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約40年まえは、パッケージ商品のメーカーは自分たち自身で、自分たちの商品のマーケティング戦略を決められる時代であった。ブランドのパワーを利用することによって、これらの企業――食品、タバコ、清涼飲料、トイレタリー用品、HABA(健康・美容品)などのメーカー――は、当時はまだ受け身の流通システム(問屋、小売業者など)を通して、消費者に自分たちの商品を売ろうとしたのであった。
宣伝や店頭の広告、あるいはパッケージなどによるプル・マーケティングによって、メーカーは自分たちのブランドに対する消費者の支持を確立することによってマーケットシェアを勝ちとり、それを維持していくことができた。これらの消費者の支持によって、価格を高く維持できたために、大々的な宣伝やプロモーションのための予算を維持していくのに必要な資金を獲得できたと同時に、大規模な商品開発予算も手に入れることができたのである。
プル・マーケティングのダイナミックさを発揮していた典型的な企業は、プロクター・アンド・ギヤンブル、ゼネラル・ミルズ、ジレット、ゼネラルフーヅ、ブリストル・マイヤーズなどの巨大な企業であった。彼らは数多くのメーカーのなかで、最も優れた企業であるとみなされていた。その大きな理由は、彼らが外部から見ると、自分たちの運命を自分たち自身で管理しているように見えたからである。
ほかにプル・マーケティングの成長を助けた要因として2つのものがあげられる。1つは、流通システムのなかにセルフ・サービスが広まってきたことである。この方法によって、消費者は店頭の陳列棚から販売員や注文を受ける人の干渉なしに商品を手にとることができたのである。もう1つは、テレビジョンのネットワークが完成されたことである。これは大量の視聴者に素早く、安く、効果的に情報を伝えるのに大変すばらしい媒体であった。しかしながら、第二次世界大戦後、アメリカ人の生活のなかに最も顕著に存在してきたブランドの差別化、店頭での宣伝、あるいはマス媒体を使うこの宣伝方法は、現在劇的にその立場を失いつつある。流通システムのほうが、より多くの役割を担いつつあるのである。
価格を下げる販促――消費者向けのクーポンやトレード・アローアンス(問屋や小売業者に渡すリベートその他)――が、メーカーの販促や宣伝の予算の多くを占めるようになってきた。
小売業者が仕入れるパッケージ商品の80%以上がトレード・ディール(トレード・アローアンスと同じ)によって仕入れられるといったことも異常なことではない。あるいは消費者が購入するパッケージ商品の50%以上が、消費者のために発行された何らかのクーポンによって購入されるということも珍しいことではない。クーポンは日曜日の新聞に何十種類も載せられている。その結果、価格競争が激しくなり、ブランドが享受してきた消費者からの支持が弱くなり、パッケージ商品のメーカーの利益が減少したのである。
これらのメーカーは、プッシュ・マーケティングの時代に意図的に入っていったのではなく、多くの強まってきた要因によって、この時代に流れ込んだ。その要因のいくつかは社会経済的な要因である。メーカーは、この傾向を逆転しなければ、自分たちのマーケティングの生産性を悪くしてしまう危険に直面している。
プッシュ・マーケティングに走る
どのような力、どのような出来事がメーカーをプル・マーケティングから撤退させたのであろうか。
よく知られているように、これまでの社会では価値観やライフ・スタイルは同一なものであったが、現在では異質な価値観やライフ・スタイルが多く存在するようになったこと。この変化はマーケット・セグメンテーションに門戸を開いた。その結果、多くのブランドやライン・エクステンション(味や色、サイズなどを変えて新製品として出すもの)が誕生した。多くの成長しないマーケットにおいて、成長の可能性を見出す主要戦略としてメーカーが、この方法をとり入れたからである。その最もよい例はビールである。
ほとんどのマス宣伝を行なう媒体もライフ・スタイル別に分かれてきていること。今日、真のマス媒体としてはテレビのネットワークがあるのみである。しかしながら、ここでも見る選択が多くなっている(その一部の理由は、ケーブル・テレビの出現やテレビの系列化、あるいはVCRの誕生などからである)ことから、視聴者の細分化ということが起きている。視聴者の数が少なくなってきたことによって、宣伝媒体のコストは急速に高まった。



