-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
マーケティングにおいて、流通という分野は、軽視されることが非常に多い。数多くの戦略分野で卓越している自動車メーカーでも、部品と修理サービスの分野ではNAPAやマイダスおよびグッドイヤーといった企業に大きなシェアを奪われている。それは自動車メーカーが自社のフランチャイズ・ディーラーのネットワークを改善しようとしないからである。自動車メーカーだけでなく数多くのアメリカの企業が、同じように時代遅れの流通システムを通じて販売しているが、そこですぐに思い浮かぶのがタッパーウェア社である。アメリカの成人女性の半数以上が家庭外で就労している時代に、今なお"ホームパーティ"形式の販売を続けることは適切なやり方とは思えない。
これとは対照的に、顧客への販売方法において想像力にあふれた戦略を採用して競争に打ち勝ってきた企業もまた数多く存在するが、これらの例はマーケティング・エグゼクティブにとって大いに役立つ。例えば、小荷物配送におけるフェデラル・エクスプレス社のシステムは非常に革新的かつ強力なものであるから、この業界だけにとどまらず一般的な流通の1つのモデルになるほどである。あるいは、アメリカン・ホスピタル・サプライ社は、病院や診療所とのあいだに高度なデータ処理システム・ネットワークを設置することによって競争上で優位に立ってきた。さらに、スティールケース社は複雑なオフィス用家具の配送を標準化し、時間どおりの完璧な配送を実現している。
アメリカの企業はその製品やサービスを顧客へ手渡す方法については、あまり関心を払ってこなかったが、顧客のほうでは、ますます質の高いやり方を求めるようになっている。顧客は時間も手間もかからないシステムを企業に望んでいるのである。
それゆえ、いまは流通システムの改善によって競争力を強化できる絶好の機会といえる。新しいテクノロジーを使えば、フェデラル・エクスプレスのように競争相手に打ち勝つこともできるだろう。アメリカ企業(このなかには規制緩和された電信電話企業も含まれる)の経営者は、この機会を活用するだろうか、あるいは活用できなくても機会の何たるかだけは認識するだろうか。自社製品にとって、もっともふさわしいと思われる流通チャネルを選択し設定するために、企業はどんな手順をとるべきなのだろうか。
ここでは、効果的に働く流通システムを設計するための8つのステップを提案したい。その際"プロセス"という言葉がカギになる。なぜなら、これら8つのステップをとった結果がどうであれ、その作業を遂行する過程(プロセス)において顧客が望んでいることやそれをどうやって満たすかが明らかになるので、経営者にとっては得るところが大きいからである。経営者は常に「自社は市場志向でありたい」といっているが、8つのステップを実行する過程で、単なるお題目であることの多い"市場志向"を実質的なものに変えていくことができる
ステップ1:
顧客の願望をさぐり出せ
マーケティングにかかわるすべての決定のなかで、流通システムに関する決定ほど他への影響力の大きいものはない。価格や広告は簡単に変えることができる。調査会社との契約や解約、販促計画の変更あるいは製品を変えることさえやってのけるのに、流通チャネルはひとたび設定してしまうと、その変更は難しいというのが一般的である。
それゆえ、まず最初のステップは、顧客が購入にあたって何を望んでいるかを調査し、その願望を基準にして顧客をマーケット・セグメントにわける作業になる。調査を行なうにあたっては、自社の最終顧客、いわゆるエンドユーザーが流通サービスの方法に関して望んでいることに焦点を絞らなければならない。自社の製品から実際にベネフィットを得るのは、まさにこれらの人びとだからである。
製品の品質は、ここでは問題ではない、という点をリサーチャーは強調しておかねばならない。自社の業態がサービス業か製造業か卸売業かにかかわらず、この段階では、自社にとってもっとも役立つこと、あるいは役立たないことに関する質問をしてはならない。質問はサービスの提供のしかた、製品購入にあたっての利便性、およびサービスあるいは製品の販売時に提供される付帯物といった点に、調査対象者が集中できるようなものでなければならない。
自社の製品、サービスに対して、すべての顧客がまったく同一の見方をするといった完全に同質の顧客で構成される市場などというものは当然、存在しない。製品を設計するときは、マーケット・セグメントの確認は怠りなく行なうのに、その製品をどのようなやり方で流通させるかを決めるにあたっては、このような確認はほとんど行なわれない。これは重大な誤りである。
この最初の調査は顧客の願望の一覧表を作るためのものであるが、検討の対象として壮大すぎたり、とるに足らないささいな願望は一覧表から除いておかねばならない。何らかの制限を設けておかなければ、絶対に実現できないような願望まで含まれてしまう。いうまでもないが、もっとも重要な検討事項は価格である。サービスをつけ加えたり減らしたりすれば、それに応じて価格もまた高くなったり低くなったりすることを調査の対象者に周知させておかねばならない。しかし、対象者が自分たちの願望の重要度を決める場合に価格だけを基準にするのではなく、願望の強さも考慮に入れて決めるよう指示しておくことも同様に重要である。



