かつて先進的な経営哲学にとって、有効に機能すると認識されてきた人事制度、施策の数々が、実は技術的側面から見ても望ましいものであることが、最近になって再認識されている。その理由の一部としては、最近の高度製造技術(advanced manufacturing technology)にあっては、人材の技能と従業員の仕事に対するコミットメント(献身)が以前にもまして重要になってきているという事情があげられる。したがって、多くの先駆的な製造業にたずさわる企業では、労働者の職務遂行能力を高め、労使関係を向上させる方法を捜し続けてきている。それだけでなく、人件費を総体的に削減していくために役立つ新しい技術も追求しはじめている。

 では高度製造技術が職場に導入されたときに、どんな現象が生じてくるか。次のような現象が、多くの工場でも生じてきていることを、筆者たちは観察した。

 □諸活動が、より密接に相互依存的に関連づけられる。

 □かつてとは違った技能が従業員に要求される(通常の場合、平均的に以前より高いレベルの技能が要求される)。

 □何らかのエラーが起こると、以前と比較して、より直接的、かつより大きな損害が生ずる。

 □生産高(アウトプット)は、人材の技能、知識、態度のあり方によって鋭敏に影響を受ける。また従業員の身体的努力よりは、精神的努力のあり方により大きな影響を受ける。

 □継続的な変革と改革が要求されて、以前よりもダイナミズムが増してくる。

 □従業員1人当たりに対する資本投資が以前より大きくなる。また個々の製品、パーツ、プロセスに対し、以前より数少ない従業員で責任をもつこととなる。

 上記のような現象の多くは、コンピュータをベースとした技術が工場に導入されるときにも生じている。しかし、単一のオートメーションが導入されるという初期的段階にあっては(すなわち、ある企業が数的なコントロール機器や、自動テスティング機器を導入するといった場合)、経営にとってなお、従業員に要求される技能水準を高めるのか、低めるのか、また要求される作業手順を統合するのか、分割するのかの選択が許される。しかし、オートメーションや情報処理技術の数々が統合されて活用される段階に至ると、これらの相互依存性を十分考慮していくことが日常茶飯事となり、さらに、高度な技能要求を織り込んだ職務設計を行なうことが、不可欠な要件となってくる。また、かんばん方式による在庫管理手法や、「初回からエラーのない製品を作ろう」とする方式が導入されると、上記の傾向はさらに助長されてくる。

 上記の結論は、筆者の2人がナショナル・リサーチ・カウンシル委員会のメンバーとして、実際に各企業を調査した際に得たものである【(1)】。1985年に、筆者たちは16の工場を訪問し、さらに高度製造技術を導入しているあと8つの工場における実践の方法を調査した(調査企業については表1に紹介している【(2)】)。われわれの観察した人事諸施策のうちから、高度製造技術の導入を考えている企業の経営陣と、労働組合の幹部が、高度製造技術の導入による影響を考慮し、さらに、これらの新技術を効果的に活用していくための戦略を作りあげる際に役立つモデルを作りあげた。