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企業の最高経営責任者(chief executive officer)を誰にするかにより、その企業の将来方向と健全性が決まるので、CEOの選考は取締役会と退任まえのCEOが下す最も重要な意思決定であることは、ほとんどの経営幹部が知っている。しかし、この意思決定は関係者誰もがあまり経験のないことであることも、彼らは知っている。ある米国大企業の場合、CEOの交代は約8年に1度しか行なわれない。選択を間違えば、コストは高くつき、面倒が増え、恥をさらすことになりかねない。
CEO後継者の決定がいかなる形で行なわれているかについては、驚くべきことに、ほとんど注目されていないというか、詳細な調査対象となったことがない。新任のトップの名前は、いかにももったいぶって発表されるが、この決定がいかなるプロセスでまたは理由でなされたのか、めったに知ることはない。そのプロセスは、いかにも徹底的に熟慮したうえで決められていると思われるよう演出されているが、実は既定の路線ではないかと思われる。
少なくとも外部からはそう見える。内幕の事情は違っている。1人の人間を選ぶというプロセスは、しばしば組織をぎりぎりのところまで追いつめる。それは究極的な人間問題である。上級経営層全体の心配事や野心をすべて考慮に入れなければならないと同時に、組織内の他のすべての人の希望についても配慮しなければならない。将来は誰が勝つかにかかっているのである。
最善の候補者を選ばねばならないのは当然としても、その選び方は組織の分裂を最小限にし、望むべくはモラールを最大限にする方法でなければならない。発展を続ける優良企業という会社のイメージを世間に定着させねばならないし、もしイメージが危機にひんしていれば、たて直さなければならない。
5年まえ、リチャード・バンシルは、このいささか霧に包まれたテーマについて、初めて本格的な調査を行なった。彼は、この問題を最もよく知る人びと、すなわち現職のCEO、前CEO、CEO候補者、および後継者選びに参画したことのある社外重役たち約50名と、この問題を話しあった。過去25年、227の大企業で起きた何百件という交代劇を調べあげた。その成果が1987年6月にハーバード・ビジネス・スクール・プレスで出版予定の著書、『Passing the Baton』(バトン・タッチ)である。
バンシルは、まさしくその性格上きわめて個人的で劇的であるプロセスに踏み込んで、約20社におけるCEO交代劇を紹介している。本稿では、エド・フィッシャーの漫画が、あばき出された交代プロセスに関する中心論点のいくつかと、何が交代に影響を与えるかを浮きぼりにしている。バンシルは、その著書で取り扱った中心テーマのいくつかについて、すなわちCEO職がいかに構築されているか、その構成がいかに選考プロセスを制約するか、候補者たちの出身、CEOが期待はずれの場合どうするか、などについて独自の見解を追加している。
Richard F. Vancilは、ハーバード・ビジネス・スクールのラベト・ラーンド寄贈講座の経営学教授である。教授は国際コンサルタント会社、MACグループの会長・創設者でもある。
Ed Fisherの漫画は、ニューヨーカー、パンチ、エスクワイヤー、プレイボーイなどの雑誌に、定期的に掲載されている。

今日のトップマネジメントは昔日のトップとは違う。かつて創業者の統領がトップの地位を一族の世継ぎにあけわたしていた時代は、ほぼ過去のものとなった。今日の新CEOは、全部あわせても、その企業のほんのわずかな株式しか保有していない、ひと握りの専門経営者と社外重役連によって選任されるのが、一般的である。



