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すでに長年にわたって、学者も一般向けの物書きも、参画的管理こそがモチベーションを高め、生産性を向上させるための方法であると、経営管理者にいってきた。この問題について数多くの本や論文が書かれたが、それらは日本に競争上の優位をもたらしたものが、まちがいなく集団的意思決定にあることを経営管理者に気づかせたのである。しかし、いろいろいわれているとしても、われわれはほんとうに参画的管理を経営の日常的状況のなかで適用する方法を知っているといえるだろうか。われわれは計画や意思決定の過程に人びとの集団をどのようにして巻きこんでいくのか、そのプロセスはどのように進むのかについてありありとイメージを描くことができるだろうか。
SRCの参画的システム
ハネウエル・システムズ・アンド・リサーチ・センター(SRC)において、われわれは1971年以来、参画的管理を実践してきた。SRCは大規模なR&Dセンターである。それは親組織であるハネウエル航空宇宙・防衛グループの製造事業部およびハネウエル社のその他の部門とも密接な連携のもとに仕事をしている。人員構成は250名の技術者と研究者のほかにマーケティング・スタッフ、管理部門スタッフ、准研究員および人的資源、組織開発、コミュニケーション、情報システム等のスペシャリストをかかえている。
管理者チームは、全体の業務運営に影響のある領域についてコンセンサスによる意思決定をしている。すなわち、資源配分、資金分配、施設設計、予算編成、雇用等の領域である。ただし、決定事項はトップ・マネジメントの承認をうる必要がある。われわれはチーム作業がよりよい意思決定をもたらし、気紛れで不注意な行動を未然に防ぐこと、そして、それ以上に、われわれの目標に対するチームメンバーの打ちこみを強めるものであることを確信している。われわれの考えでは、上司は命令によっては、ある仕事を適切に遂行するのに必要な創造性や主体性、あるいは献身的態度といったものを手に入れることはできない。そのような忠誠心というものは、組織目標に対して"主人公意識"をもった人びとの自由な意思によってのみもたらされるのである。
チームのコンセンサスによって自分たちの管理者を選抜することは、このアプローチの基礎づくりとなった。多くの組織において、経営管理者が要員採用の決定を行なうときには、同僚の意見を聞いていることは確かである。SRCにおいては、他組織ならばたいてい、たまたま採用されている手続きを公式手続きとして採用している(われわれのマネジメント・チームの組織構成については別枠を参照のこと)。チーム・メンバーは直接、採用決定に参加し、それが結果に対するより強い責任感をもたせることになる。結果責任を意識することから、彼らはこの仕事に対して、たまたま相談を受けるだけという場合に比べ、より強い興味と真剣さをもって取り組むようにみえる。
その手続きを具体的に示し、効果と落とし穴の両方を明らかにするために、われわれはSRCセンター・マネジメント・チーム(CMT)が実際に行なった事業開発部門長選考の模様を述べたい。もちろん、われわれの方法が、異なった使命と文化をもった組織にとっても適切であるとはいえない。そのような理由から、われわれは管理者選考チーム設置のための1組のルール集を提供することはできない。われわれにできることは、われわれにとってどんな効果があったかを紹介することだけである。
センター・マネジメント・チーム
センター・マネジメント・チームはSRCの最高経営会議組織である。メンバーにはSRC副社長、2名の研究担当役員、システムプログラム担当役員、事業開発担当役員、監査部長、センター・スペシャリスト、高度化プランニング担当管理者、組織開発担当役員、人的資源担当役員等が入っている。各メンバーはそれぞれ担当部門の管理者によって構成される部門チームのリーダーである。同じように、各部門グループの管理者メンバーは、第一線監督者や技術グループのセクション長をメンバーとする別チームのリーダーである。CMTは隔週定例会合を開き、ときどき、臨時会を開くこともある。とりあげるテーマとしては、長期計画、資源配分、人員充足、人事問題およびSRCの方針と施策等である。決定に際しては他のチームと相談する。それらの決定事項は、その後、航空宇宙・防衛グループ技術担当副社長と同グループ執行副社長の審査を受ける。
チーム選考の手順
CMTは隔週1回の定例会議をもっているが、最近の会議で、10人のメンバーが集まったときに提示された第1議題は、事業開発部長のポストを補充する件であった。前任者は約1年間このポストについた後、ハネウエルの他事業部に昇進したのである。SRCの事業開発部長の職責は次のとおりである。すなわち、マーケティング戦略および事業計画を立案すること。その際マーケティングおよび契約部を監督すること、顧客とのあいだに良好な関係を維持すること、およびハネウエルのハイ・テック・イメージを浸透させること、などである。チームはマーケティングおよび契約管理でよい業績をあげていて、会社の事業実態や顧客についてよくわかっている人物がだれかいないか、と探した。それと同様に重要な点は、その人物が参画的管理という場で立派にやっていける能力があるかということと、今後、昇進するだけの潜在能力をもっているか、という点であった。
ブレーン・ストーミング チームがまずとりかかったのは、そのポストに興味をもっていて、資格要件を満たした候補者を明らかにすることであった。そのため、ピーター・ハンソン(センターの副社長兼CMTリーダー)は、有望な候補者に関して会社内の他の経営管理者と数回にわたり、話し合ってきたのである。それに、この種の異動が会社のなかでは常態となっているので、メンバーである人的資源部長も他のメンバーも、関連する職務については会社中の優秀者の状況を常に把握してきたのである。
多くの候補者は上司の推薦によってSRCにくる。それは通常、上司と本人とのあいだで日常的に行なわれてきた、キャリア形成についての話し合いの結果なのであった。しかし、選考は公開されており、なかには自薦で応募する者もいる。応募者にとってSRCの魅力は次の2つである。まず第1に、ハネウエルの航空宇宙および防衛事業のカギとなる、技術に関連する仕事に従事すれば、管理者にとってそこで得た知識はその後の仕事に役立つこと。第2に、会社内の管理職選考その他の意思決定過程はまちまちであるが、いずれにしろ、このSRCの方式は、参画的管理に興味を示しているハネウエル社内の他の事業部門にとって、とっかかりになるものであること。このようにしてSRCは他部門で昇進しようと望んでいる意欲的な人びとに価値ある経験を提供しているのだ。
会議の進行に伴って、4名の者が提案された。ハンソンはそれらの人の氏名を黒板に書き、現在の職位を述べた。彼は、前任の事業開発部長の言葉としてこの4名についてよく知っているが、そのうち3名はこの仕事を遂行できるだろうといっていたことを紹介した。いく人かのメンバーはすぐに、第4の人物がバイタリティに欠けるという点について同意した。しかし、しばらくのあいだは候補者リスト上に残しておいたほうがよいと提案した。
そのとき、ハンソンは第5番目の候補者を提案した。氏名はジョージ・オドゥエイである。実は、このオドウエイは航空宇宙・防衛事業部門の副社長が第1順位で推した人物であった。副社長によれば、オドウエイはこのポストに最適の人間であり、またSRCの経験も必要としているというのである。この予期していなかった新しい情報についてしばらく話し合った後、チームメンバーは、オドウエイを候補者の1人に加えることに同意した。



