米国の貿易赤字が急増するなかで、われわれ米国人は対日非難を繰りかえしている。折にふれ苦情が持ち出される。こちらが道をゆずっているのに、日本は市場開放に真剣に取り組んでいない。こちらはさしたる貿易障壁を設けていないのに、日本のそれは、かつてないほど高い。米政府は何の手も打たないのに、日本政府は自国企業の米市場浸透にあらゆる便宜をはかっている。……そのため、日本がわが国の市場を乗っ取っていくばかりで、こちらのものは日本に全然売れないじゃないか、と。

 高関税とか、法外に複雑な一連の貿易規制とか、日本が外国企業に対し、貿易障壁を設けていたのは確かである。それに、日本企業のあいだに、バイ・ジャパニーズ(自国製品の優先購入)の姿勢がゆきわたっていたのも、これまた確かである。

 だが、わが国に貿易障壁はないだろうか。日本の平均関税率がわずか3%なのにひきかえ、米国のそれは4.2%である。日本製オートバイに対する個別関税は最高49.5%に達したこともあり、今でも18%を超えている。

 繊維、砂糖、船舶、酪農製品、軍需機器などの製品にも保護を加えている。そのうえ日本の対米輸出品の40%以上は、"自主規制"か、割当てあるいは関税を通じて、何らかの制限のもとにおかれている。

 実をいえば、日本市場の取引ルールも、わが国のそれと同様、永久不変のものではないのである。日本企業が米国に踏み込んだのとそっくり同じように、これまで米企業も日本に大量にものを売ってきた。そして米企業はその経験から、お皿にのせてさあどうぞと市場シェアをさし出してくれる者など日本にはいないこと――市場シェアはあくまでも自分で手に入れるべきものだ、ということを学びとったのである。そして、その実例も多い。例えば、

 □現在、日本で売られている米国製品は50,000種以上にのぼる。日本の126の産業分野中85%以上に米企業が顔を並べており、少なくとも12社は、それぞれの市場分野で、市場第1位の地位を得ている。例えばソフト・ドリンク市場ではコカ・コーラが60%を、安全カミソリの市場ではワーナー・ランバートのシック・レザーが70%を、また、ファースト・フード・チェーンではマクドナルドがトップを占めている。

 □米ハイテク企業も力強く伸びてきた。例えば、IBMの85年の売上げは35億ドル、ディジタル・エクイップメントの日本での売上げは過去7年間に10倍に成長、ポラロイドは日本のインスタント・カメラ市場で66%を占めている。

 □1982年以来、米国製コンピュータの対日売上げは48%、テレコム機器は同38%、医薬品は同41%、エレクトロニクス・パーツは同63%と、それぞれ伸びている。

 しかし、こうした明るいニュースが、なぜこれまで耳に入ってこなかったのだろうか。その理由のひとつとして、それら最も繁栄している企業は、日本をめぐる苦情のコーラスに公然と声を和しながらも、その一方で、自分たちの成功については往々にして口をつぐんでいる、という事情がある。要するに彼らは、競争をまねき寄せることをおそれて、この儲かる市場の話があまり広まらないようにしておきたいのだ。

 日米貿易問題は、民間企業の競争上の心配にゆだねておくには重大すぎる問題である。日本で成功した企業が、その成功の秘密をかくしておくのはもうやめなければならない。真実が明らかにされねばならない。そして、米人マネジャーたちも、日本市場はダメだったとあっさり片づけるまえに、日本市場の潜在的可能性を改めて理解する必要がある。