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ほとんどの管理者(マネジャー)は行動成果を重視する。その結果、多くの管理者は、職務遂行上で他の人たちとどのような関係を保っていくべきかという側面については、じっくり考える時間を費やさない傾向がある。例えば、多くの管理者は職場においてパワー(権限)の差が、対人間関係を乱すもととなることが、よく理解できておらず、結果的に、組織の効果性を阻害してしまうことになる。
ここで、職場で起こりがちな典型的な問題として、3つの例を紹介していこう。
□ ブライアン・ドーランとジョン・ミラーは、エレクトロニクスの会社のシニア・エンジニアであり、2人は、この会社の研究開発部門の同僚として、良好な人間関係を保ちながら仕事を進めてきた。2人の関係は、つねによき友人であり、気のおけない仲間であった。したがって、何らかの技術的問題を話し合いたいときや、単に社内のゴシップを交換し合いたいときなど、別に前もっての連絡などせずに、相手のオフィスに、ぶらりと訪れることがつねであった。
その後、ブライアンのほうは、研究開発部門の長に昇進した。その直後、ブライアンはこの会社で導入を予定しているコンピュータを活用した、デザイン・システムの設置計画について、ジョンと話し合いたいと考え、ジョンに電話して、自分のオフィスへ来てくれるようにたのんだ。この電話がジョンの気持ちを乱し、かつ怒らせた。ブライアンのオフィスは、たった2つ先のオフィスであるし、どうして彼自身でやってこないのか、とジョンは考えた。2人は仲のよい友人なのに、なぜ、彼は、ボスとしてふるまおうとするのかとも考えた。ジョンはともかくも、ブライアンのオフィスに出向いたが、ジョンは自分のいらだちをかくすのに、懸命の努力をしなければならなかった。ブライアンのほうは、以前どおり親しげにジョンを迎えたが、ジョンのほうは会話のあいだじゅう、言葉少なであった。
ブライアンは、その夕方、家に向かう途中で、ジョンが、どうしてあんなに妙な態度を示したのかについてあれこれ考えてみた。自分が昇進して、ジョンが取り残されたからかと考えた。きっとそうに違いない、ジョンは嫉妬しているのだと結論した。
しかし、ジョンのほうは、ブライアンが新しい地位についたことによって、ブライアンの行動に対し、自分がどう反応するかについて、彼はまったく感受性を発揮しえなくなっていると感じ、なぜだろうといぶかった。
□ メアリー・スカーパは、特殊鋼組立て部門のディレクターである。彼女は、その部門の中間管理職であるロジャー・ハリソンに対して、彼女がちょうど最終的な決断を迫られている大きな投資計画について、彼の意見を出してくれるように求めた。ロジャーの側では、彼女が立てたキャッシュ・フロー(資金計画)の見込みの前提条件に大きな疑問を抱いており、彼女に対して彼の意見を率直に述べたいとは感じていた。しかし同時に、彼があまりに正直に彼女の考えを批判してしまうと、彼女が怒るのではないかと心配した。ロジャーは、メアリーが非常に感情的になりやすいことをわきまえていた。メアリーは、ロジャーに率直な意見を述べるようにといってきてはいるが、それを額面どおりに受けとるべきではなかろうとロジャーは考えた。メアリーは、むしろ、彼女の考えをサポートしてくれる意見を求めているのだと考えた。ロジャーは、こんな二重の縛りに悩まされ、結局のところ、彼女の質問に答えるのを都合よく「忘れること」とした。
メアリーは、このロジャーの態度にいらだちを感じて、ほかの会社の友人に、自分の部下の態度、すなわち部下たちが積極的に自分の意見を発言してくれないという点について、悩みを打ちあけた。
メアリーは、部下たちは自分の立場が不安なものだから、はっきり自分の意見を述べないのだと指摘した。ロジャーの側でも、ボスのほうから意見を求められたとしても、ボスの考えに部下が批判を寄せれば、ボスとしてリスクを感ずることもあり得るという事情をよく理解していなかった。
□ ディック・ラップは、家庭用電機器具製造会社の製造担当の副社長であるが、彼は部下に対して、彼の目標のうちで重点項目は、品質管理と経費節減であると説明していた。彼としては欠陥品、不良品の発生率を下げたいと考えていた。さらに、自分の担当する部門は、ルールばかり尊重するのではなく、業績を重視する部門にしたいと願っていた。したがって彼は、「もし多少ルールを曲げれば、業績があがるのだったら、どんどんルールを曲げてもよい」と宣言していた。



