さに分かちがたく結びついている多くの専門企業や金融サービス会社に属する人びとにとって、このような組織のジレンマは、いやというほどなじみのある問題である。この種の組織では、権威の中枢にいる人びとは、大部分が同時に職能制作(production)プロセスの中核に属する。対照的に、企業戦略の開発、スタッフの訓練や継続的な動機づけなど、この種の企業を管理していくことは、職能専門家たちを制作の表舞台からはずし、より孤立した環境のなかにおくことになる。
コンサルタントや投資銀行家、会計士、建築家、あるいは法律家を問わず、この種の企業の上級メンバーたちは、いずれも共通した問題とぶっかって解決を迫られている。すなわち、
自社の職能専門家たちが、経営管理のために採用され、教育訓練され、報酬を得ているのでないとすれば、人間や事業の問題を管理するプロをどうすれば見出せるか。
過度に官僚的な組織を生むことなく、増大するスタッフを訓練し、融合させ、開発していくにはどうすればよいか。
現場に密着している人びとによって効果的な戦略が立案されるようなダイナミックな環境のなかで、部門間の戦略的な管理や調整をいかに達成すればよいか。
官僚主義を排しつつ規模を拡大するには、どうすべきか。



