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あなたの企業が拡大する必要に迫られているとしよう。必要とするオフィスを買うべきだろうか、賃借(リース)すべきだろうか。このような単純な問題についても、不動産価値が将来どうなるかということのみならず、賃借契約をどういう形でまとめるかということによって、その答えはさまざまである。残念ながら、経営者は不動産に関する意思決定に当たって、一般にあらゆる可能性を検討しようとはしないのである。
2つの例を考えてみよう。20年くらいまえに、ある石油の小売業者が50のガソリン・スタンドを買い取るのではなく、賃借する決定をした。これらのスタンドは、10の異なった都市の外縁部にある中所得層の下のクラスの人たちの住む区域にあった。これらの不動産は、一見本質的な価値がほとんどないように思われたので、経営者はそれらを賃借することにきめた。ところが、これは間違いだった。
数年後に、ある大企業が、その北東地域本部用として30階建てのビルを建設した。その企業は、事務所用不動産のマーケットが非常に好調に拡大を続けており、縮小するきざしが見られなかったので、そのビルを所有する決定をした。ところが、この決定も間違いだったのだ。
都市の郊外への拡大が進み、ガソリン・スタンドはすべてそのなかに飲みこまれてしまった。そのため、これらの価値は販売するガソリンよりも何よりも高くなってしまった。他方、事務所用ビルのマーケットは不況に陥り、ビルを作った企業はビルからの予期した利益をあきらめざるをえなくなった。
この2つの企業では不動産部門の人に責任があるとしたが、それは少なくとも2つの点で不当である。まず第1に、不動産部門の人は対象不動産の評価を慎重に行ない、それにもとづいて予測をたてた。しかし予測は予測にすぎないのだ。それは魚釣りのようなものだ。魚について保証があるならば、それは魚釣りとはいわない。それは魚のつかみ取りである。もっと重要なことは、建物を所有するか賃借するかの意思決定は不動産の問題ではないということだ。それは財務上の意思決定なのである。
この例で、ガソリン・スタンドも事務所ビルも投資のために取得されたものではない。これらは企業の営業目的に使われるものである。その立地をどこにすべきかは不動産上の意思決定である。残りの問題、すなわち、いかに最善の方法で必要資金を調達するかは財務上の問題なのだ。
それでは、ここでこれらの例の1つをもっと詳細に検討し、これらの意思決定に当たり、どのような違った対応の仕方をすべきであったかを見よう。
資金コストを知ろう
不動産の所有権を取得するか賃借するかの選択の場合、取得することの利益はかなり明白である。まず第1に所有というのは支配権を意味する。もしある企業が建物を所有する場合、法律の範囲内において、その企業は妥当と思われる方向に建物を管理運用する完全な自由をもっている。第2に、この企業は減価償却によって節税することができる。1986年の税制改革法によって、どの企業も商業用の建物を31年半の期間にわたって償却できるようになった。1000万ドルの建物の場合、年間に償却費として落とせる金額は31万7500ドルになろう。法人税の税率が34%だから、毎年10万7950ドルの法人税を節税できることになる。第3の最も重要な点は、建物の所有者は、場所のよさとか、優れた経営とか、インフレーションなどによる価値の上昇の利益に、すべてあずかることができる。
賃借の利益は所有に比べて、ある程度不明確である。しかし、ある企業が賃借の選択をしようとする場合、賃借の利益は所有を断念するのを補うものでなければならない。たいていの場合、その補償は資金コスト分の節約に匹敵するものでなければならない。
不動産を所有するか賃借するかの選択については投下資本のコストを分析する必要があるが、ここではMEM社と呼ぶ会社の本社ビルの例から始めよう。このビルは1000万ドルかかり、MEM社は金利11%期間15年で元本の弁済は満期に一括払いという抵当借入れで総額を調達できたとしよう(明解にするために、例を少しばかり単純化してある)。年間の財務コストは、運営費用や税金を除き110万ドル(すなわち1000万ドルの11%)になる。



