輸入品の競争からの法的保護を探し求めることを主要な仕事系列の1つに組み込んでいるアメリカ企業が多い。見たところ、わが経済を飲み込みそうな輸入品の洪水からの救済を求めて、ワシントン詣でをする業界は、鉄鋼から半導体や、こけら杉・屋根、壁板に至るまで、ひきもきらない。

 外国の補助金の恩恵を受けている輸入品により損害をこうむったと申し立てる提訴をアメリカ国際貿易委員会が受けた数は、1980年以降、少なくとも280件に及ぶ。さらに、公正価格以下で製品をアメリカ国内でダンピングした外国企業への非難も、340件にのぼる。このほか、輸入品が特許権や商標権、ライセンス許諾権を侵害したとか、外国人がアメリカからの輸出品に不公正な待遇を与えたとかの主張をするケースも、いく十にも達する。しかも、不公正または違法な行為の申立てのない場合でも、輸入品によりある業界が被害を受けたという簡単な主張だけでも、救済を求めるうえの十分な根拠となるのである。

 世間一般の印象に反して、この輸入品からの救済を追求することで、助けられるより傷つけられた企業のほうが多かったのである。保護を求める企業は、必ずしも、その努力を通じて、いっそう安楽になれるわけではないのである。そして、業界団体として解決を追い求める際には、そのかけひきのなかで、会員企業のうちの多くが損害をこうむるかもしれないのである。

 国際的企業が、単なる多国籍ベースでなく地球的ベースで製造販売機能を打ち出すにつれて、製品開発、マーケティング、製造、研究関係の入り組んだ蜘蛛の巣的網を展開しつつあることこそ、一番重大なのである。これらの関係の特性上、1部門のニーズに適した1つの保護システムが、同じ親会社に属する他の部門の戦略ニーズを充たすことは、なかなかありえないわけである。合弁やライセンス協定、調達協定、ディストリビューション協定が複雑になってゆくほど、国際貿易法令にもとづき手にできる"救済"が、有効というよりも悪影響のほうが多い可能性が増えてくる。

 当該企業を保護するためにつくられた貿易法規が、その企業の不利な方向で外国企業の逆用にあう危険も、国際化を通じて増えてきている。例えば、アメリカのある国際企業が、ある製品の唯一の世界的供給源として海外工場を設けたとし、その競争相手は同様な製品をアメリカ国内で製造していると仮定しよう。もし競争相手が、当該輸入商品で被害を受けたと立証でき――輸入している企業が、その海外工場建設に外国政府の補助金を受けたとすると――、アメリカ政府は、このアメリカ企業の輸入製品のその母国での競争力をなくすような関税を課することがありうる。この企業は関税を払うか、高額のコストをかけて、よそに製造を移すかしなければならなくなるかもしれないわけである。

 同様なすじの保護貿易主義者仲間によって、どんな企業でも国際的経営を行なっているかぎり痛手を受けることがあろう。1986年初期に多分最もずうずうしいケースが起こった――路面の結氷を溶かすために主に使われる岩塩をカナダの数企業がダンピングしてアメリカの製塩業界に打撃を与えたとの申立てに対し、商務省とITC(国際貿易委員会)の調査が実施された。被害申立ての"アメリカ企業"とは、オランダの化学国際複合企業のアクゾナ社の子会社であるインタナショナル・ソルト社であった。岩塩をダンピングしていると申立てられた"外国数社"には、岩塩のアメリカ国内製造者として第2位でシカゴに本社をおくモートン・シオコール社の一部門、モートン・ソルト社のカナダ子会社も含んでいた。

 この申立ての信じがたい結果とは、在外経営もやっているアメリカ企業からの保護を、アメリカ国内事業もやっている外国多国籍企業が求めてきたことである。もしITCがインタナショナ・ソルト社側に有利な判決を下したならば――実際はそうでなくて岩塩への需要を減殺した暖冬が業界の悲哀をもたらしたのであるとの判決をしたのであるが――商務省は(アメリカ)モートン社のカナダ子会社からアメリカの顧客先への岩塩輸送に対し関税を課したかもしれず、同社の国際調達取決めを瓦解させた結果となったやもしれないのである(1)。

骨のおれる戦さ流儀

 輸入軽減への理論的根拠は簡明である。自由貿易は消費者のためになり、究極的には国内産業に効率化を迫るわけであるが、安値の輸入品が急に氾濫すると、国内企業を不当に不利な立場に追い込みかねない。経済一般が、貿易自由化で繁栄するにつれて、どの特定業界も不釣合いな損失をこうむることがけっしてないような形に、議会は貿易諸法を立案したのである。

 関税および貿易に関する一般協定(ガット)で輸入関税低減が行なわれた際すらも、議会は再三にわたって、企業が輸入品による不当な負担を背負わされている旨、証明しやすいようにしたのであった。

 国際貿易上の苦情を行政部にもち出す手続きは簡単である。苦情申立ての企業か業界の弁護士が、自身の哀れな経済状態や、その原因をつくった輸入品の役割とか、輸入業者が携わったとされる不公正取引の証拠を提出する。外国企業としては当然、自社製品がアメリカ業界や企業の危険状態の原因となったわけでもないし、不公正競争も行なっていないことを示そうとする。