まずたいていの企業の場合、もしあなたが、ある投資の計画に何千時間も費やし、その実行に何百万ドルも使ったとしても、事後の評価がなされたり、そこから教訓を学ぶということはないであろう。そのため、当の投資がはたして成功であったかどうか……計画どおりにいった理由は何か……そもそも計画どおりにことがなされたかどうか……という最もベーシックな疑問に対する答えは、何ら得られないことになるだろう。それらの疑問は一見やさしそうに思えるが、答えがつねに明白とはかぎらないのである。

 例えば、ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)が、天然ガスをハイオク・ガソリンの一成分に変えるプラントをオーストラリアに建設したときのことを考えてみよう。同プラント建設は予算内で、しかもスケジュールよりも早く完成した。いっぽう、ロッテルダムの同様のプラントは、予算もオーバーし、完成は1年遅れた。そこでBPのマネジャーたちは最初、オーストラリアのプラントは成功で、ロッテルダムのそれは失敗という素朴な結論を引き出した。だが、再検討してみると、第一印象はあやしくなってきたのである。

 オーストラリア・プラントが提案されたころ、同国は国際収支赤字に苦しんでおり、同プラントの製品は、同国のガソリン輸入削減に役立つものと期待をかけられていた。しかも、同プラントは予想よりも早く完成したのである。だが、完成したころには、オーストラリアの経済環境はすでに変わってしまっており、ガソリン需要も予想を下回ることが明らかとなった。

 いっぽう、ロッテルダム・プロジェクトには明らかに問題があったとはいえ、製品に対するヨーロッパの市況はいぜん強かった。それゆえ、このプロジェクトの投資収益は予想どおりのものとなったが、オーストラリアのほうのそれは、予想よりもはるかに低いものとなってしまった。ロッテルダム・プロジェクトの成功から、BPのトップ・マネジャーたちは、計画立案者らが市場予測技法を改善する必要があり、との貴重な教訓を教えられることとなったのである。

 ブリティッシュ・ペトロリアムのロンドン本社には、こうした問題の鑑定を受け持つ独立の部門――ポスト・プロジェクト評価部(post-project appraisal unit: PPA)――がある。同部は、選考を経た投資のそれぞれを支える考え方、ならびにそれらのマネジメント、その結果を審査する役割をになっている。PPAの使命はもっぱら、ブリティッシュ・ペトロリアムが、広く世界において、その失敗から学び、成功を繰りかえすことができるよう助力する、ということにある。

 1977年末に設けられて以来、PPAは、BPの全世界での80以上の投資案件を評価したが、そのなかには国内・国外の建設プロジェクト、買収、投資引き揚げ、プロジェクト取消し、研究プロジェクト、多様化プラン、回漕などが含まれている。ただし、評価はけっして机上のものではなく、あくまでも会社のパフォーマンスの改善を狙いとしたものなのである。

 PPAを通して、BPのマネジャーたちは、投資計画を従来よりも、より正確に打ち出し、より客観的に確かめ、より効率的に実行するにはいかにすべきかを学んできた。その結果、今日では、ほとんどのプロジェクトが、少なくとも当初の予測以上の投資収益を生み出すに至っている。それらの改善は当然、BP全体の財務業績を高めることとなった。1985年の同社の税引後利益は、15億9800万ポンドと史上最高に達した。この業績はPPAだけのおかげというわけではないが、この評価部が劇的な成果をもたらしてくれたものとBPのマネジャーたちは信じている。

幅広い角度からの調査

 英国の大企業や多国籍巨大企業のいろいろな人たちと話してみた結果、わたしは、完成プロジェクトの徹底的な検証を行なっている企業はほとんどないことに気づいた。たいていの監査は、プロジェクトの進捗中に、適切なコントロールが行なわれているかどうかをチェックするという視界の狭いものにすぎないのである。しかし、わが社のマネジャーが、例えば石油精製所を監査するという場合、石油・天然ガスがどのように採集され、計量され、出荷され、報告されているかといったことについての詳細な情報を収集している。

 つまり、ポスト・プロジェクト評価の場合、もっと広い視点からなされるのである。まず最初、次のような大きな問題に目を向ける。すなわち、そもそもそのプロジェクトがスタートした理由は何か。それは当初の予測プランに見合うだけの石油を産出しているかどうか。石油需要は予測水準にあるかどうか。コントラクターは約束どおりに納品したかどうか。当該プロジェクトは、BPの全体的企業戦略に十分適合しているかどうか、……等々。

 一部の米企業も、"ポスト・コンプリーション・リビュー(完成後の再検討)"という形で、同じようなたぐいの広範なポスト・プロジェクト評価を試みてはいる。だが、それらとBPのポスト・プロジェクト評価とは、客観性と応用性という2点で異なっているのだ。ポスト・コンプリーション・リビューの場合、それを実行するのが通例、プロジェクトのメンバーであることから、彼らは再検討の結論をめぐって、ややもすれば、先入観や、既得の利害をすら抱きがちとなる。ところが、BPのPPA部のメンバーは、自分たちが評価するプロジェクトに何らかかわりをもっておらず、したがって、投資をより客観的に評価できるのである。