野村 これまでも大量のVoCデータがコンタクトセンターに蓄積されてきましたが、それをリーズナブルなコストで活用できるテクノロジーがなく、事実上眠ったままでした。しかし、AIの進化によってコストのハードルが大きく下がり、活用の道が開かれました。先ほど賀來さんがおっしゃったようにVoCに基づいてFAQを自動更新したり、人のナレッジを学習させてAIオペレーターを継続的に進化させたりすることも可能です。

 当社は、そのような人とAIの協働をベースにしながら、蓄積されるデータをもとにカスタマーサポート業務の進化を生むサイクルを回すことでAIコンタクトセンター化を実現し、企業とお客様のコミュニケーションをテクノロジーによって下支えしていきたいと考えています。

世代を超えた顧客満足度——コンタクトセンターを事業成長の起点へ

賀來氏が描く未来像は、単なるコンタクトセンター運営の効率化に留まらない。生命保険というビジネスの本質を起点に、顧客の範囲を契約者本人からその家族へと広げ、世代を超えた満足度を事業成長に結びつけるモデルだ。

野村 顧客からの信頼と長期的関係が事業基盤となる生命保険において、AIをはじめとするテクノロジーがこれからの事業成長にどのように貢献するとお考えですか。

賀來 生命保険の特質上、死亡保険金の受取人は契約者のご家族であることがほとんどで、保険金のお支払い時にはご家族からの問い合わせが入ります。つまり、生命保険の顧客には契約者ご本人だけでなく、そのご家族も含まれると私たちは考えています。顧客満足度は、ご家族まで含めて高めていく必要があります。

 保険金の受け取りに際してご家族からの問い合わせに迅速かつていねいに対応することはもちろんですが、たとえば何十年か前に契約者ご本人がどのような思いで保険に加入されたのか——そうした会話のログなどの文脈が残っていれば、コミュニケーターがそれをお伝えすることで、ご家族の絆があらためて深まるかもしれません。

 世代を超えた顧客満足度の向上に結びつけることができれば、受け取った保険金の資産運用を検討する際に当社を真っ先に想起していただけるということも考えられます。属人的な関係性だけでは数十年をまたぐコミュニケーション設計は現実的ではありませんでしたが、AIの時代にはこういった顧客との文脈もデータ化(記録)し、AIが補完することで実現できると思っています。今後はこのような因果関係もAIを用いて分析し、事業成長に貢献していくことが、お客さまサービス部門の役割だと考えています。

野村 いまのお話の通り、コンタクトセンターは単なる業務部門ではなく、CXを起点に事業成長を担う重要な役割を持っていると感じました。一方で、こうしたCX変革は一部門だけで完結するものではなく、全社的な取り組みが求められるテーマでもあると思います。CX変革を組織として実現するうえで、経営陣の合意形成はどのように進めましたか。

賀來 さまざまな会議体で、AIオペレーターのロールプレイングを実際に披露しました。具体的に何ができるかというイメージを関連部門と共有したうえで、クイックスタートで小さな成功を実現していくという方針について合意を得ています。

 最初は広域への導入やすべてをAI化するという考えでなくてもよいと思っています。小さな成功モデルが一つできれば、「次はこの分野でも活用しよう」という意欲やアイデアが湧いてきて、連鎖的に活用領域が広がっていくはずです。まずはAIオペレーターの構築に注力し、AIを活用した顧客満足度向上の成功事例を、なるべく早く、一つでも多くつくっていくこと。それが現在の最大のチャレンジです。

野村 人とAIの協働によってデータドリブンなCX向上サイクルを実現しようとする御社の取り組みは、他の企業にとって非常に参考になると思います。

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