サマリー:コンタクトセンターを「事業成長の起点」へ。T&Dフィナンシャル生命が挑む、CX変革の舞台裏に迫る。多様な階層のメンバーを巻き込みながら推し進めてきたVoC活用やAIオペレーター導入の具体策などを同社執行役員が語る。

コンタクトセンターは「コストセンター」である——。多くの経営者はそう認識してきたのではないか。その前提を問い直し、コンタクトセンターを事業成長の起点の一つとしてイノベートしようとしているのが、T&Dフィナンシャル生命だ。同社執行役員の賀來邦彦氏は、人とAIの協働による自律的なサポート体制への変革を進めている。RightTouch代表取締役の野村修平氏が、賀來氏がリードする変革の具体像を聞く。

1回の接点が、顧客の生涯満足度を決める

T&Dフィナンシャル生命は、T&D保険グループの一員として代理店専業ビジネスを戦略の軸に置く。保険商品を自社で直接販売するのではなく、保険代理店を通じて顧客に届けるビジネスモデルだ。変額保険や短期の個人年金保険、高齢者向けの介護認知症保険など、一般的な生命保険とは一線を画した商品性も特徴の一つである。このビジネスモデルが、顧客対応に独自の緊張感をもたらしている。

野村 生命保険は日常的な顧客接点が少ない業種です。複数の保険会社の商品を扱う金融機関や保険ショップを主要販売チャネルとしている御社では、顧客対応において特に意識されている点はありますか。

賀來 直販チャネルを持たない当社にとって、コンタクトセンターがお客様とリアルに接点を持つ唯一のチャネルであり、顧客満足の起点です。当社のコンタクトセンターでは、保険代理店からの問い合わせと、契約者ご本人からの問い合わせの両方に対応しています。当然ながら、両者への回答に齟齬があってはいけません。

 契約者ご本人には、間違いなく、ご安心いただける回答をスピーディにお伝えすること。代理店には、目の前のお客様との成約にすぐには結びつかなくても、中長期で当社の保険商品を提案し続けたいと思える回答をお伝えすること。この2つを常に重視しています。

野村 顧客との接点が限られている業種ほど、少ない接点をいかに大切にするかがCX(顧客体験)に対する企業感度の差となり、顧客満足度にも大きく影響すると思います。

賀來 おっしゃる通りです。直販ビジネスであれば、営業担当者がお客様にあらためてお会いしたり、電話をかけたりして満足度の回復を図ることができます。しかし当社は、お客様との直接の接点がコンタクトセンターに限定されています。その1回で、お客様が聞きたいことや確かめたいことにスピーディかつわかりやすく回答し、安心感をご提供しなければなりません。

 その1回が、お客様の生涯の満足度になるかもしれない——そういう緊張感は非常に大きいです。特に近年は保有契約件数が伸びているだけに、その中でお客様の満足度をいかに高めていくかを強く意識しています。