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ハンバーガー、ホットドッグ、ソフトチーズ、1人前包装ヨーグルト、スコッチ・ウイスキーには、飲食物であることを別にすると、どんな共通点があるだろうか。実はそのどれもが世界市場で猛烈に売れており、しかもその成功をもたらしたのは、ある1つの戦略なのである。われわれマーケターが製品を海外で売るために利用できる戦略には3つある。というより、3つしかない。先ほどの成功した製品の背後にある販売方法は、次の3つのうちのどれかなのだ。
段階的国際化は、マーケティング関係者にとって非常に大きな魅力である。われわれがマーケターになったとき、全員が学んだのは、これだった。われわれは自社の製造能力についての知識をひっさげて外国におもむく。製品については何の前提もない。つぎに、自社が供給できる製品エリアの範囲内で、現地の人びとが欲しているものを正確に知るため、調査に金をかける。そして最後は帰国して、開発担当者に製品を作らせ、それによって外国市場で競争しようとするのである。
世界的マーケティングは、今もっとも流行の、一見もっとも見込みのありそうな手法である。マーケティングの見地からは、これは、きわめて信頼性の高い戦略だ。国境にはおかまいなく、世界のどこかに出かけ、新たに生まれようとしているニーズを見つけ出しては、自社の製造能力によってそれに応じようとするのが、この戦略である。この場合は、消費者のタイプ分けと行動パターンに対して、とくに注意が肝要だ。それに合わせて製品提供が行なわれなければならないからである。つまり、慎重な市場細分化が行なわれるのである。
あてずっぽう方式は、国内市場ですでに成功した製品を1つ選び出し、あわよくばひともうけしようとして海外にもちだすという、一見したところ未熟な、ほとんどいいかげんとでもいえそうなやり方である。それは"非マーケティング"的な手法だ。というのは、そこには新しい未知の顧客グループの行動について、何ひとつ確かな前提がないからである。
われわれマーケターが、ふつうもっとも気分がよいのは、最初2つの手法を用いるときなのだが、いちばんよく用いられるのは最後の手法、つまり、あてずっぽう方式である。段階的国際化や正式な世界戦略は、はるかに危険の少ない方法だが、これを用いようとするマーケターは、まさに戸口にある製品を外国に運びだすための絶好のチャンスを逃してしまうことが多いのである。
海外での制約
国境を越えるとき、すべての業界のマーケターと製品開発担当者は、多くの制約に直面する。そのうちのいくつかは、はっきりしている。さまざまな国の人びとは、さまざまな言葉を話す。国境を越えると法規も異なっていて、多くの国では右側通行なのに、左側を運転しなければならない国もある。また、気候、経済条件、人種、地勢、政治的安定、職業の違いもある。このような制約のもっとも重要な原因、したがってもっとも測定が困難なのは、歴史、教育、経済、法律制度に根ざす文化的な差異であることは明らかである。
このようなあらゆる差異のために、製品・サービスをどこまで国際的に転換できるかは、製品のカテゴリーによって著しく違う。ポケット電卓、クレジットカード施設、潤滑油などは、あまり国際的な調整を必要としないが、他方、化粧用石けん、レコード盤、キャンディは、かなり多くの調整が必要になる。小売業や小口金融業務のような単純なサービス業の国際化のテンポがこれほど遅いのに、かたや国際的なホテル・チェーンのいくつかでは、徹底した標準化が行なわれて、ホテル内にいるかぎり、そこがバンクーバー、クアラルンプール、ストックホルム、トレモリノス(スペイン南部の港町)のいずれなのかもわからないほどになってしまったのは、どうしてかということに、わたしは興味を抱いている。
思いつくかぎりあらゆる製品のなかで、食品と飲料は、おそらくもっとも世界的になりにくいものだろう。2つの制約のために、食品が国際化することは、ことに難しくなっている。その第1(これは事実上食品に固有のものだが)は、認知可能性である。人は食品が何からできているか、また、ふつうはどのように加工されたかを知りたがる。そして、食品の外観、味、また多くの場合、舌ざわりにおける認知可能性を要求する。耐久財(繊維は、ある程度まで除く)、身の回り品、家庭用品を買うとき、消費者は、そのような要求をしないものなのである。
認知可能性の制約とは、食品にせよ飲料にせよ、その成分が人びとに知られていない国においては売れないということである。また企業が、食品に適用する技術や加工法の総量が限られていることを意味する。認知可能性が要求されるということは、またある製品が伝統的に長いあいだ使われてきた国に比べて、そうでない国では徹底的な加工を加えても受け入れられやすいことを意味する。ドイツ、フランス、イタリアではインスタントコーヒーは人気がないが、それは、このような国ではコーヒーを大量に飲み、それも新しく淹れたものを好むからだ。イギリスやアイルランドのような非コーヒー飲用国では、もっとインスタントコーヒーの人気が高い。
食品の国際化に対する第2の制約は、わたしがいうところの老成化現象だ。製品は、昔から習慣的に使われてきたものほど、国際的な市場性は小さい。反対に、使用パターンの新しい製品ほど、さまざまな国で市場を拡大することができる。



