米国のメーカーでは、国際競争の激烈化にともない、最近、製造原価以外の費用に対して従来にもまして、よりキメ細かい検討を加えるようになったが、これはもっともなことである。過去10年にわたって、一般管理販売費の全事業コストに対する割合は増加しつつある。今日では、販売費や広告費、倉庫料その他の費用の上昇のために、一般管理販売費が企業の製造コスト全体の50%に達するのも珍しくはない。ハイテクの分野では、一般管理販売費は製造コストの100%にゆうに達するのである。

 製造原価以外の費用をうまくコントロールするために製造関連の部長は、一般管理販売費について、もっと正確な見積り法を考えはじめている。しかし多くのメーカーでは、一般管理販売費を部門配分する方法として、いわば"一律方式"に頼るという誤りから抜け出していない。製造コストについてのコンサルタントとしての仕事を通じて、私はこのようなやり方を多く見てきている。この種の誤りは、あらゆる産業に及び、また他の点では申し分なく経営のできている企業にも見られるものである。

 一般管理販売費の扱いについて生産ライン別の方式をとる企業では、経理部長は典型的な例として、売上高の何%とか、製造原価の何%とか、何か別の恣意的な配分方法を用いている。最も一般に行なわれている方法の1つである売上高に対する割合が用いられる場合、経理部長は企業全体の一般管理販売費の売上高全体に対する比率を求め、それをすべての製品ラインに適用するのである。例えば、ある企業の一般管理販売費が全売上高の10%であった場合、経理部長はこの割合をもって、それぞれの製品部門に対して、その売上高に応じて費用を転嫁するのである。他方、製造原価法では、経理部長は、それぞれの製品部門に対して一般管理販売費をそれぞれの部門の製造原価(原材料費、直接労務費、製造間接費の合計)の割合に応じて配分する。

 このような標準化された、画一的な方法を用いるのは、財務レポートの期限に間に合わせるためにプレッシャーのある会計担当者にとって、一般管理販売費の会計処理を単純化するのに役だつが、これらの恣意的なやり方は企業の製品部門とか市場別部門の利益比較をゆがめてしまう。大ざっぱな一般管理販売費の会計処理を行なうと部門別の利益は過大となり、損失は過小となる可能性がある。この種のゆがみも多様なものがあるが、後で見るように、これを修正する方法がいくつかあるのである。

原材料費についてのゆがみ

 原材料費がその製品各部門間で大きな差がある場合、会計担当者が一般管理販売費の部門別配分に当たって、従来の売上高割合とか製造原価の割合によるならば、一般管理販売費について大きなゆがみをもたらすことになろう。

 私の知っているある縫製雑貨を製造する会社の社長は、その毛織り部門の利益状態について困惑していた。毛織り製品部門は売上高は着実に増加していたが損失が出ていた。羊毛は他の製品の原材料費よりも高いため、低い売上利益率(粗利)となっていた。その会社では売上高比率を部門間の費用配分に使っていたので、原材料としての羊毛が高いために一般管理販売費が毛織り製品部門に過大に賦課され、この部門の利益を損なっていることを社長は知ったのである。

 この会社の経理部長は、原材料費の相違に伴う利益のゆがみをなくす、あるコスト転嫁率を用いるよう提案した。この転嫁率を算出するために、彼はその会社の工場直接労務費と製造間接費の合計を出し、それで一般管理販売費を割った。彼は、この結果得られた転嫁率を用いて、各製品部門の直接労務費と製造間接費の合計をもとに一般管理販売費を各部門に配分したのである。かくて、毛織り製品部門は利益を出すようになり、他の部門の利益は相対的に下がったのである。

 このような転嫁率は、通常、売上高比率方式よりも改善された方法であるが、それでもゆがみを内蔵しており、適用に当たっては注意を要する。完成部品を外部から購入する割合の高い製品部門をもっている企業では、こういう部門の転嫁率が非常に低くなる可能性がある。そういう部門では、一般管理販売費が過小となりがちで、したがってその利益は大きくなる。

一般管理販売費のキメ細かい配分

 では、もっとよい配分方法があるのだろうか。転嫁率を含めて、いかなる全体的な方法も利益のゆがんだ評価に導くものであるため、最善の方法は、企業の各製品部門における一般管理販売費の、より正確な計算法をもたらすキメ細かい配分方式を開発することである。次に示すケースでは、より正確な一般管理販売費のデータを用いることにより、特別な種類のゆがみが避けられることを示している。

 製品部門の特徴からのゆがみ

 あるエレクトロニクス・メーカーの上級役員は、国内外からの激化する競争に直面して、その製造原価と、それ以外の諸経費について検討することを決意した。その検討の過程で、その企業では経理担当が、いかに一般管理販売費の主要製品部門別の金額を計算しているかを検討した。