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ジェシー・ジェームズは怒り心頭に発していた。煮えくりかえっていた。連中は、どうして彼の昇進をまたもや見送ったのか。ジェシーは、会社側はとうの昔に彼の独創性を認め、それに報いているべきだったと確信していた。だが、事実はそうはならず、彼は勘忍袋の緒が切れてしまった。自分が受けてしかるべきものを連中が出そうとしないなら、自分でとってやるまでだ。
人を外見で判断できるとすれば、ジェシーは現代のシステム・アナリストのモデルそのものであった。29歳の彼は、テクニーコープ社に入って6年になる。朝早く出社し、遅くまで居残った。夜や週末も仕事ができるようにと、自分のパソコンを家にもって帰ることまでした。彼は会社のコンピュータ・システムにまたたくまに習熟し、さらには制御を迂回して、効率よく動かす方法を考案するにも、それほどの時間はかからなかった。
ジェシーは前途洋々たるコンピュータ専門家を絵にしたようなタイプであったが、彼自身は、さっそうとして剛胆な先達、恐れを知らぬ銀行強盗、列車強盗との関連を誇りにしていた。彼はもちろんその名前を名のっていたのだが、ジェシー・ジェームズ・ウィーラーという名前は2人の祖父から受け継いだものであり、したがって、その関係は単なる偶然にすぎなかった。彼も同様に頭の回転が早かった。テクニーコープのコンピュータ・システムに関する彼の知識は、拳銃で稼ぎ出されたよりもはるかに多額の金を彼にもたらすだろう。
勇猛果敢な先達と同じ名を持つがゆえに、ジェシーはたえず、迫害を理由に強盗を正当化しようとする姿勢があった。加えて、本来のジェシー強盗団は、友人、聖職者、南部人、あるいは寡婦からは、けっして奪わないことを誇りにしていた。ジェシーは自分も同じ思いやりを心に決めた。つまり誰かから盗むのではなく、顔のない企業から盗むのである。
まずコンピュータ内に架空の業者向け支払い勘定を設け、しかる後に自分の銀行口座に直接支払わせることにしたのである。
定則:情報システムが関係している場合、不満を秘めた従業員に注意せよ。
他の多くの大企業と同様、テクニーコープも、中央集中型および分散型のコンピュータ・システム、さらにはその双方と回線で接続される一群のマイクロコンピュータからなる大規模なEDP業務を維持していた。経営者はこの電子の宝箱の価値を十分理解しており、これを防御するためにいくつかのステップをとっていた。
ユーザーコードとパスワードにより識別されたターミナル使用者は、特別なアクセス管理ソフトウェアにより、彼らが認められている範囲内の記録にのみアクセスが許され、またファイルの閲覧や情報の追加・削除など特定の適格な機能の遂行のみが認められる。このソフトウェアはまた、有資格ユーザーの各人について利用できる情報の量を制限し、中央コンピュータから個人用の、安全な電話回線への接続を制限し、さらには特定のターミナルのみへの接続を認めるといったことができる。おそらく最も重要なのは、このソフトウェアにより、誰が、何に、どのターミナルから、いつアクセスしたかの記録が保存されることである。
ジェシーはしばらく前から特別な監査ソフトウェアの存在に気がついていたが、その秘密は監査役たち自身により厳重に保全されていた。これが彼にとっては最大の悩みの種であった。というのはシステムの罠がどこに仕掛けられているかわからないかぎり、それを確実に回避することができないからである。彼は捕まる危険を最小限にすることにした。彼は盗みの最中に、特別なプログラムで支払い取引の記録をすべて抹消することにより、自分の痕跡を隠蔽してしまうというささやかな"プレゼント"を残しておくことにした。
自分のマイクロコンピュータを操作している間に、ジェシーは、自分のユーザーコードとパスワードを入力した後、中央コンピュータが接続手順を終え、先に進んでよしと応答するまで、異常に長い待ち時間があることに気づいた。ジェシーは、これについて自分の主任に聞いてみることにした。「気にするな」とマットはいった。「それがセキュリティなんだ。システム側が君をカットするんだ。ラインをいったん切って、改めて君の番号を呼び返すということだ。この場合、君が使うべき正しい電話番号が呼び返される。これはつまり、システムがそれとつながっているすべてのターミナルが本来どこにあるべきかを正確に把握しているということだ」。マットはまだジェシーに、主任職は皆、"保安措置を講じた"システムにアクセスを認められるパスワードを頻繁に変更しているとも語った。彼はこれらの手順の多くを自ら設計し、当然ながらこれを誇りにしていた。



